膵がん検診の効率化を目指した血液バイオマーカーの実用化研究

文献情報

文献番号
201438099A
報告書区分
総括
研究課題名
膵がん検診の効率化を目指した血液バイオマーカーの実用化研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
本田 一文(国立がんセンター研究所 創薬臨床研究分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
無症候な早期膵がんや膵がんリスク疾患患者群を血液検査で濃縮できれば、その後の画像等を用いた精密検診で効率よく発見できる可能性がある。今回の研究班では、「先行研究で開発されたバイオマーカーを用いて、早期膵がんや膵がんリスク疾患である膵管内乳頭粘液性腫瘍の模擬検診を行い、その概念を実証する。

研究方法
1)実験的バイオマーカー候補に対する研究用キットの開発、2)神戸検診ネットワークによる実験的膵がん検診の基盤の整備、倫理審査、3)体外診断医薬品の承認のための臨床性能試験の準備、、4)海外でのin vitro diagnosis (IVD)取得のための国際研究協力体勢の構築とブラインド測定を行った。

結果と考察
【結果】
バイオマーカーシーズ
1. apolipoprotein-AII isoform
ApoAII-ATQ/ATを定量するためのELISA検査キットを開発し、検査手法を確定した。

2.神戸健康診断(健診)ネットワークによる実験的膵がん検診
神戸健診コンソーシアムキックオフミーティング(2015年1月20日開催)を開催し、近畿圏6施設の検診センター担当者に研究の参加を呼びかけた。神戸健診ネットワークから臨床検査グレードで検体を回収するための方法の最適化に着手し、臨床検査会社を利用した回収法を考案した。「実験的バイオマーカーを利用した膵がん・およびリスク疾患検診」を行うための研究計画書を策定し、倫理審査委員会への申請を行った。

体外診断医薬品の承認のための臨床性能試験
2014年10月2日に本研究班の班会議を国立がん研究センターで開催した。神戸大学、国立がん研究センター中央病院、埼玉医科大学国際医療センターの研究分担者に本研究班の研究目的やバイオマーカーシーズの臨床性能を説明し、検体採取や臨床性能試験を実施する上での問題点を整理した。PMDAへの薬事戦略相談の準備を開始した。
バイオマーカーシーズの臨床性能を多数検体で迅速に検証するために、レトロスペクティブ検体使用を明記した研究計画書を作成し、国立がん研究センター倫理審査委員会から研究実施の承認を受け多様なプラットホームでの検証研究が可能にした。
ApoAII-isoforms ELISAキットの性能検証のために、本血清・血漿バイオバンクから600例強の検体が提供され、診断学的有用性を確認した。

海外でのin vitro diagnosis (IVD)取得のための国際研究協力
米国でのIVD申請を目指して、NCI EDRNと国立がん研究センターの間で、NCC-NCI MTAを締結後、倫理審査を行い、NCI EDRNで集積されたI・II期膵がん、慢性膵炎、健常者の血清検体(をNCIから輸入したNCI EDRN pancreatic cancer reference set をapoAII-isoforms ELISAキットを用いてブラインドで測定した。測定結果は、NCI EDRNに報告し、現在、NCIで感度、特異度、ROC解析を行っている。


【考察】
本研究計画の平成26年度のマイルストンはほぼ達成した。来年度以降は、倫理審査を全て修了させ、バイオマーカーシーズを利用した膵がん・リスク疾患の実験的検診を神戸健診ネットワークで実施する。陽性者に対しては、被験者の同意を得て画像検査等のよる精査を行い、バイオマーカーシーズの感度を検討する予定である。
さらに来年度からは、バイオマーカーシーズが持つ疾患への生物学的意義をオミクス研究や生化学研究から明らかにする。さらに検診検体で偽陽性を示した症例の臨床情報を詳細に検討し、偽陽性原因の特定を目指す。
結論
1.ApoAII-isoforms ELISAの研究用キットを完成させた。プロテオーム研究用に特化した血漿バイオバンク検体の600症例で検証し、早期膵がんやリスク疾患に対する診断学的有用性を確認した。
2.NCI EDRNのPancreatic Cancer Reference Setの検体を入手し、apoAII-isoforms ELISAキットでブラインド測定を行った。診断学的有用性は、NCIが計算中である。
3.神戸健診ネットワークによる実験的膵がん検診のための基盤を整備した。
4.研究を進めるための倫理面の整備を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438099C

収支報告書

文献番号
201438099Z