電子カルテ情報活用型多施設症例データベースを利用した糖尿病に関する大規模な臨床情報収集に関する基盤的研究

文献情報

文献番号
201439002A
報告書区分
総括
研究課題名
電子カルテ情報活用型多施設症例データベースを利用した糖尿病に関する大規模な臨床情報収集に関する基盤的研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
梶尾 裕(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科)
研究分担者(所属機関)
  • 大江和彦(東京大学医学部附属病院企画運営情報部)
  • 菊池 嘉(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 植木浩二郎(東京大学大学院医学系研究科 分子歐尿病科学講座)
  • 石橋 俊(自治医科大学内科学講座内分泌代謝学部門)
  • 石川 三衛(自治医科大学附属さいたま医療センター 内分泌代謝科)
  • 山田 悟(北里大学北里研究所病院 糖尿病センター)
  • 林 道夫(NTT東日本関東病院 内分泌代謝科)
  • 脇 嘉代(東京大学大学院医学系研究科 健康空間情報学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的は、効率的・効果的な日本人の糖尿病の実態を把握して今後の糖尿病対策に資するため、電子カルテ情報活用型多施設症例データベース(SS-MIX2)を利用して臨床情報を大規模収集し、その研究基盤としての拠点的機能を構築することである。本年度は、これまで開発されてきた情報技術を用いてデータベースシステムの構築と多施設からの大規模症例データベースを効率的に構築する拠点機能の構築を目指した。
研究方法
1. 多目的臨床データ登録システム(MCDRS:マックドクターズ)、SS-MIX2標準化ストレージ、SS-MIX2拡張ストレージおよびそれと連動する電子カルテテンプレート入力システム、およびSS-MIX2ストレージをWebシステムからアクセスできるようにするSS-MIX2ゲートウエイソフトウエア(SS-MIX2-GW)の4つの技術またはシステムを活用して、糖尿病多施設症例データベースの構築を行った。
2. 拠点機能の確立のために、参加施設での現状分析を行い、拠点機能の構築および糖尿病臨床研究のための臨床情報を検討し、開発中のシステムの有効性について基礎的検討を行った。
結果と考察
結果
症例データベース構築のため、1)MCDRSおよびSS-MIX2―GWの導入として、国立国際医療研究センター病院(以下NCGM)および東大病院で、院内にUNIXサーバ(CentOS6.6)を新設し、東大病院ではNiftyクラウド上でもトライアルを行った。2)標準化ストレージはNCGMでは新規に導入、東大病院では既に導入済で、北里大学病院とNTT東日本関東病院ではPMDAの基盤整備事業として構築し、自治医科大学病院本院では独自事業として構築を開始した。3)Web画面上で患者の設定項目データをSS-MIX2ストレージから埋め込まれ、糖尿病症例登録システムを実現した。4)NCGMと東大病院で拡張ストレージのためのテンプレート入力画面を作成した。5)個人情報保護および情報セキュリティー対策は、関連ガイドラインに準拠して検討し、登録予定症例のデータだけがSS-MIX2ストレージシステムからWebブラウザ(各病院内のパソコンで稼働)上のソフトウエア機能により抽出され、匿名化後、クラウドシステム上の症例登録データベースに登録する。管理者は分担研究者(東京大学大江)、症例登録時にアクセスするWebサーバとデータベースサーバ、処理プログラムのサーバは別だが、操作は外部からのインターネット経由でのアクセスになりクラウドのセキュリティーが問題となる。拠点機能の確立のため、6)NCGM内への中核拠点(データベースセンターなど)の設置や糖尿病学会との協力体制の検討を開始した。7)症例登録の共通の項目を検討、電子カルテシステムにテンプレートを作成し、実際の記載時間等の調査を実施した。
考察
1)クラウドでの病院外への症例データ蓄積は患者情報管理や倫理上の問題があり、本研究ではまず院内にMCDRSサーバを設置し、症例登録を行った。今後、クラウド上もしくは特定の1医療機関にのみサーバを設置するシステムでの検討が必要である。2)登録データ項目は十分な事前検討による共通化の必要がある。3)施設間でのSS-MIX2ストレージ上のデータ項目コードの標準化や、SS-MIX2拡張ストレージに出力するのXMLデータ形式の標準化が必要で、HL7CDAに準拠した共通XMLデータ形式に一括変換する変換ソフトウエアの導入が必要である。4)院外の症例登録システムと院内SS-MIX2-GWの両方に接続することを禁止している施設では、SS-MIX2連携のために院内にMCDRSサーバの設置が必要である。5)全国的なシステム構築のためには各施設のSS-MIX2レベルに応じた改良と予算が必要となる。6)登録データ項目の決定は現時点で将来の研究項目を決めることになり、糖尿病学会の専門部会での検討も必要となる。施設間での調査実施能力の違いを考慮した研究実施要領(調査項目や調査時期、補助員など)の検討が必要である。7)MCDRSはSS-MIX2と異なりデータは自動登録されず、今後の課題である。
結論
方法に示した4つの技術またはシステムを活用して、糖尿病多施設症例データベースを構築した。症例データベースのクラウド上での構築、症例登録データ項目の共通化、SS-MIX2ストレージの標準化、院外の症例登録システムと院内SS-MIX2-GWとの接続ポリシー、症例登録における実施要項などについて新たな課題を抽出した。また、拠点形成の検討として、NCGMにおける糖尿病臨床データベースセンターの設置や多目的臨床データ登録システムの構築とともに糖尿病学会との協力体制の検討を開始した。臨床研究のやり方についても、今後、さらに検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201439002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成27年度より、日本糖尿病学会と協力して参加施設を募り、日本医療研究開発機構からの研究費を使用して各施設へのシステム導入を行った。結果的に29施設において平成27年度に研究を開始した。平成29年11月1日現在、35,129名の登録が確認されている。今後、糖尿病患者の診療・合併症進展の実態に関する研究を行う。なお、電子カルテのテンプレートを介した患者登録で、これだけの内容・患者数のデータを集めるのは本研究が初めてであり、今後他の研究にも今回のシステムや知見が応用されることが期待される。
臨床的観点からの成果
糖尿病患者の診療・合併症進展の実態に関する研究を行い、合併症の進展抑制に向けてのエビデンスが確立すれば、臨床的に大きな意義があると考えられる。エビデンス構築に向け、現在患者登録と解析の準備を進めている。また、テンプレートを使用し診療を行うことにより、網膜症など合併症に関する定期的なスクリーニングを促すこと、合併症を確認した上で診療を行えるなど、参加施設での診療の質が向上することが予想される。これらの効果に関しては、テンプレート使用による効果を一部施設においてアセスメントする予定。
ガイドライン等の開発
現時点ではガイドラインなどには反映されていないが、臨床的なエビデンスが出た暁には、ガイドラインの開発に貢献できると思われる。
その他行政的観点からの成果
平成27年度、厚労科研事業「国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)等において構築する疾患登録システム(患者レジストリ)を基盤とした、新たな治験・臨床研究の推進方策に関する研究」に参画し、データベースの有効利用について議論した。また、平成28年3月公開された内閣官房健康・医療戦略推進室作成の「医療等データ利活用プログラム」に、本研究事業(診療録直結型全国糖尿病データベース事業、J-DREAMS)で収集しているデータベースについても含めることが検討されている。
その他のインパクト
平成28年2月6日にJ-DREAMSキックオフミーティングを開催し、120名以上が参加して、活発な議論を行った。本研究での取り組みについて、日本経済新聞(平成28年2月8日)の他に、把握している範囲で地方誌6誌、インターネットニュース2媒体に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
Kurasawa H, et al. J Diabetes Sci Technol 2016.
その他論文(和文)
5件
杉山雄大他、施設横断的医療ビッグデータを活用した糖尿病診療の展望、新時代の臨床糖尿病学 上、2016/2、杉山雄大他、多施設症例データベースがもたらすもの、2016/3 他2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
第35,36回医療情報学連合大会、第15,16回日本糖尿病情報学会年次学術集会、第51回日本循環器予防学会学術集会、第59,60回日本糖尿病学会年次学術集会 他
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugiyama T, Miyo K, Tsujimoto T, Kajio H et al.
Design of and rationale for the Japan Diabetes comprehensive database project based on an Advanced electronic Medical record System (J-DREAMS)
Diabetology International , 8 , 375-382  (2017)
https://doi.org/10.1007/s13340-017-0326-y

公開日・更新日

公開日
2016-06-08
更新日
2018-06-20

収支報告書

文献番号
201439002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,800,000円
(2)補助金確定額
7,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,240,747円
人件費・謝金 145,275円
旅費 3,424円
その他 4,610,554円
間接経費 1,800,000円
合計 7,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-