文献情報
文献番号
201438124A
報告書区分
総括
研究課題名
高純度エクソソーム精製法による新規腫瘍マーカーの同定
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
華山 力成(大阪大学 免疫学フロンティア研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、エクソソームと呼ばれる分泌型膜小胞が、主に免疫細胞や腫瘍細胞から放出され、その生理機能が研究されるとともに、新たなバイオマーカーとして注目を集めている。またエクソソームには分泌細胞由来のmRNAやnon-coding RNAが多く含まれており、これらが新たなマーカーとして疾患との相関性と特異性が広く研究されている。しかし、従来のエクソソーム精製法では、主に超遠心法やPEG沈殿法による濃縮が行われており、非常に多くの夾雑物が混入する為、エクソソームの純度がとても低い。このような純度でバイオマーカーとして用いるのは困難であり、エクソソームを高純度で精製する方法の開発が期待されている。我々は最近、Tim4という膜蛋白質がエクソソームの特異的な受容体であることを見出した。Tim4は細胞外領域のIgVドメインを介して、エクソソーム膜上の膜リン脂質ホスファチジルセリンとカルシウム依存的に強力に結合するが、カルシウムをEDTAでキレートすることにより、遊離させることが可能である。そこで本研究では、Tim4の細胞外領域にヒト免疫グロブリンのFc領域を結合させたTim4-Fc蛋白質と磁気ビーズを用いてエクソソームを精製する方法の有用性を評価し、人の血液や尿から高効率に精製する方法を確立し、実際に癌患者と健常人のエクソソームを本法で精製し比較することで、特異性と感受性の高い腫瘍マーカーの同定を目指す。
研究方法
エクソソーム精製法の比較の為、各方法で精製したエクソソームをSDS-PAGEに供し、Oriole試薬による全蛋白質染色と、エクソソーム特異的マーカーであるflotillin-2の抗体を用いたウェスタンブロッティングを行い、純度の評価を行った。その結果、超遠心分離法やPEG沈殿法によって精製したエクソソームには多くの夾雑物が含まれていたのに対し、Tim4-Fc磁気ビーズを用いて精製したエクソソームでは夾雑物が100分の1以下に減少していることが確認された。そこで、透過型電子顕微鏡を用いてネガティブ染色による観察を行うことで、Tim4-Fc磁気ビーズ、超遠心法、PEG沈殿法でそれぞれ精製したエクソソームの形状や大きさ、純度を比較し評価を行う。すなわち、直径100nm以下の粒子径のそろったエクソソームが得られているのか、物理的な力により凝集したエクソソームになっていないか、エクソソーム以外の粒子が混在していないかなどを確認する。また、微粒子測定装置であるNanoSight LM10を用いて、精製したエクソソームの粒子径と濃度を測定する。測定結果より収量、平均粒子径および粒子径分布を算出し、精製エクソソームの評価を行う。
結果と考察
エクソソーム精製法の比較の為、我々の開発したTim4-Fc磁気ビーズ法と超遠心法、PEG沈殿法をそれぞれ用いて、ヒト白血球細胞株K562細胞からエクソソームを精製し純度を比較した。各方法で精製したエクソソームをSDS-PAGEに供し、Oriole試薬による全蛋白質染色と、エクソソーム特異的マーカーであるflotillin-2の抗体を用いたウェスタンブロッティングを行い、純度の評価を行った。その結果、超遠心分離法やPEG沈殿法によって精製したエクソソームには多くの夾雑物が含まれていたのに対し、Tim4-Fc磁気ビーズを用いて精製したエクソソームでは夾雑物が100分の1以下に減少していることが確認された。次に、透過型電子顕微鏡を用いてネガティブ染色による観察を行うことで、Tim4-Fc磁気ビーズ法、超遠心法、PEG沈殿法でそれぞれ精製したエクソソームの形状や大きさ、純度を比較し評価を行ったところ、Tim4-Fc磁気ビーズ法では、直径100nm以下の粒子径のそろったエクソソームが得られており、超遠心法と違い物理的な力により凝集したエクソソームになっておらず、PEG沈殿法と違いエクソソーム以外の粒子が全く混在していないことを確認した。また、精製したエクソソーム上の蛋白質をショットガン質量分析で同定したところ、Tim4-Fc磁気ビーズ法では457種の蛋白質が同定可能であったのに対し、超遠心法、PEG沈殿法ではそれぞれ90種、39種の蛋白質しか同定できず、Tim4-Fc磁気ビーズ法の有用性が示された。今回我々の開発した方法は、エクソソームの精製法として期待以上の効果があることが明らかとなった。
結論
私達はTim4-Fcと磁気ビーズを用いたアフィニティー精製により、高純度なエクソソームを効率よく回収する方法を開発した。実際、Tim4-Fc磁気ビーズを用いて、ヒト白血球細胞株K562細胞からエクソソームを精製し、従来の方法と比較したところ、我々の方法では夾雑蛋白質の大部分が取り除かれ、100倍以上高純度なエクソソームが精製されていた。
公開日・更新日
公開日
2015-09-15
更新日
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