成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)に対する新規治療を開発する医師主導治験

文献情報

文献番号
201438135A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)に対する新規治療を開発する医師主導治験
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石塚 賢治(福岡大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田村 和夫(福岡大学 医学部 )
  • 勝屋 弘雄(福岡大学 医学部 )
  • 宇都宮 與(今村病院分院)
  • 日高 道弘(国立病院機構熊本医療センター)
  • 吉満 誠(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 有馬 直道(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 石田 高司(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 野田 慶太(福岡大学医学部 )
  • 楠本 茂(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 崔 日承(九州がんセンター)
  • 今泉 芳孝(長崎大学病院)
  • 野坂 生郷(熊本大学医学部附属病院)
  • 緒方 正男(大分大学医学部)
  • 城 達郎(日本赤十字社長崎原爆病院)
  • 宮崎 泰彦(大分県立病院)
  • 森内 幸美(佐世保市立総合病院)
  • 下川 元継(九州がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,500,000円
研究者交替、所属機関変更
以下の研究者の追加を行った。 名古屋市立大学 准教授 石田 高司 名古屋市立大学 講師 楠本 茂 国立病院機構九州がんセンター 医師 崔 日承 長崎大学医学部 講師 今泉 芳孝 熊本大学医学部 講師 野坂 生郷 大分大学医学部 講師 緒方 正男 日本赤十字社長崎原爆病院 部長 城 達郎 佐世保市立総合病院 管理診療部長 森内 幸美 大分県立病院 輸血部長 宮崎 泰彦 国立病院機構九州がんセンター 下川 元継

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)は予後不良な疾患である。患者高齢化は今後さらに進むことから、高齢者にも適応可能な、より有害事象の少ない薬物療法の開発が必要である。
 本研究グループは、「ボルテゾミブによるATL救援療法の医師主導治験(厚生労働科学研究費補助金H23-臨研推-一般-011、研究代表者 石塚賢治)」(ボルテゾミブ単剤第Ⅱ相試験)の補助により、医師主導治験を実施してきた。その中で構築されている多施設医師主導治験実施体制を維持・発展させ、新たな治験を効率的・継続的に実施するとともに、施設数を拡大した医師主導臨床試験を実施することによって、ATL患者の臨床試験へのアクセスを容易にし、ATLに対するより安全で有害事象の少ない標準治療の確立と治療成績向上を図ることが目標である。
研究方法
【プロジェクト1】「ボルテゾミブによるATL救援療法の医師主導治験」(再発・難治性ATLに対するボルテゾミブ単剤による第Ⅱ相試験)
厚生労働科学研究費補助金事業により実施してきた医師主導治験を継続した。規定されていた第一段階15例を終了し、実施した中間解析を行った。

【プロジェクト2】再発・難治性ATLに対する新規探索的医師主導治験開始に向けた作業
新規探索的医師主導治験の概要を決定し、薬剤の販売企業との交渉、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)との事前面談、対面助言を実施する。

【プロジェクト3】ATLの治療成績向上に向けた医師主導型臨床試験の実施 
プロジェクト1、2の医師主導治験を実施する医療機関を基盤に、他の施設を加え、医師主導型臨床試験の実施体制を確立する。臨床試験実施計画を確定する。
結果と考察
【プロジェクト1】
 第一段階は男性10例、女性5例が登録された。
 有効性は総合最良効果部分寛解(partial remission)1例、不変(stable disease)5例であった。部位別には末梢血で完全寛解(complete remission)1例、標的病変、皮膚でPRがそれぞれ2例であった。第二段階に進むための条件は満たしたものの治療開始早期の増悪中止が多く、治験調整委員会での協議の結果、この対象群への本剤単剤での有効性は限定的と判断し、試験中止とした。

【プロジェクト2】
 プロジェクト1の当初計画では、単剤での有効性が否定された場合には化学療法薬との併用試験に移行することとしていた、しかし、注視していた海外での非胚中心細胞型びまん性大細胞型悪性リンパ腫に対するボルテゾミブ併用化学療法 vs. 化学療法(標準治療)の第Ⅱ相比較試験がnegativeであったことから、ボルテゾミブ併用化学療法の臨床試験の実施は断念した。代わって、免疫チェックポイント阻害剤による第Ⅱ相試験を実施することを決定し、薬剤の提供に関する企業との正式交渉を開始し、薬剤の無償提供に関する合意を得て、契約締結中である。

【プロジェクト3】
 医師主導治験を実施する医療機関を基盤に12医療機関から構成される医師主導型臨床試験の実施体制を確立した。試験は未治療aggressive ATLで同種造血幹細胞移植非適応の65歳以上の患者と同種造血幹細胞移植を希望しない患者に対するモガムリズマブ併用CHOP14療法と決定した。主要評価項目を無増悪生存期間とし、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)9801試験でのCHOP14群をヒストリカルコントロールに、優越性を検証するデザインとした。同時に付随研究として、モガムリズマブがATL患者の免疫システムにどのような影響をもたらせるかについて正確に把握するために、モガムリズマブ治療中の免疫モニタリングを行う。平成27年度第1四半期中の開始を予定している。

 ATLの世界的な患者分布を鑑みると、質の高い研究者主導臨床試験は本邦以外では実施しにくく、革新的な治療法を導入することによって治療成績を向上させるためには、わが国が率先して探索的臨床試験を実施する必要がある。しかも国内においてもATL患者発生に地域偏在があることを考えると、本研究班が持つATL多発地帯の医療機関によって構成される本疾患に特化した医師主導治験実施体制を活用することは非常に効率的で有効な手段である。
 医師主導治験による新規治療の開発とともに、希少疾患である本疾患の診療ネットワークを充実させて、ATL患者の臨床試験へのアクセスを容易にし、ATLに対するより安全で有害事象の少ない標準治療の確立と治療成績向上を図ることを目指す事業として、さらに発展させたい。
結論
希少疾患かつ発症者に地域偏在があるATLに特化した本疾患多発地帯の医療機関によって構成される医師主導治験・臨床試験実施体制を活用し、新規治療・標準治療を確立するための研究事業を展開した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438135C

収支報告書

文献番号
201438135Z