日本人女性のエストロゲンレセプター陽性乳癌の発症予防に向けた高危険群選別モデルの開発

文献情報

文献番号
201438094A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人女性のエストロゲンレセプター陽性乳癌の発症予防に向けた高危険群選別モデルの開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山下 啓子(北海道大学病院 乳腺・内分泌外科)
研究分担者(所属機関)
  • 玉腰 暁子(北海道大学大学院医学研究科・公衆衛生学分野)
  • 岩瀬 弘敬(熊本大学・大学院生命科学研究部・乳腺内分泌外科学分野)
  • 遠山 竜也(名古屋市立大学大学院医学研究科・腫瘍・免疫外科学)
  • 吉本 信保(名古屋市立大学大学院医学研究科・腫瘍・免疫外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
17,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人女性に激増しているエストロゲンレセプター(ER)陽性乳癌の発症予防に向けて、ER陽性乳癌の易罹患性に関与する環境因子、遺伝子多型、血清因子を解析して精度の高いER陽性乳癌高危険群選別モデルを構築する。
研究方法
本研究は、ER陽性乳癌患者と健常人女性を
対象としたcase control studyとして実施する。
1.対象
①ER陽性乳癌患者:閉経前 約300例、閉経後 約500例
2011年から2015年2月までに集積する症例を用いる。
②健常人女性:閉経前 約400例、閉経後 約600例
札幌市内の検診センターの乳がん検診受診者で同意が得られた女性
症例(ER陽性乳癌患者)と対照(健常人女性)は年齢をグループマッチングさせる。
2.検討項目
①環境因子:年齢、閉経状況、body mass index  (BMI)、閉経年齢(閉経後症例)、妊娠回数、授乳児数、飲酒
②遺伝子多型:
閉経前:rs10046、rs743572
閉経後:rs1042522、rs2583506
閉経前/閉経後共通:rs3803662、rs2046210、rs13281615、rs4784227、rs4973768
 遺伝子多型の解析は、同意の得られた女性から採取した血液からDNAを抽出してTaqMan SNP Assaysキットを用いて行う。
③血清因子
閉経前:テストステロン、25-OHビタミンD
閉経後:テストステロン、25-OHビタミンD、エストラジオール (RIA法)
3.高危険群選別モデルの構築
① 既に構築した「ER陽性乳癌ハイリスクモデル 2011」(Yoshimoto N, et al. Cancer Sci, 2011)を今回の症例、対照にあてはめ、感度、特異度を計算、ROC曲線を描出する。
→妥当性の検証
② 追加検討する因子について順にモデルに加え、モデルがより症例と対照の弁別に用いることが可能かどうかを検討する。
 遺伝子多型、血清因子、環境因子を合わせた発症リスクの大きさを検討し、介入効果の高い因子を探索する。
③ ①、②の結果を合わせ、最も効率よく高危険群を選別するモデルを提案する。
結果と考察
研究代表者、研究分担者の施設においてER陽性乳癌患者722例(閉経前265例、閉経後457例)を集積し、血清因子の解析を終了した。現在、遺伝子多型解析を進めている。健常人女性については、これまで「北海道対がん協会札幌がん検診センター」の乳がん検診受診者400例を集積した。今後さらに増やして、計1000例(閉経前400例、閉経後600例)を集積する予定である。
 乳癌は日本人女性の癌の罹患率の第1位でありこの20年間で3倍増加した。申請者らはエストロゲン依存性に発生・進展するタイプのER陽性乳癌が増加分のほとんどを占めることを報告した (Yamashita H, et al. Ann Oncol, 2011)。全乳癌の8割以上がER陽性乳癌である。エストロゲン依存性であるER陽性乳癌とエストロゲン非依存性のER陰性乳癌とでは発生・進展のメカニズムが異なる。したがって乳癌のリスク因子や発症メカニズムも両者で異なる。申請者らは日本人女性のER陽性乳癌の危険因子を同定するために、ER陽性乳癌患者と健常人女性を対象として、それまで欧米から報告されている種々の危険因子(環境因子、遺伝子多型、血清因子など)を解析して罹患リスクモデル「ER陽性乳癌ハイリスクモデル 2011」を作成した。本研究では2011年以降の新たな症例群を用いて「ER陽性乳癌ハイリスクモデル 2011」の妥当性を検証し、さらに最近報告されたER陽性乳癌の危険因子を追加検討することにより、より精度の高いER陽性乳癌高危険群選別モデルを作成する。本研究では症例、対照ともに最新の症例を用いるため現在の日本の現状に則したものとなり更なる精度向上が期待できる。さらに、高危険群選別モデルで高危険群と同定された女性に対して、内分泌療法剤の予防投与を行わない場合でも、乳癌検診を奨励することにより早期発見に繋がることが期待される。また、危険因子の同定は、ER陽性乳癌の発症メカニズムの解明と、より適切な予防に繋がる。
結論
本研究では症例、対照ともに最新の症例を用いるため現在の日本の現状に則したものとなり、精度の高いER陽性乳癌高危険群選別モデルの開発が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438094C

収支報告書

文献番号
201438094Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
23,010,000円
(2)補助金確定額
23,010,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,734,398円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 2,965,602円
間接経費 5,310,000円
合計 23,010,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
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