切除不能膵癌に対する標準治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201438080A
報告書区分
総括
研究課題名
切除不能膵癌に対する標準治療の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
古瀬 純司(杏林大学 医学部 腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 浩(がん研究会有明病院 消化器内科)
  • 奥坂 拓志(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科)
  • 森実千種(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科)
  • 福冨 晃(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科)
  • 宮川 宏之(札幌厚生病院 消化器科)
  • 真口 宏介(手稲渓仁会病院 消化器センター)
  • 佐田 尚宏(自治医科大学 消化器・一般外科)
  • 行澤 斉悟(栃木県立がんセンター 腫瘍内科)
  • 山口 武人(千葉県がんセンター 消化器内科)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院委託研究院 消化器・腎臓内科学)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)
  • 山口 研成(埼玉県立がんセンター 消化器内科)
  • 佐野 圭二(帝京大学医学部 外科)
  • 清水 京子(東京女子医科大学 消化器内科)
  • 大川 伸一(神奈川県立がんセンター 消化器内科)
  • 田中 克明(横浜市立大学市民総合医療センター 消化器センター)
  • 木田 光広(北里大学東病院 消化器内科)
  • 峯 徹哉(東海大学医学部 消化器内科)
  • 水野 伸匡(愛知県がんセンター中央病院 消化器内科)
  • 細川 歩(富山大学附属病院 第三内科)
  • 金子 周一(金沢大学医薬保健域医学系 肝臓病学)
  • 片山 和宏(大阪府立成人病センター 肝胆膵内科)
  • 中森 正二(国立病院機構大阪医療センター 肝胆膵外科)
  • 柳本 泰明(関西医科大学附属枚方病院 肝胆膵外科)
  • 東 健(神戸大学大学院医学研究科 消化器内科学)
  • 井口 東郎(国立病院機構四国がんセンター 臨床研究センター)
  • 古川 正幸(国立病院機構九州がんセンター 消化器肝胆膵内科)
  • 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科)
  • 伊藤 芳紀(国立がん研究センター中央病院 放射線治療科)
  • 中村 聡明(京都府立医科大学 放射線診断治療学)
  • 佐藤 俊哉(京都大学医学部 医療統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
切除不能進行膵癌は極めて予後不良な疾患であり、より有効な治療法の開発が必要である。本研究では切除不能膵癌を①遠隔転移膵癌、②局所進行膵癌、③家族性膵癌に分けて標準治療を確立する。
研究方法
1)遠隔転移膵癌
従来の標準治療ゲムシタビン(GEM)を超える治療法として平成25年12月に5-FU/ロイコボリン/イリノテカン/オキサリプラチン併用療法(FOLFIRINOX)、平成26年12月にGEM+ナブパクリタキセル併用療法(G-NP療法)が承認された。FOLFIRINOXは最も効果が期待できるものの毒性も強い。本研究では毒性軽減を目的としたmodified FOLFIRINOXの第Ⅱ相試験を行い、安全性と有効性を評価する。
2)局所進行膵癌
先行研究としてS-1併用化学放射線療法のランダム化第Ⅱ相試験(JCOG1106)を実施し、本研究で引き続き追跡調査を行った。並行して、遠隔転移例に対するFOLFIRINOXとG-NP療法によるランダム化第Ⅱ相試験を行い、最も有効な化学療法を選択する。
3)家族性膵癌
家族性膵癌ではDNA損傷修復に関わるBRCA1/2遺伝子などの生殖細胞変異が指摘されており、プラチナ系薬剤の有効性が示唆されている。本研究ではGEM+オキサリプラチン併用療法(GEMOX療法)の第Ⅱ相試験を行い、これまでのデータと比較することで本治療法の有効性と安全性を検証する。
結果と考察
【結果】
1)遠隔転移膵癌
原法のイリノテカン180mg/m2から150mg/m2への減量と5-FU急速静注を削除したmodified FOLFIRINOXの第Ⅱ相試験を実施した。登録数65名(登録期間1年)の予定で平成26年3月に開始し、平成26年12月末、69例で登録を完了した。現在追跡中であり、平成27年12月に1年生存割合の主たる解析を行う。
2)局所進行膵癌
JCOG1106は平成26年11月に追跡調査を実施し、主要評価項目の1年生存割合を解析した。その結果、導入GEMなし群66.7%、導入GEMあり群69.3%、導入GEMあり群のハザード比1.157であった。毒性は導入GEMあり群で疲労、食欲不振、下痢、悪心などの消化器毒性が少ない傾向にあった。以上から、導入GEMありの治療がより有用と判断した。FOLFIRINOXとG-NP療法のランダム化第Ⅱ相試験は平成26年12月にJCOG運営委員会でコンセプトが承認され、研究計画書を作成中である。
3)家族性膵癌に対する化学療法
GEMOX療法の第Ⅱ相試験の研究計画書を作成した。主要評価項目は1年生存割合。予定登録患者数30名、登録期間3年、追跡期間登録終了後1年、総研究期間4年である。これまでのGEM単独の1年生存割合20~35%から、本治療では閾値1年生存割割合30%、期待1年生存割合50%と設定した。
【考察】
膵癌は初発時すでに70%程度が切除不能で診断されている。切除不能膵癌は遠隔転移と局所進行に分けられる。また、家族性膵癌ではBRCA1/2などの遺伝子変異の関与が挙げられ、DNA修復異常から癌化を高率にきたすことから非家族性膵癌と薬物の治療効果が異なることが示唆されている。病態の違いに応じて、①遠隔転移膵癌、②局所進行膵癌、③家族性膵癌に分けて治療戦略を考えることは極めて妥当であり、病態別の標準治療の確立を目指す意義は大きいものと考える。
遠隔転移を伴う膵癌に対し、FOLFIRINOXが強力な治療法として期待されているが高度の骨髄抑制や発熱性好中球減少により減量と中止を高率に必要とされる。本研究では、イリノテカンの減量と5-FU急速静注の削除したレジメンを採用し、骨髄抑制と下痢などの消化器症状の軽減を見込んでいる。
本研究班では局所進行膵癌に対する標準治療の確立のため、化学療法と化学放射線療法の第Ⅲ相試験を行うことを最終目的としている。今回、JCOG1106の結果、GEM導入化学療法後にS-1化学放射線療法を行う治療法がより有用と考えられた。一方、より有効な化学療法の選択のため、FOLFIRINOXとGEM+nab-PTX療法のランダム化第Ⅱ相試験を計画中である。この二つの新規治療法の比較試験はこれまで国内外ともに行われておらず、国際的にも意義が大きいものと考えられる。
家族性膵癌ではこれまでわが国では前向きな臨床試験は行われていなかった。本試験によりプラチナ系薬剤の有用性が確認され、家族性膵癌と非家族性膵癌との治療戦略の違いが明らかになれば、一般臨床において極めて大きな意義があるものと考える。
結論
切除不能膵癌を①遠隔転移膵癌、②局所進行膵癌、③家族性膵癌に分けて臨床試験を実施し、病態に応じた標準治療の確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438080C

収支報告書

文献番号
201438080Z