文献情報
文献番号
201438121A
報告書区分
総括
研究課題名
Liquid Biopsy のゲノムシークエンス解析による癌の変異プロファイル
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 明洋(独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 中川 英刀(独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター )
- 川上 由育(国立大学法人 広島大学 医学部 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がんゲノムは、がんの進行や治療反応に伴って変化する高い柔軟性と、個々のがん細胞が異なった変異をもつという不均一性を有し、ゲノム情報を指標としてがんの個別化治療やゲノム医療を実践していくには大きな障害となっている。その柔軟性に対応していくためには、治療の過程においてがんゲノムを随時モニターしていかなければならないが、造血系腫瘍と異なり、固形腫瘍においては病態の変化に伴って経時的に連続して生検を行うことは不可能である。また、個別化医療やゲノム医療の適応となるのは主に切除不能の進行・再発症例であり、分子プロファイル作成のためのがん組織の採取を生検にて行うのは浸襲性が高く困難なことが多く、採血によってがんの分子プロファイルを作成するという「liquid biopsy」の概念が、がんの個別化医療やゲノム医療において注目されている。本研究は、これまで我々が取り組んできた肝臓がんゲノムを対象に、次世代シークエンサーを駆使して、容易に採取できる血液循環DNA (cell-free DNA: cfDNA)のゲノムシークエンス解析を試み、同じ症例の切除標本から複数個所採取した腫瘍DNAでのゲノムシークエンス解析も行って、腫瘍の変異プロファイルとの比較検討を行うものである。この比較検討にて、情報解析も含めた、cfDNAでのゲノム変異プロファイルを作成するための技術基盤の改善、構築を行うことを目的とする。
研究方法
進行・再発肝臓がんにおいては術前に血管塞栓療法(TACE)を行うことが多く、その際に大量の腫瘍由来のcfDNAの検出が期待され、cfDNAのゲノム解析に非常に適したがん種であり、多数の肝がんの治療にあたっている広島大学消火器内科と共同でがん由来のcfDNAが含まれる血漿および腫瘍組織を収集した。本年度は、10例の肝臓がん症例について、適切なインフォームドコンセントを得たうえで、TACE後の血漿を採取した。これらの血漿よりQIAGENキットを用いて、血漿cfDNAの抽出を行った。
血漿中のcfDNAの性質として、微量かつ150-200bpの大きさに断片化しており、通常のNGSのライブラリー構築の方法では解析ができない。そこで、Illunmina Nano DNA sample Prep kit、Nextera DNA Sample Prep Kit, Rubicon ThriPLEX-FD, 新規でリリースされたKAPA HyperPrep Kit を用いて、50ngの血漿cfDNAよりNGSライブラリーを構築し、NGSでのシークエンスを行い、それぞれのNGSライブラリーの評価を行った。
血漿中のcfDNAの性質として、微量かつ150-200bpの大きさに断片化しており、通常のNGSのライブラリー構築の方法では解析ができない。そこで、Illunmina Nano DNA sample Prep kit、Nextera DNA Sample Prep Kit, Rubicon ThriPLEX-FD, 新規でリリースされたKAPA HyperPrep Kit を用いて、50ngの血漿cfDNAよりNGSライブラリーを構築し、NGSでのシークエンスを行い、それぞれのNGSライブラリーの評価を行った。
結果と考察
10例の肝臓がん症例について、広島大学にて血漿の採取が行われ、これら1 mLの血漿よりcfDNAの抽出を、QIAGENキットを用いて試みた。すべての血漿より10ng以上のcfDNAが抽出できた。
血漿中のcfDNAの性質として、微量かつ150-200bpの大きさに断片化をしており、現在のNGSのライブラリー構築の方法では解析ができない。アダプター結合能力を向上させたNGSライブラリー構築キット KAPA HyperPrep Kitを新規に導入して、アダプター濃度やPCRなどの条件検討を行い、10-50ngのcfDNA用に最適化したNGSライブラリー構築方法を確立した。NGSによりシークエンス解析の結果、この方法が、他のNGSライブラリー構築方法と比べて、PCR 重複が少ない複雑性が高く、最良であった。3症例について、血漿cfDNA、腫瘍DNA、正常リンパ球DNAのエクソームを行い、cfDNAについてはx200、腫瘍およびリンパ球由来のDNAについてはx100でのシークエンス深度が得られた。cfDNAのエクソームにて、10-40%の腫瘍の体細胞変異を検出できた。
血漿中のcfDNAの性質として、微量かつ150-200bpの大きさに断片化をしており、現在のNGSのライブラリー構築の方法では解析ができない。アダプター結合能力を向上させたNGSライブラリー構築キット KAPA HyperPrep Kitを新規に導入して、アダプター濃度やPCRなどの条件検討を行い、10-50ngのcfDNA用に最適化したNGSライブラリー構築方法を確立した。NGSによりシークエンス解析の結果、この方法が、他のNGSライブラリー構築方法と比べて、PCR 重複が少ない複雑性が高く、最良であった。3症例について、血漿cfDNA、腫瘍DNA、正常リンパ球DNAのエクソームを行い、cfDNAについてはx200、腫瘍およびリンパ球由来のDNAについてはx100でのシークエンス深度が得られた。cfDNAのエクソームにて、10-40%の腫瘍の体細胞変異を検出できた。
結論
今回のcfDNAシークエンス解析では10-40%の腫瘍の体細胞変異が検出できると考えられるが、これをもって腫瘍ゲノムのプロファイルを推定することは困難である。さらに深度の高いシークエンス解析が必要であると考えられる。また、腫瘍内のゲノム不均一性があるものの、cfDNAで変異検出の特異性がまだ低いものと考えられ、さらなる変異同定のアルゴリズムの改良も必要であると考える。
公開日・更新日
公開日
2015-09-15
更新日
-