びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の新規難治性病型に対する治療研究

文献情報

文献番号
201438142A
報告書区分
総括
研究課題名
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の新規難治性病型に対する治療研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山口 素子(三重大学医学部附属病院 血液内科)
研究分担者(所属機関)
  • 西川 政勝(三重大学医学部附属病院 臨床研究開発センター)
  • 木下 朝博(愛知県がんセンター中央病院 血液・細胞療法部)
  • 浅野 直子(長野県立病院機構 長野県立須坂病院 遺伝子検査科)
  • 鈴宮 淳司(島根大学医学部附属病院 腫瘍センター/腫瘍・血液内科)
  • 伊豆津 宏二(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液内科)
  • 山田 知美(大阪大学大学院医学系研究科 臨床統計疫学寄附講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (diffuse large B-cell lymphoma; DLBCL)のうち、わが国の研究により疾患概念が確立された新規難治性病型に対する有効な治療法の確立を目的とする。すなわち、未治療II-IV期CD5陽性DLBCLを対象とし、予備的検討で有望視されたdose-adjusted (DA)-EPOCH-R療法とhigh-dose (HD)-MTX療法を組み合わせた治療法の第II相試験 (PEARL5試験)を行うことで、有効な治療法の確立を目指す。
研究方法
【臨床試験名】未治療CD5陽性DLBCLに対するDA-EPOCH-R/HD-MTX療法の第II相試験 (PEARL5) (UMIN000008507) 【対象】CD5陽性DLBCL (WHO分類)のうち、未治療、II期-IV期、20歳-75歳、PS (ECOG) 0-3の患者【プロトコール治療】DA-EPOCH-R療法/HD-MTX療法: DA-EPOCH-R療法 4コース、HD-MTX療法 2コース、DA-EPOCH-R療法 4コース; 完了後CR例では再発まで無治療観察とし、PR以下または中止例での後治療は規定しない。【評価項目】Primary endpoint: 2年無増悪生存割合、Secondary endpoints: 完全奏効(CR)割合、奏効割合、全生存、2年中枢神経系(CNS)再発割合、有害事象発生割合【予定登録数と登録期間】予定登録患者数: 45、予定登録期間: 登録開始から 3.5年間 (平成26年10月のv2.1プロトコール改訂により期間延長)
結果と考察
 平成26年度は19例を登録し、目標登録例数45のうち34例が登録された。患者登録に関するアンケート調査を11月に実施しプロトコール検討委員会で検討した結果、参加施設数が少ないことが問題と考えられた。そこで平成26年10月のプロトコール改訂 (v2.1)で登録期間を3.5年間へ延長し、40施設を目標に参加施設の再募集を行った。平成26年度末までに4施設が新たに参加し (計34施設)、数施設でIRB審査中である。今後月間2例ペースで平成27年8月 (登録開始から3年)の早期登録完了を目指している。平成26年8月に定期モニタリングを行い、11月の班会議でモニタリングレポート検討会を実施した。その結果、プロトコール違反なく、未報告の重篤有害事象がないことが確認された。予期されない重篤な有害事象は試験開始以来なく、予期されるGrade 4の非血液毒性は腫瘍崩壊症候群Grade 4 (回復)の1件のみである。本試験のプロトコール治療が安全に行え、臨床試験の質が保たれていることを確認した。本試験の監査手順書および計画書の作成を終了し、施設監査の体制を整えた。監査はNPO法人みえ治験医療ネットへ委託して行われる。平成27年3月に現時点での最多登録施設 (三重大学病院)を対象として初回の監査が実施された。関連学会シンポジウムで本試験を紹介し、情報発信を行った。生物統計家の助言を得て、安全性と総合効果に関する早期公表を可能とするプロトコール改訂を行い、社会への結果還元が早く行えるようにした。病理中央診断の実施に向けて、病理中央診断手順書・病理中央診断申込用紙・標本搬送に関する連絡票を作成し、標本回収が可能な体制を整えた。対象初の臨床試験登録患者の検体を有効利用するため、保存検体(FFPE)で可能な付随研究の計画に着手した。試験治療の日常診療への導入を想定した、治療安全性に関する検討を行った。
 プロトコール治療に含まれるDA-EPOCH-R療法は、近年、複数のリンパ腫病型における高い有効性が報じられ注目されている。本試験の平成26年度定期モニタリングの結果、試験治療が安全に実施可能であることが確認されつつある。試験治療の日本人における安全性データは以前に増して重要であり、今年度新たに計画した安全性・総合効果の早期公表は新たな治療開発の促進に繋がると期待される。現在も本試験は対象唯一の臨床試験であり、試験治療の独自性も保持している。
結論
 PEARL5試験は、本委託費の獲得により登録ペースが上がり、試験治療の安全性が確認されつつある。定期モニタリングの結果、試験継続に問題となる重篤有害事象の発生はなく、臨床試験の質は高く保たれていることが確認されている。今後、患者登録の早期完遂、結果の早期公表により、「みなし標準治療」の確立が迅速になされるよう継続していく。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438142C

収支報告書

文献番号
201438142Z