希少遺伝子変異を有する小細胞肺癌に対する新規治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201438109A
報告書区分
総括
研究課題名
希少遺伝子変異を有する小細胞肺癌に対する新規治療法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 功一(独立行政法人国立がん研究センター 東病院 呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 茂樹(独立行政法人国立がん研究センター 東病院 呼吸器内科)
  • 土原 一哉(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センターTR分野)
  • 石井源一郎(独立行政法人国立がん研究センター 東病院 臨床開発センター )
  • 松本 慎吾(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センターTR分野)
  • 善家 義貴(独立行政法人国立がん研究センター 東病院 呼吸器内科)
  • 佐藤 暁洋(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター)
  • 山中 竹春(横浜市立大学大学院医学研究科 臨床統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
76,900,000円
研究者交替、所属機関変更
【所属機関・職名変更】 研究分担者:山中竹春 国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター生物統計部門 部門長(平成26年8月31日まで) →横浜市立大学大学院医学研究科 臨床統計学 教授(平成26年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
PI3K/AKT/mTOR経路に遺伝子変異を有する小細胞肺癌に対して、有効な新規治療法を確立すること。
研究方法
【前臨床での有効性の検証】:小細胞肺癌細胞株を用いたin vitro薬剤感受性試験を行い、PI3K/AKT/mTOR経路に活性型変異を有する細胞株と変異を有さない細胞株とで、薬剤感受性の比較を行う。並行して、in vivo造腫瘍能をマウスゼノグラフト実験系で確認する。これらの結果同定された薬剤効果予測因子に関して、臨床応用に向けた検証も行う。
【LC-SCRUM-Japanを活用した遺伝子スクリーニング体制の構築】:第II相試験の被験者を効率的にスクリーニングできる体制を確立する。具体的には、PI3K/AKT/mTOR経路の変異遺伝子群に加え、治験薬の感受性に影響を与え得る変異遺伝子群を同時に解析可能できるマルチプレックスパネルを導入し、被験者スクリーニングを行う。本研究の対象となるPI3K/AKT/mTOR経路に変異を有する小細胞肺癌は希少頻度であるため、先行研究で確立した全国規模の遺伝子スクリーニングネットワーク(LC-SCRUM-Japan)を活用して、スクリーニングを実施する。
【医師主導治験】:PI3K/AKT/mTOR経路に変異を有する進行再発小細胞肺癌患者に対して、未承認薬PI3K/mTOR阻害薬(PF 05212384)の有効性と安全性を評価する第Ⅱ相試験を実施する。プライマリーエンドポイントは奏効割合で、主な適格規準は、①患者本人から文書による同意、②進行小細胞肺癌、③PI3K/AKT/mTOR経路の遺伝子変異、④少なくとも2レジメンの抗癌剤治療後に増悪した患者、⑤測定可能病変、⑥主要臓器機能が保持、とした。予定登録数は28名程度で、登録期間2年、追跡期間1年とした。
結果と考察
【臨床試験実施体制の確立】:平成26年4月からPI3K/AKT/mTOR経路に遺伝子異常を有する小細胞肺癌に対するPI3K/mTOR阻害薬の臨床試験を計画し、9月に未承認薬PF 05212384の第II相試験の研究計画を、ファイザー社の研究申請システムに応募した。12月にPF05212384の無償提供が確定し、治験薬概要書を入手した。研究組織は、国際水準の質の高い医師主導治験が実施可能な8施設(国立がん研究センター東病院、同中央病院、北海道大学、静岡がんセンター、名古屋大学、大阪市立総合医療センター、四国がんセンター、九州がんセンター)を選定した。平成27年度は、治験実施計画書を作成し、PMDAの薬事戦略相談を実施した後に、国立がん研究センターの倫理審査委員会で審査を受ける予定である。倫理審査委員会の承認後に、各参加施設の倫理審査委員会において承認を受け、平成28年1月より医師主導治験を開始する予定である。
【前臨床での有効性の検証】:PF 05212384の前臨床試験に関しては、平成26年9月にファイザー社の研究申請システムに応募したところ、11月に承認され前臨床試験を開始した。小細胞肺癌由来細胞株に対し、PF 05212384(研究用試薬)の感受性試験を実施したところ、43株で細胞株の薬剤感受性データが得られ、PI3K/AKT/mTOR経路に変異を有する細胞株の中に、高い薬剤感受性を有するものを同定した。並行してin vivoでの造腫瘍能をマウスゼノグラフト実験系で確認したところ、4種のゼノグラフトモデルで造腫瘍能のデータを得た。
【遺伝子スクリーニング体制の構築】:希少頻度の第II相試験の被験者を効率的にスクリーニングできる体制を、平成26年10月に構築した。具体的には、PI3K/AKT/mTOR経路の変異遺伝子に加え、治験薬の感受性に影響を与え得る変異遺伝子群を同時に解析できるOncomine Cancer Panelを導入し、全国最大規模の遺伝子スクリーニングネットワーク(LC-SCRUM-Japan)を活用して、スクリーニングを行う体制を整備した。
結論
PI3K/AKT/mTOR経路に遺伝子変異を有する小細胞肺癌に対する未承認薬 PF 05212384の医師主導治験を実施するために、平成26年度は「医師主導治験実施体制の確立」、「前臨床での有効性検証」、「遺伝子スクリーニング体制の構築」を行った。これらの目的が概ね達成されたため、平成27年度から医師主導治験を開始できる見通しである。

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438109C

収支報告書

文献番号
201438109Z