AYA世代における急性リンパ性白血病の生物学的特性と小児型治療法に関する研究

文献情報

文献番号
201438132A
報告書区分
総括
研究課題名
AYA世代における急性リンパ性白血病の生物学的特性と小児型治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
早川 文彦(名古屋大学医学部附属病院血液内科)
研究分担者(所属機関)
  • 今井陽俊(社会医療法人北楡会札幌北楡病院 )
  • 清井仁(名古屋大学 大学院医学系研究科 )
  • 宮崎泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所)
  • 小林幸夫(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院)
  • 麻生範雄(埼玉医科大学 医学部)
  • 薄井紀子(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 八田善弘(日本大学 医学部)
  • 康勝好(埼玉県立小児医療センター 血液腫瘍科)
  • 河津正人(東京大学 医学系研究科)
  • 熱田由子(一般社団法人 日本造血細胞移植データセンター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児ALL(急性リンパ性白血病)は治癒率80%以上と良好な治療成績を示すが、成人ALLの5年生存率は30%台で、AYA(思春期・若年成人)世代に限っても40%台と十分な治療成績が得られてこなかった。AYA世代ALLを小児ALLの治療法で治療することで治療成績の著明な改善が得られる事が示され、今後こうした治療法がAYA世代ALL治療の主流となっていくと予想されるが、このような治療法における予後因子は明らかではない。さらに、小児ALLの治療法は若年成人でも有害事象が強く小児と同程度に施行するのは困難であったため、これを適切に減量してより幅広い成人に適用できALL全体の治療成績を改善できる治療法の開発が期待されている。本研究は小児型治療法によるAYA世代を含むALLの治療成績の向上及びゲノム解析による新規予後因子の探索とそれに基づく層別化治療の確立を目的として行われた。
研究方法
小児型治療法を65歳までの年代に適用しAYAを含めたALL全体の治療成績の向上を目指し、かつゲノムワイドな遺伝子解析を同時に行い遺伝子異常と治療効果の関係を比較検討する臨床研究ALL213研究、及び小児治療研究グループと共通のプロトコールでAYA T-細胞性ALLを治療するT-ALL211-U研究をH25年から開始した。実施にあたっては高い症例集積能力を持つJALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)の全面的な協力を得て行った。
 また、以前にALLに対して行われていた臨床研究ALL202-U試験(登録期間:2002年~2009年 対象:15歳~24歳)で保存されていたmRNA検体を用いて網羅的な遺伝子解析を行い、臨床情報と統合して新たな予後因子を同定する研究(ALL202U-EWS研究)が先行して行われており、予後因子となりうる新規融合癌遺伝子が複数発見されている。この融合遺伝子の予後因子としての妥当性を、別コホートの臨床情報とゲノム解析を統合した解析を行う事で比較検証するために、同時期に行われたALL202-O試験(登録期間2002年~2011年 対象:25歳~64歳)の臨床情報の解析と患者検体の網羅的遺伝子解析(ALL202O-EWS研究)を実施する。実施にあたっては以下のように倫理面への配慮を行った。
・本研究に関係する全ての研究者はヘルシンキ宣言(2013年フォルタレザ世界医師会総会にて修正)、臨床研究に関する倫理指針(平成20年厚生労働省告示第415号)およびヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(文部科学省・厚生労働省・経済産業省:平成20年12月1日一部改正)に従って本研究を実施する。
・JALSGで実施される臨床試験に際しては患者の安全性を確保するために、適格基準・除外基準を厳密に定義するとともに、効果・安全性評価委員会を設置する。また、重篤な有害事象が発生した場合の手順書などを作成し、その情報の共有化と連絡を円滑に行う。臨床情報および臨床検体の取扱いは、登録時に付与される登録番号および遺伝子解析番号によって各施設で匿名化を行うことにより、個々の研究・検査実施機関およびデータセンター・検体保存センターにおける個人情報の匿名化を担保する。患者同意を得るにあたっては、担当医は患者本人に施設の倫理委員会あるいはそれに準ずる委員会の承認が得られた説明文書を患者本人に渡し、試験についての説明を行い、患者が試験の内容をよく理解したことを確認した上で、自由意思による試験参加の同意を本人から文書で得る。患者が20歳未満の場合には代諾者も同席の上説明を行い、同意を得る。
・ALL202O-EWS研究に関しては網羅的遺伝子解析に対する患者同意が得られていない(研究当時遺伝子解析に対する同意は取得していたが、網羅的であるとは明言していなかった)ことに配慮して連結不可能匿名化して解析を行う。
結果と考察
精力的に症例登録が進められ、累積症例登録数はPh(-)B-ALL213試験 65例 (目標160例)、 Ph(+)ALL213試験32例 (目標80例)、T-ALL213-O試験17例(目標28例)、T-ALL211-U試験12例(目標18例)となった。ALL202O-EWS試験計画が立案されJALSG付随研究委員会の審査に提出された。
 遺伝情報、細胞表面形質、患者年齢により層別化された今回の臨床研究によりALLの治療成績は更に向上する事が期待できる。また、治療法の大きな変更により従来の予後因子の適用が難しくなったAYA世代ALLに対し新たな予後因子の発見が期待される。
結論
小児型治療法によるAYA世代を含むALLの治療成績の向上及びゲノム解析による新規予後因子の探索とそれに基づく層別化治療の確立を目的とする臨床研究を遂行した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438132C

収支報告書

文献番号
201438132Z