悪性リンパ腫の腫瘍細胞と微小環境構成細胞の比較解析と微小環境構成細胞による腫瘍支持機構を標的とする新規治療法の開発

文献情報

文献番号
201438119A
報告書区分
総括
研究課題名
悪性リンパ腫の腫瘍細胞と微小環境構成細胞の比較解析と微小環境構成細胞による腫瘍支持機構を標的とする新規治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
島田 和之(名古屋大学高等研究院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
悪性リンパ腫の腫瘍細胞及び微小環境構成細胞の両者に着目し、遺伝子異常を含む生物学的特徴と微小環境依存性の臨床的意義の解明、微小環境依存性を標的とする新規治療法の開発を通して、現在難治性とされる悪性リンパ腫病型に対する有効な治療法の開発を目指す。
研究方法
悪性リンパ腫患者のリンパ節生検検体より微小環境構成細胞である線維芽細胞を単離し、他の悪性リンパ腫患者リンパ節生検検体と共培養することにより、線維芽細胞の悪性リンパ腫細胞に対する生存支持効果を検討した。腫瘍細胞と線維芽細胞のゲノムコピー数を、アレイCGH法を用いて評価した。線維芽細胞に生存が支持される悪性リンパ腫細胞を用いて、腫瘍細胞支持機構の分子メカニズムを解析した。線維芽細胞による腫瘍細胞支持機構を標的とする新規治療法の開発のために、線維芽細胞に生存が支持される悪性リンパ腫患者由来腫瘍細胞のマウス異種移植モデルを作製した。
(倫理面への配慮)患者の人権擁護上の配慮から、研究目的の利用について文書による同意が得られた臨床検体のみを本研究に使用した。臨床検体の使用に関しては、造血器疾患の発症原因及び治療効果に影響を与える因子を解析するための基礎研究」、「造血器疾患の発症、病勢進行、薬剤感受性を規定する分子病態の解析研究」として本学生命倫理審査委員会の承認を得ている。また異種移植モデルの作製を含む実験動物の使用に関しては、本学の承認を受け、名古屋大学における動物実験等に関する取扱規程に基づき、適切な動物実験の実施に努めている。
結果と考察
悪性リンパ腫を含む血液疾患関連患者のリンパ節生検検体より6例の線維芽細胞が単離された。6例の疾患の内訳は、濾胞性リンパ腫3例、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫1例、Castleman病1例、反応性リンパ節病変1例であった。初期に得られた2例の濾胞性リンパ腫由来の腫瘍細胞と線維芽細胞を各々アレイCGH法にてゲノムコピー数を解析すると、腫瘍細胞では多様なゲノム領域のコピー数異常が認められたのに対し、線維芽細胞においても2例中1例において生存関連遺伝子及びサイトカイン分泌関連遺伝子を含むゲノム領域においてコピー数異常が認められた。さらにこの2例の線維芽細胞を用いて、他の悪性リンパ腫患者リンパ節生検由来腫瘍細胞を共培養すると、共培養下において腫瘍細胞の生存が支持され、症例毎で支持される効果が異なることが観察された。マウス線維芽細胞様細網細胞株にて生存が支持される悪性リンパ腫患者リンパ節生検検体由来腫瘍細胞を免疫不全マウスに異種移植することにより、マウス内にて腫瘍細胞の生着が得られ、同腫瘍細胞は継代移植が可能であった。
 複数のリンパ節生検検体より線維芽細胞が単離され、共培養下にて生存が支持されていることより、悪性リンパ腫のリンパ節微小環境においても線維芽細胞が腫瘍形成に関与していることが示唆される。腫瘍細胞によって線維芽細胞による支持効果が異なることも興味深く、薬剤感受性への関与や治療成績への影響について興味が持たれる。今後評価症例数を蓄積し、微小環境の支持効果の臨床的意義を明らかにしていくとともに、分子機構を解明することで新たな治療法の開発につながることが期待される。
結論
リンパ節微小環境において、線維芽細胞が腫瘍細胞の生存に関与していることが示唆される。線維芽細胞による腫瘍細胞支持機構を解明することで今後の新たな治療法の開発につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-07-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438119C

収支報告書

文献番号
201438119Z