中枢神経系原発悪性リンパ腫に対するテモゾロミドを用いた標準治療確立に関する研究

文献情報

文献番号
201438087A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢神経系原発悪性リンパ腫に対するテモゾロミドを用いた標準治療確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西川 亮(埼玉医科大学国際医療センター脳脊髄腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 成田 善孝(国立がん研究センター中央病院・脳脊髄腫瘍科)
  • 倉津 純一(熊本大学・脳神経外科)
  • 嘉山 孝正(山形大学・脳神経外科)
  • 永根 基雄(杏林大学・脳神経外科)
  • 寺崎 瑞彦(久留米大学・脳神経外科)
  • 村垣 善浩(東京女子医科大学先端生命医科学研究所・先端工学外科学分野)
  • 若林 俊彦(名古屋大学・脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
21,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、原発性脳腫瘍の3%で国内年間発症数が約700人の希少がんである。しかし我が国における罹患率は1975年には10万人当たり男女とも0.04人であったものが1993年には男性0.4人、女性0.25人と、20年間で約10倍という著しい増加傾向にある。本腫瘍は、手術と放射線療法に照射前大量methotrexate(MTX)療法を加えることにより治療成績が改善してきたが、依然として生存期間中央値は3年であり、新規治療法の開発が急務である。本研究では、近年悪性神経膠腫の予後改善をもたらした、血液脳関門を通過する薬剤であるtemozolomide(TMZ)に注目し、従来の標準治療である大量MTX療法と放射線併用療法を対照とし、これらにTMZを加える治療法のランダム化第III相試験を行い、より効果の高い新たな標準治療を確立することを目的とする。
研究方法
この研究ではJCOG脳腫瘍グループによるランダム化第III相試験(JCOG1114)を行う。登録期間3年、追跡期間3年の計画で、予定登録数は130例である。TMZは本疾患に対しては薬事法上適応外であるために、先進医療B制度の下で行う。TMZ併用群が全生存期間に於いて標準治療に優っていることが示されれば、適応拡大を求める予定である。
Primary endpointは全生存期間、secondary endpointsはMTX療法終了後ならびに放射線治療終了時の奏効割合、無増悪生存期間、有害事象発生割合、MMSE非悪化割合等である。附随研究として、腫瘍組織を用いたMTXおよびTMZ感受性因子の探索等を開始している。
【対象(主な適格規準)】
(1)組織学的にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断されている
(2)脊髄を除く中枢神経系の原発であり、全身の造影CTで中枢神経以外に病変を認めない
(3)脳脊髄液の細胞診でリンパ腫細胞陰性または擬陽性
(4)20歳以上70歳以下、手術後3日以降20日以内
(5)PS(ECOG)が0 - 2、または腫瘍による神経症状のみに起因するPS 3
(6)化学療法、放射線療法の既往がない (7)主要臓器機能が保たれている
【治療】
手術後の適格例を一次登録し、照射前大量MTX療法を行う。増悪や毒性中止がなかった場合に二次登録を行い、A群(放射線治療のみ)かB群(TMZ併用放射線療法)にランダム割付する。30Gy(残存腫瘍ありの場合40Gy)の照射終了後、A群は経過観察、B群はTMZ維持療法を2年間行う。
【統計学的事項】
標準治療群の2年生存割合を65%、試験治療群では80%と仮定し、有意水準片側5%、登録期間3年、追跡期間3年、検出力80%とし、Schoenfeld & Richterの方法を用いて必要解析対象数を求めると各群60例、両群計120例となる。若干の追跡不能例を考慮して予定登録数は各群65例、両群計130例とした。登録終了3年後に主たる解析を行い結果を公表する。
副次的評価としてTMZによる二次がん発生と、放射線療法とMTXによる高次機能悪化を評価することを目的として試験全体の追跡期間を登録終了後10年とした。
結果と考察
【結果】
先進医療会議にて承認され、症例登録を開始した。平成27年3月25日までに5施設での登録が開始となったが、先進医療B制度に則って、順次登録可能施設の手続きを進めて行く予定である。登録症例数は5例である。現時点では特段の有害事象あるいは倫理的な問題は生じていない。
【考察】
粛々と先進医療B制度に則って手続きを進め登録可能施設を増加させるとともに、症例登録を促して行く必要がある。症例のモニタリングレポート、症例登録上の問題点、有害事象などについては今後の症例集積を待って報告したい。
結論
先進医療B制度の下、テモゾロミドの効果を検証する第III相臨床試験を立ち上げることが出来た。順次登録可能施設の申請を進め、症例登録を促して行く。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438087C

収支報告書

文献番号
201438087Z