消化器神経内分泌癌に対する標準治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201438141A
報告書区分
総括
研究課題名
消化器神経内分泌癌に対する標準治療の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森実 千種(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥坂 拓志(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科)
  • 古瀬 純司(杏林大学医学部 内科学腫瘍内科)
  • 石井 浩(がん研究会有明病院)
  • 笹子 三津留(兵庫医科大学 上部消化管外科)
  • 朴 成和(国立がん研究センター中央病院)
  • 町田 望(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学医学部 外科学)
  • 加藤 健(国立がん研究センター中央病院 消化管内科)
  • 本間 義崇(国立がん研究センター中央病院 消化管内科)
  • 平岡 伸介(国立がん研究センター研究所 分子病理分野)
  • 谷口 浩和(国立がん研究センター研究所 病理科・診療検査科)
  • 福嶋 敬宜(自治医科大学医学部・病理科)
  • 大池 信之(昭和大学藤が丘病院 臨床病理診断科)
  • 岩渕 三哉(新潟大学医学部保健学科)
  • 牛久 哲男(東京大学 人体病理・病理診断学)
  • 九嶋 亮治(滋賀医科大学)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院)
  • 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)
  • 奈良 聡(国立がん研究センター中央病院)
  • 水野 伸匡(愛知県がんセンター中央病院 消化器内科学、臨床腫瘍学)
  • 大木 理恵子(国立がん研究センター研究所 希少がん研究分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化器NECに対して、エトポシド+シスプラチン(EP)療法とイリノテカン+シスプラチン(IP)療法のいずれがより有用かを検証し、標準療法を確立することを目的とする。また、将来の治療開発に向けた基礎的な探索として、ゲノム解析を推進し、NECの新たな治療標的の探索・奏効予測・新しい分類法の確立を目指す。
研究方法
1. 消化管・肝胆膵原発NECを対象としたEP療法とIP療法のランダム化第III相試験(JCOG1213)について

[研究形式] 
JCOGの肝胆膵グループ、胃がんグループ、食道がんグループの3グループ共同の多施設共同研究。2群のランダム化第III相試験。Primary endpointは全生存期間。担当病理医による病理診断の中央判定を事後的に行う。バイオバンクに同意を得られた患者の血液(全血)を採取。血漿分離、血球成分からの DNA 抽出を行ったうえでバイオバンク・ジャパン(BBJ)で保存する。

[対象]消化管・肝胆膵原発で病理組織学的にNECと診断された切除不能例または再発例。PS 0または1、年齢が20歳以上75歳以下、骨髄・肝・腎などの主要臓器機能が保持され、本人より文書で同意の得られた患者。

[治療内容]
EP療法(A群):エトポシドday1,2,3+シスプラチンday1、3週1コース
IP療法(B群):イリノテカンday1,8,15+シスプラチンday1、4週1コース

[予定登録数と研究期間]
予定登録患者数:140人、登録期間6年、追跡期間は登録終了後1年を予定。


2.  将来の治療開発に向けた基礎的な探索について

[がん抑制遺伝子PHLDA3を中心としたクリニカルシーケンスの情報と治療経過・予後との関連の解析]
・ NENのゲノムサンプルの収集
・ 代表的ながん遺伝子、がん抑制遺伝子遺伝子異常の解析
・ PHLDA3のクリニカルシーケンスの情報と治療経過・予後との関連を解析

[NET/NECの細胞株樹立]
・ 免疫不全マウスでのXenograft作製
・ 培養条件の検討

[NET/NECの細胞株の解析]
・ 樹立した細胞株を用いた代表的ながん遺伝子、がん抑制遺伝子、PHLDA3遺伝子異常の解析
・ 樹立した細胞株を用いたNENモデル担がんマウスの作製と解析

[膵原発NECの分類における、K-ras変異およびRb染色性の有用性にに関する多施設共同研究]
・ 単施設での予備的検討
・ 多施設共同研究
a. 未染色プレパラート・臨床情報の収集
b. 病理中央判定
c. 解析:K-ras変異(cycleve PCR法)、Rb発現(IHC)
d. 病理診断・遺伝子発現情報と臨床情報の解析
結果と考察
【結果】
1. 消化管・肝胆膵原発NECを対象としたEP療法とIP療法のランダム化第III相試験(JCOG1213)について

[本体研究]
1. 登録状況:平成27年3月現在20人が登録されており、進捗は順調である。
3. 有害事象:現時点で試験進捗に問題となる重篤な有害事象の報告はない。

[病理医による研究支援]
1. 中央診断検討会:平成27年度8月前後を目安に第1回中央診断検討会を予定。
2. 施設病理医への情報提供
診断規準のレクチャースライドをJCOGホームページに掲載。施設病理医に対する登録前病理診断コンサルテーションを常時受け付け。

[JCOGバイオバンク]
平成27年2月現在6人が登録済み。

2. 将来の治療開発に向けた基礎的な探索について
平成26年度は主にゲノムサンプルの収集、参加施設の募集を中心に行った。また、細胞株樹立に向けて培養条件の検討を行っている。

【考察】
臨床試験 JCOG1213は世界初のNECに対する第III相試験である。この臨床試験により、日常診療の現場に治療指針が示されることになるため、意義が大きい。さらに、これだけ大規模に多施設共同研究を行った実績は国際的にも例がなく、新薬開発を行う製薬企業などから見た治療開発基盤としての日本への関心も高まることが期待される。その際に現在進行中のゲノム解析を中心とした基礎的研究は治療成績向上・薬剤選択の足がかりとして極めて重要である。平成27年度はこれらのゲノム解析に加えて、国立がん研究センター研究所を中心にドライバー変異、治療標的の新規発見を目指したNECの網羅的ゲノム解析にも着手する予定である。
結論
平成26年度の本分担研究により、臨床試験JCOG1213を開始・運用することができた。試験の進捗は順調である。また、基礎分野では、治療薬開発に直結するゲノム解析研究を進めている。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438141C

収支報告書

文献番号
201438141Z