ゲノム情報で規定される超高リスク群の診断と、層別化・個別化予防のためのエビデンス構築をめざした臨床観察研究

文献情報

文献番号
201438095A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報で規定される超高リスク群の診断と、層別化・個別化予防のためのエビデンス構築をめざした臨床観察研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 輝彦(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 遺伝医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 菅野 康吉(栃木県立がんセンター研究所 )
  • 椙村 春彦(浜松医科大学 )
  • 渡邉 淳(日本医科大学付属病院)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学医学部 )
  • 青木 大輔(慶応技術大学医学部)
  • 清水 千佳子(国立がん研究センター中央病院)
  • 森実 千種(国立がん研究センター中央病院)
  • 中島 健(国立がん研究センター中央病院)
  • 本間 義崇(国立がん研究センター中央病院)
  • 内藤 陽一(国立がん研究センター 東病院)
  • 白石 航也(国立がん研究センター 研究所)
  • 谷内田 真一(国立がん研究センター 研究所)
  • 坂本 裕美(国立がん研究センター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,769,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生殖細胞系列の遺伝子変異による、発がん超高危険度群である遺伝性腫瘍の患者の遺伝診療の現場において多施設共同臨床観察研究を行い、1.拠点を構築して既知の原因遺伝子変異の検索を行い、我が国における遺伝子型-表現型関連に関する情報の集積・分析と、2.未知の原因遺伝子・修飾遺伝子の探索を行う。さらにこれらの知見に基づき、3.遺伝性腫瘍あるいはそれが疑われる症例・家系を的確に捕捉・診断・説明(遺伝カウンセリング)する方法と、4.個別化された予防医療の確立に貢献することを目的とする。
研究方法
本研究の研究分担者の施設における多施設共同研究体の基本プロトコールの導入を進めた。その際、施設による遺伝診療と研究の整理方針や体制の違いを勘案した調整を行った。90遺伝子の変異と10種の遺伝子融合を検索するNCC oncopanel v2を適用し、次世代シークエンサーを用いて解析した。同一症例について全エクソームシークエンシングも実施し、比較・相互検証を行った。先行研究及び本研究により収集された家族集積性・若年性の胃がんについて、生殖細胞系列の変異をコピー数異常を含めて検索した。MEN1遺伝学的検査においてMEN1遺伝子のexon 2-10のシーケンス解析に、適宜MLPA法による大領域欠失の検索を組み合わせた。
結果と考察
1)多施設共同研究体のプロトコールによる次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝性腫瘍家系の探索的解析を開始した。2)NGSによるターゲットシークエンス法では、94種類の遺伝性腫瘍の原因遺伝子のシークエンスが可能であり、高いスループットが可能である。特にMultiplex Ligation-dependent Probe Amplification(MLPA)法でのみ異常が検出されていた症例について、従来法との相関の検証を進めたところ、ゲノム大領域欠失等の異常の検出も可能であることが示され、最初のスクリーニング検査からNGSによる解析を実施する方法が期待された。3)家族集積性のある胃がん症例の生殖細胞系列DNA試料についてCDH1全exonを挟むPCRを行い、Sanger法で塩基配列を解析した。次にMLPA法にてCDH1の全エクソンのコピー数の変化を解析した。本研究により家族集積性の胃がんの生殖細胞系列の変化を発見し、血縁者のキャリアーの早期発見・治療につながった。4)MEN1遺伝学的検査14例、RET遺伝学的検査13例の解析を行った。このうちRET遺伝子について、これまで単独では病原性はないとされていたY806C変異が恐らく浸透率の低い甲状腺髄様がん原因変異となり得ることを明らかにした。5)遺伝子型-表現型に関する情報の集積・分析と未知の原因遺伝子の探索を多施設間で行うため、国立がん研究センターにおいて承認された研究プロトコールを参考にして、各施設で登録体制を整備し、既知の原因遺伝子変異の検索を行い、探索的なNGSによる解析の対象となりうる症例を蓄積した。他施設からの遺伝子検査を受託する場合は、必要な必要な標準作業手順と検体と報告書の流れを構築した。
結論
1)多施設共同研究体のプロトコールによる次世代シークエンサーを用いた遺伝性腫瘍家系の探索的解析が始動した。異なるプラットフォームによる次世代シークエンサー同士の検証が有用であったが、家系内の分離分析等の基本的な解析の重要性があらためて示された。2)ターゲットシークエンス法では94種類の遺伝性腫瘍の原因遺伝子のシークエンスが可能であり、高いスループットが可能である。今回の検討によりゲノム大領域欠失等の異常の検出も可能であることが示され、最初のスクリーニング検査からNGS解析を実施する方法の実現が期待された。3)コピー数異常の検索は、遺伝性胃がんの生殖細胞系列の変異の同定の重要な要素であることを示し、実際に胃がん集積家系の未発症例を早期発見につながることを実証できた。4)MEN患者およびMENが疑われる患者を対象に遺伝子解析を進めた。これによりこれまで病原性がないと考えられていたミスセンス塩基置換が病原性変異であることを証明した。5)多施設共同研究体で採択した複数の遺伝性腫瘍の汎用型プロトコールにより、複数の医療機関においてがん超高リスク群の診断と、層別化・個別化予防を目指した研究を行う基盤を構築することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438095C

収支報告書

文献番号
201438095Z