対策型検診を目指した大腸内視鏡検診の有効性評価のためのランダム化比較試験

文献情報

文献番号
201438097A
報告書区分
総括
研究課題名
対策型検診を目指した大腸内視鏡検診の有効性評価のためのランダム化比較試験
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター )
  • 西野 克寛(仙北市病院事業市立角館総合病院 病院長 )
  • 石田 文生(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター 教授)
  • 山野 泰穂(秋田赤十字病院 消化器センター長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の便潜血検査(FOBT)による大腸がん検診はその有効性が確立している。しかしわが国のがん死亡の12%以上を占める大腸がん死亡率の著明な減少のためには現在のFOBT単独による検診の次世代の、より有効性の大きい検診法を検討することが重要課題であり、FOBTに大腸内視鏡検査(TCS)を加えた検診法が候補として挙げられる。FOBTに1回のTCSを加えた検診の死亡率減少効果を明らかにするために、FOBTによる検診群を対照としたランダム化比較試験(RCT)を行う。また、TCS検診を行う場合、実態が不明な偶発症等の不利益をモニターし、将来の対策型検診としての検討のためにTCS検診のリスクについても調査する。
研究方法
本研究では、FOBTにTCSを組み入れたプログラムの有効性を検証する為に大腸がん死亡率の減少効果のランダム化比較試験(RCT)を実施する。大仙市及び仙北市住民で研究参加に応諾した40~74歳の男女約10,000人を対象に、FOBTにTCSを併用する介入群と、TCSを併用しない対照群を無作為割付により設定する。プライマリ・エンドポイントを大腸がん死亡率、セカンダリ・エンドポイントを大腸がんに対する感度・特異度、累積進行がん罹患率、累積浸潤がん罹患率とし、介入群、対照群で比較する。
研究対象者のリクルート6年目の本年度(平成26年度)は対象地域を、従前より実施している仙北市全地域及び前年度拡大した大仙市全地域として実施する。また、本年度は新たに大仙市民を対象に秋田赤十字病院においてTCS検診を開始した。
結果と考察
リクルート6年目となる平成26年度は、秋田県仙北市、大仙市の両市にて参加者のリクルート、FOBT・TCSそれぞれの検診実施、検診・精検・治療情報の収集、参加者増加の為の対策、等を実施した。また、検診TCSについては全例本研究のTCS検診実施機関にて実施した。平成27年2月時点の累計参加者は7,690名となった。介入群においてはモニタリング時点で92.6%が検診TCSを受診した。TCSの盲腸挿入率は99.7%と非常に高く、有害事象も重篤なものはなく、研究の組織運営を含め、研究の進捗に支障は認めなかった。リクルート状況の抜本的対策の為、大仙市北部に隣接し、分担研究者山野の所属する秋田赤十字病院において体制整備の上で検診TCSを開始し、一定の効果を得た。研究班プロトコール委員会にて最新疫学データ、研究参加者の特性、最新エビデンスの確認などを行い、現実的に達成可能かつ倫理的に許容可能な、必要サンプルサイズ、エンドポイント、リクルート期間、追跡調査の再確認を行う事が決定した。
近年、sigmoidoscopyの有効性に関する複数のランダム化比較試験(RCT)により、その死亡率減少及び罹患率減少のエビデンスが明確に提示されている。しかし、これらの試験では便潜血検査(FOBT)への内視鏡の上乗せ効果の有無/程度は不明である。またsigmoidoscopyは深部大腸がんは標的にできないため、最終的には全大腸内視鏡検査(TCS)による検診が引き続き、目標とすべき検診法であり、その評価は最重要課題である。TCS検診についても有効性評価研究の報告があるが、結果が提示されているのはコホート研究に留まる。
この様な状況で、RCTである本研究の重要性はますます高く、研究が順調に遂行されることが期待されている。
結論
リクルート6年目となる平成26年度は、仙北市、大仙市にて参加者のリクルート、FOBT・TCSそれぞれの検診実施、検診・精検・治療情報の収集、参加者増加の為の対策、等を実施した。また、検診TCSについては全例TCS検診実施機関にて実施した。平成27年2月時点の累計参加者は7,690名となり、参加者全員がFOBT検診を受診し、介入群においてはモニタリング時点で92.6%が検診TCSを受診した。TCSの盲腸挿入率は99.7%と非常に高く、苦痛の頻度は低く、さらに偶発症も重篤なものはなかった。研究の組織運営を含め、研究の進捗に支障は認めなかった。リクルート状況の抜本的対策の為、大仙市北部に隣接し、分担研究者山野の所属する秋田赤十字病院での検診TCSを開始し、一定の効果を得た。
これら状況を踏まえ、研究班プロトコール委員会にて最新疫学データ、研究参加者の特性、最新エビデンスの確認などを行い、現実的に達成可能かつ倫理的に許容可能な、必要サンプルサイズ、エンドポイント、リクルート期間、追跡調査の再確認を行う事が決定した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438097C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)全大腸内視鏡検査(TCS)による大腸がん検診の有効性評価ランダム化比較試験(RCT)を目標1万名として実施し、9,751名の参加を得てH29年3月末に参加者募集を完了した。死亡・罹患等各エンドポイント(EP)データ取得の為の追跡調査を実施した。
(2)死亡率を第一EPとした我が国初の、また同意取得後に割付を行う世界初の大腸がん検診RCTである。近年TCS検診の有効性に関するコホート研究が報告されたが、RCTによる根拠が必要であり、本研究の国際的重要性はますます高くなっている。
臨床的観点からの成果
(1)一般住民対象の検診TCSを4,496件実施し、検診時の偶発症、苦痛等のモニタリングを行い、安全性、許容性を確認した。精度管理上TCSの質が高いことが示され、対策型検診としてのTCS 検診の実行可能性が示唆された。
(2) 検診TCSの質が臨床上の診断検査としてのTCSと同等であり、また、海外に比べて、偶発症の発生率は著明に低く、盲腸挿入率が高く、より高い質のTCS検診の実行可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
本研究班内でガイドライン等の作成は行わない。しかし、本研究でこれまで得られた検診TCSの知見は、臨床上の診断検査としてのTCSに対しても精度管理ガイドライン作成の重要な知見となる。最終的には第一EPの死亡率減少はもちろん、第二EPの罹患率や感度など、本邦のみならず世界各国のがん検診有効性評価のガイドラインの重要な知見となる。
その他行政的観点からの成果
がん対策推進基本計画では「がんの年齢調整死亡率を減少させることを目標とする」、「検診有効性等の評価のための大規模疫学研究を戦略的に推進する」とされている。現状、厚労行政に資する直接的な成果はまだないが、男女がん死因のそれぞれ12,15 %を占める大腸がんの検診のエビデンスが本研究により得られ、TCS併用検診が対策型検診として導入された際には、将来の大腸がん、ひいてはがん死亡率および罹患率低減に大きく貢献しうる。
その他のインパクト
研究への参加促進のために、研究地域において大腸がんや研究への意識調査を行い、重要な知見が得られ、大腸がん検診に関する自治体用の受診勧奨リーフレット等を通じて全国的に活用されている。研究を端緒に研究地域自治体が『大腸がん撲滅キャンペーン』の企画、広報誌による周知、大規模イベントの開催を行い、それらを通じ、がん撲滅推進ボランティア組織による地域に密着した草の根活動に発展した。市民対象の研修会・講演会を計40回以上実施しこれらを支援した。キャンペーンの認知度は77%に達した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件
大腸癌では死なせない!角館大仙スタディーとAI内視鏡が切り開く未来,工藤進英,市立角館病院講演会,

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
2018-06-20

収支報告書

文献番号
201438097Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
40,000,000円
(2)補助金確定額
40,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 1,077,820円
その他 32,922,180円
間接経費 6,000,000円
合計 40,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
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