滑膜肉腫に対する新設計がんペプチドワクチンと遺伝子改変T細胞療法から成る複合的がん免疫療法の研究開発

文献情報

文献番号
201438126A
報告書区分
総括
研究課題名
滑膜肉腫に対する新設計がんペプチドワクチンと遺伝子改変T細胞療法から成る複合的がん免疫療法の研究開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
影山 愼一(三重大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 健(医薬基盤研究所)
  • 珠玖 洋(三重大学大学院 医学系研究科 )
  • 原田 直純(三重大学大学院 医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
104,348,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本ワクチンは滑膜肉腫に高発現する3種のがん抗原(NY-ESO-1, MAGE-A4, WT1)を同時に標的とし、各がん抗原に対応した3本の合成長鎖ペプチドをワクチン抗原とする。各長鎖ペプチドはHLA-A0201とHLA-A2402に対応するキラーT細胞エピトープと、複数のHLAクラスⅡに対応したヘルパーT細胞エピトープを含有する。各エピトープ間の配列を工夫することで、全てのエピトープが安定に抗原提示されるように長鎖ペプチド抗原を設計している。さらにワクチンの性能を高めるべく、デリバリーシステム「コレステリルプルラン(CHP)」を採用している。加えて、Toll様受容体(TLR)9の強力なアゴニストで独自配列を持つK3 CpGオリゴDNAをアジュバントに採用することで、ワクチンによる特異的T細胞誘導を向上せしめる。
研究方法
・長鎖ペプチド抗原の設計
 NY-ESO-1、MAGE-A4、WT1それぞれに対応する長鎖ペプチド抗原3種を新たに設計した。
・長鎖ペプチド抗原の非GMP製造
 米国PolyPeptide社を製造委託先に選定した。
・コレステリルプルランとK3 CpGオリゴDNAの製造
 日油(株)にコレステリルプルランの合成を委託した。
TLR9アゴニストであるK3 CpGオリゴDNAをジーンデザイン(社)に製造委託した。
・がんペプチドワクチンの製造方法と品質試験法の開発
 溶媒の選定、ペプチド:コレステリルプルラン配合比の最適化、3種のペプチド:コレステリルプルラン複合体混合物(最終製剤)試作、スケールアップ、予備的安定性試験を行った。品質分析法としてHPLCやゲル電気泳動、発色法を用いたペプチドとペプチド:コレステリルプルラン複合体分析を試行した。
・がんペプチドワクチンの非臨床POC樹立
コレステリルプルランとマウスがん抗原蛋白に由来するモデル長鎖ペプチド抗原を用いたワクチンを作製した。これを投与したマウスにおいてワクチン特異的T細胞応答と抗がん効果に対するコレステリルプルラン利用と長鎖ペプチド抗原設計技術の影響を解析した。
 ワクチン製剤の生物活性を確認するために、ヒトB細胞株を抗原提示細胞とする試験管内抗原提示反応系を準備し、特異的T細胞刺激を測定した。
結果と考察
・長鎖ペプチド抗原の設計と非GMP製造
 100ミリグラムスケール(純度85%以上)で各長鎖ペプチド抗原の試作を行った結果、問題なく合成された。引き続き5グラムスケール(純度85%以上)での非GMP製造を行い、順調に合成を終えた。
・コレステリルプルランとK3 CpGオリゴDNAの製造
 200グラムのコレステリルプルラン製造を行った。また、20グラム規模のK3 CpGオリゴDNA製造を行った。純度・収量・構造等の規格を満たす目的物を入手した。
・がんペプチドワクチンの製法・品質試験法の検討
 コレステリルプルランは濃度より高くするとゲル化する傾向があり、10 mg/mLを超える濃度は不適と判断された。各長鎖ペプチド抗原は2 mg/mLを上回ると不溶物が発生する傾向があり、これも2 mg/mLを上回らない濃度とした。以上から最適な配合比を決定した。
 各長鎖ペプチド抗原と、その最終形態であるペプチド:コレステリルプルラン複合体の品質試験法の確立は必須である。一般にペプチド分析には逆相HPLCが有用であるが、コレステリルプルランと複合体化した後では適用できないことが判明した。他方、ゲル濾過HPLCは複合体の形成を判別可能であった。ペプチドの定量法として、逆相HPLCではなく発色法とUV吸収法は有用であった。また、ポリアクリルアミド電気泳動法により、ペプチドの多量体形成を定性的に分析することも可能であった。
・がんペプチドワクチンの非臨床POC樹立
マウスキラーT細胞に認識される3つのエピトープを連結し、その連結部の配列について、数種の候補配列を評価した。その結果、ある特定のエピトープ間配列群を用いることで、すべてのエピトープが安定に提示されることを見出した。
結論
キラーT細胞エピトープとヘルパーT細胞エピトープを同時に含む3種の長鎖ペプチド抗原を新規設計した。全てのエピトープが期待通り提示されるようにエピトープ間配列の最適化を行った。これをデリバリーシステム・コレステリルプルランと複合体化したワクチン製剤の有効性と作用機序をマウスモデルとヒト免疫細胞系で確認した。確定した長鎖ペプチド抗原とコレステリルプルラン、ならびにアジュバントのCpGオリゴDNAの高品質原材料の製造に成功し、ワクチン製造に向けて適切に保管中である。製造方法の最適化と品質試験法の開発を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438126C

収支報告書

文献番号
201438126Z