文献情報
文献番号
201438101A
報告書区分
総括
研究課題名
HPVワクチンの有効性と安全性の評価のための大規模疫学研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
榎本 隆之(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
- 木村 正(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 森井 英一(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 吉野 潔(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 上田 豊(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 高田 友美(頴川 友美)(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 森本 晶子(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 大道 正英(大阪医科大学大学院 医学研究科)
- 寺井 義人(大阪医科大学大学院 医学研究科)
- 角 俊幸(大阪市立大学大学院 医学研究科)
- 市村 友季(大阪市立大学大学院 医学研究科)
- 神崎 秀陽(関西医科大学大学院 医学研究科)
- 村田 紘未(関西医科大学大学院 医学研究科)
- 万代 昌紀(近畿大学大学院 医学研究科)
- 中井 英勝(近畿大学大学院 医学研究科)
- 中山 富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センターがん予防情報センター疫学予防課)
- 宮城 悦子(横浜市立大学大学院 医学研究科)
- 馬場 洋(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
- 齋藤 昭彦(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
- 味岡 洋一(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
- 木村 慎二(新潟大学医歯学総合病院)
- 関根 正幸(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
- 工藤 梨沙(本間 梨沙)(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
92,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
子宮頸がん罹患率を下げるためには、検診による早期発見とHPVワクチンによる予防が重要であると考えられるが、若年者の子宮頸がん検診受診率は極めて低く、HPVワクチンの接種率が激減している状況にある。本研究では、①ワクチンによる有効性(中長期的な子宮頸がん・前がん病変の予防効果)を検証すること(NIIGATA STUDY、 OCEAN STUDY)、②ワクチンの安全性を住民ベースで評価し、副反応に対する診療システムを整備すること(NIIGATA STUDY)、③若年女性の子宮がん検診率・ワクチン接種率向上のための手法を開発すること(NIIGATA STUDY、 OCEAN STUDY、 YOKOHAMA STUDY)を目的とした。
研究方法
①ワクチン有効性の研究:NIIGATAでは、新潟市の子宮頸がん検診受診者のうち20-30歳、35、36歳、40、41歳を対象にHPV検査、性活動性のアンケート調査を実施し、HPV感染と細胞診異常を解析した。
②ワクチン安全性の研究:NIIGATAでは、新潟県におけるワクチンの副反応症例に対して迅速かつ専門的な診療が可能となるシステムの構築を試みた。さらに、新潟県内での新規ワクチン接種者を対象に、副反応の全例調査を行う体制の構築を試みた。
③若年女性の子宮がん検診率・ワクチン接種率向上のための手法の開発:NIIGATAでは、子宮頸がん予防行動と性活動性がワクチン接種と関連しているかについて、16-20歳のワクチン接種者と非接種者、計828名よりインターネット調査を行った。OCEANでは、積極的勧奨が再開になった場合に備えて再普及の手法を探索した。YOKOHAMAでは、20歳代の子宮頸がん予防への意識と行動に関して、SNSを利用した全国調査を開始した。
②ワクチン安全性の研究:NIIGATAでは、新潟県におけるワクチンの副反応症例に対して迅速かつ専門的な診療が可能となるシステムの構築を試みた。さらに、新潟県内での新規ワクチン接種者を対象に、副反応の全例調査を行う体制の構築を試みた。
③若年女性の子宮がん検診率・ワクチン接種率向上のための手法の開発:NIIGATAでは、子宮頸がん予防行動と性活動性がワクチン接種と関連しているかについて、16-20歳のワクチン接種者と非接種者、計828名よりインターネット調査を行った。OCEANでは、積極的勧奨が再開になった場合に備えて再普及の手法を探索した。YOKOHAMAでは、20歳代の子宮頸がん予防への意識と行動に関して、SNSを利用した全国調査を開始した。
結果と考察
①ワクチン有効性の研究:新潟市の2258例が本研究に登録された。HPV陽性は267例(11.8%)で、年齢別にみると、20-30歳が15.1%、35-36歳が5.8%、40-41歳が4.2%であった。経験人数が増えるとともに感染率が上昇し、10人以上では25.5%と高い頻度でHPV陽性であった(p<0.01)。一方で、ワクチン接種率は経験人数が多いほど接種率が低く(p<0.01)、HPVの感染を予防する必要性が高い「性活動性が活発なグループ」においてワクチンに関する啓蒙活動が重要であることが示唆された。初交年齢が低いほど感染率が高く、15歳以下では19.0%と高い頻度でHPV陽性であった(p=0.01)。
②ワクチン安全性の研究:新潟市内のワクチン接種者を全例登録し即時型・遅延型副反応を網羅的に調査するシステムを整えた。さらに牛田班との連携により、新潟県での副反応症例に対して新潟大学産婦人科が総合窓口となり、迅速かつ専門的な診療が可能となるシステムを地域で整備・確立した。平成28年度には県下全域で同システムが機能するように整備する。
③若年女性の子宮がん検診率・ワクチン接種率向上のための手法の開発:若年女性におけるワクチン接種と性活動性の関連調査では、ワクチン接種によって性行動に関する意識は変わらず、むしろ非接種者においてはよりハイリスクな性行動が確認された。ワクチン再普及の手法では、ワクチンの信頼性や疾患の重篤性(子宮摘出になる可能性)等を正確に伝えることが再普及に不可欠であることが判明し、子宮頸がん検診受診に誘導する手法では、金銭的インセンティブと母親を介した受診勧奨が有効と考えられた。
②ワクチン安全性の研究:新潟市内のワクチン接種者を全例登録し即時型・遅延型副反応を網羅的に調査するシステムを整えた。さらに牛田班との連携により、新潟県での副反応症例に対して新潟大学産婦人科が総合窓口となり、迅速かつ専門的な診療が可能となるシステムを地域で整備・確立した。平成28年度には県下全域で同システムが機能するように整備する。
③若年女性の子宮がん検診率・ワクチン接種率向上のための手法の開発:若年女性におけるワクチン接種と性活動性の関連調査では、ワクチン接種によって性行動に関する意識は変わらず、むしろ非接種者においてはよりハイリスクな性行動が確認された。ワクチン再普及の手法では、ワクチンの信頼性や疾患の重篤性(子宮摘出になる可能性)等を正確に伝えることが再普及に不可欠であることが判明し、子宮頸がん検診受診に誘導する手法では、金銭的インセンティブと母親を介した受診勧奨が有効と考えられた。
結論
有効性の研究では、HPV検査と、性活動性のアンケート調査を2258例に実施し、性活動性とHPV感染、細胞診異常の相関を明らかにし、ワクチンの中長期的効果を検証するためのワクチン非接種群(20-21歳を対象)の登録を行った。安全性の研究では、新潟市内のワクチン接種者を全例登録し副反応を網羅的に調査するシステムを整え、新潟県での副反応症例に対して迅速かつ専門的な診療が可能となるシステムを整備した。若年女性の子宮がん検診率・ワクチン接種率向上のための手法の開発では、ワクチン接種によって性行動に関する意識は変わらず、むしろ非接種者においてはよりハイリスクな性行動が確認され、ワクチンの信頼性や疾患の重篤性(子宮摘出になる可能性)等を正確に伝えることがワクチンの再普及に不可欠であることが判明した。平成27年度は、20-21歳を対象にしたワクチンの中長期的効果に関する研究登録・解析を推進し、ワクチン接種者の全例登録・副反応網羅的調査の開始を目指す。
公開日・更新日
公開日
2015-09-15
更新日
-