文献情報
文献番号
201438144A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性巨大色素性母斑を母地とした悪性黒色腫に対する予防的低侵襲治療方法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森本 尚樹(関西医科大学形成外科)
研究分担者(所属機関)
- 山岡哲二(国立循環器病研究センター研究所生体工学部)
- 馬原淳(国立循環器病研究センター研究所生体工学部)
- 藤里俊哉(大阪工業大学工学部生命工学科)
- 清水章(京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター)
- 楠本健司(関西医科大学形成外科)
- 覚道奈津子(関西医科大学形成外科)
- 鈴木茂彦(京都大学大学院医学研究科形成外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
巨大色素母斑は巨大な母斑が存在し治療に難渋する疾患である。母斑が体表面積の数十%以上を占める症例では、移植する皮膚を採取できず治療が断念されることも多く、また母斑を母地とした悪性黒色腫の発生も8%にもあるとされる。悪性黒色腫の診断は、病変の大きさ、色調、形の変化からダーマスコープを用いて組織生検の必要性を判断し、組織検査で確定診断される。しかし、病変の一部切除は転移を誘発する可能性もありむやみには実施できない。そもそも母斑は黒色であり、悪性腫瘍の発生を早期に発見することは極めて困難である。母斑全層切除以外の方法、キュレッティング(乳児期に行われる母斑上層の切除)やレーザー治療では母斑細胞は必ず残存するため、根治的治療とはならない。組織内の細胞を除去する脱細胞化には、界面活性剤、高張食塩水などの方法があるが、我々が行った検討では、高張食塩水では母斑細胞の除去が困難、界面活性剤では細胞は除去可能だが、活性剤が残留し表皮細胞の生着が障害された。そこで本研究で用いる高圧処理に注目した。本研究で用いる高圧法は数千気圧以上の高圧を利用する物理的な脱細胞化方法である。本研究では、母斑組織を廃棄せず、手術室内で切除した母斑組織内の細胞を完全に不活化し、得られた不活化組織そのものを用いて皮膚再生を行う新規治療法を開発することを目的としている。
研究方法
ミニブタ皮膚、手術で切除されたヒト正常皮膚、ヒト母斑組織を用いて、これらの組織の不活化が可能な加圧条件の検討を行う。加圧条件は、0MPaから1000MPaまでの圧力で10分間処理することした。不活化の確認は、細胞活性アッセイ、組織よりの細胞増殖の有無、培養後の組織自体の活性から判断する。また、母斑組織をヌードマウスに埋入し、半年後に組織を摘出、母斑細胞の残存、増殖がないことを免疫染色で確認する。次に、不活化した組織が生体に生着することを確認する。
本研究の最終目標は本治療法の臨床試験を実施し有効性と安全性を確認することである。本治療法を用いた臨床試験準備、すなわち本技術の先進医療化に結びつくようにエンドポイントを定めた臨床試験プロトコルの作成を開始する。
本研究の最終目標は本治療法の臨床試験を実施し有効性と安全性を確認することである。本治療法を用いた臨床試験準備、すなわち本技術の先進医療化に結びつくようにエンドポイントを定めた臨床試験プロトコルの作成を開始する。
結果と考察
ミニブタ皮膚、ヒト正常皮膚、ヒト母斑組織がすべてに200MPa以上の高圧処理で、細胞活性、組織よりの細胞増殖が共に見られなくなること、培養後の組織に活性がないこと、つまり皮膚、母斑組織が不活化されていることを確認した。印加後、ヌードマウスに6ヶ月埋入した母斑組織を、抗ヒトビメンチン抗体を用いて免疫染色を行った。この結果、印加しなかった群、100MPaの印加を行った組群ではビメンチン陽性細胞が染色されたが、200MPa以上の印加を行った群では、この染色では移植した母斑組織内の細胞が染色されないこと、すなわちヒト細胞が残存しないことを確認した。また、0,100,150,200,500,1000MPaで10分間印加したブタ皮膚を背部筋膜上に自家移植し、移植1,4週後に組織を採取したが、肉眼的にすべての印加組織は生着していた。組織学的に検討した結果、150MPaまでの印加では表皮が残存したが、200MPa以上では表皮は存在しないことを確認した。
高圧処理による皮膚の不活化及び生着についてはいままで詳細な検討がされていなかった。 今回行った検討の結果、ヒト正常皮膚、母斑組織、ヒト皮膚と類似した構造をもつブタ皮膚を印加すると、200MPaで不活化する、すなわち皮膚に含まれる細胞が死滅することを確認した。また、細胞が死滅しても再度生体に移植可能であることはブタ皮膚で確認できた。ヒト皮膚及びヒト母斑組織を不活化し、培養表皮と組み合わせる方法も検討中であるが、ブタ皮膚と同様に生着するという結果を現段階で得ている。これらの結果に基づいて、皮膚及び母斑組織の不活化加圧処理を実際の臨床試験で行うために必要な、病院手術室で使用可能な小型加圧機器のプロトタイプの開発を企業と共同で行い、臨床用機器の作製は終了し病院に搬入できた。また、臨床試験プロトコルの作成も開始した。
高圧処理による皮膚の不活化及び生着についてはいままで詳細な検討がされていなかった。 今回行った検討の結果、ヒト正常皮膚、母斑組織、ヒト皮膚と類似した構造をもつブタ皮膚を印加すると、200MPaで不活化する、すなわち皮膚に含まれる細胞が死滅することを確認した。また、細胞が死滅しても再度生体に移植可能であることはブタ皮膚で確認できた。ヒト皮膚及びヒト母斑組織を不活化し、培養表皮と組み合わせる方法も検討中であるが、ブタ皮膚と同様に生着するという結果を現段階で得ている。これらの結果に基づいて、皮膚及び母斑組織の不活化加圧処理を実際の臨床試験で行うために必要な、病院手術室で使用可能な小型加圧機器のプロトタイプの開発を企業と共同で行い、臨床用機器の作製は終了し病院に搬入できた。また、臨床試験プロトコルの作成も開始した。
結論
200MPa、10分間の高圧処理(印加)によって、ヒト皮膚、ヒト母斑組織、ブタ皮膚の不括化されることが確認された。また、印加皮膚を再度移植すると生着することも確認できた。臨床試験に使用する小型加圧機器も試作できており、平成27年度の臨床試験開始を目標に本研究を継続する予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-16
更新日
-