高齢者多発性骨髄腫患者に対する至適な分子標的療法の確立と治療効果および有害事象を予測するバイオマーカーの探索的研究

文献情報

文献番号
201438073A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者多発性骨髄腫患者に対する至適な分子標的療法の確立と治療効果および有害事象を予測するバイオマーカーの探索的研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 大(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 真介(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科 血液腫瘍内科学分野)
  • 李 政樹(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科 血液腫瘍内科学分野)
  • 吉満 誠(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科附属難治ウイルス疾患病態制御センター 血液・免疫疾患研究分野)
  • 吉田 功(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 血液腫瘍内科)
  • 得平 道英(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科)
  • 福原 規子(東北大学病院 血液・免疫科)
  • 辻村 秀樹(千葉県がんセンター 外来化学療法科)
  • 岸 慎治(福井大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本試験の主な研究目的は、①高齢者および自家移植を希望しない若年の未治療症候性骨髄腫患者に対するmelphalan+prednisolone+bortezomib(MPB)療法の至適投与スケジュールを選択するためのランダム化第Ⅱ相試験をJapan Clinical Oncology Group(JCOG)リンパ腫グループで実施し(JCOG1105試験)、将来の第III相試験で評価するMPB療法の至適レジメンを選択すること。および②JCOGバイオバンクに保存された血液検体を用いて効果と毒性を予測するバイオマーカーを探索すること。である。
研究方法
①高齢者または移植拒否若年者の未治療症候性骨髄腫患者に対するMPB導入療法のランダム化第II相試験(JCOG1105)
〈研究形式〉多施設共同ランダム化第II相試験(患者登録中)。
Primary endpoint:完全奏効(CR)割合、Secondary endpoints:治療完遂割合、有害事象発生割合、全奏効割合、全生存期間、無増悪生存期間(PFS)、染色体病型別の治療効果
〈対象〉20歳以上79歳以下の移植適応のない未治療症候性骨髄腫患者
〈治療内容〉
A群(modified PETHEMA-MPB):メルファラン 9mg/m2 内服day 1~4、プレドニゾロン 60mg/m2 内服day 1~4。1コース目は、ボルテゾミブ 1.3mg/m2 静注Day 1,4,8,11,22,25,29,32(6週間)、2〜9コース目は、day 1,8,15,22(5週間毎)
B群(JCOG-MPB):メルファラン 7mg/m2 内服day 1~4、プレドニゾロン 60mg/m2 内服day 1~4、ボルテゾミブ 1.3mg/m2 静注day 1,8,15(4週間毎)で計9コース
〈予定登録数と登録期間〉片群45人、両群で90人。登録期間:平成25年7月から2年6ヶ月。追跡期間:登録完了後3年。総研究期間:5年6ヶ月。
〈投与法選択の判断規準〉両群の毒性に差がなければ、CR割合が高い治療群を選択する。
〈治療前の染色体転座病型評価〉抗CD138抗体で純化した形質細胞を用いたCCND1, FGFR3, c-MAF mRNA発現定量検査を外部委託で行う。
②多発性骨髄腫に対するMPB療法の効果と末梢神経障害、間質性肺炎の発症を予測するバイオマーカー研究(JCOG1105附随研究)
〈対象〉JCOG1105に登録された患者のうち、JCOGバイオバンクへの同意が得られた患者。
〈方法〉JCOG1105参加施設で上記対象患者から採取され、JCOGバイオバンクに保存された末梢血単核球から抽出したDNAおよび血漿を用いて以下の解析を行う。これらの解析で得られたデータを、JCOG1105で得られた臨床情報、すなわち治療効果・予後・重篤な有害事象(特に末梢神経障害と肺障害)発現の有無と照合し、それらを予測しうるバイオマーカーを探索する。
結果と考察
平成27年2月10日までに予定登録数の46%である41人が登録された。平成26年12月26日(35人登録時点)にCRFレビューを行い、その時点で有効性評価が可能であった患者において有効性の確認を行った。その結果、両群とも当初に設定された7人以上での奏効が確認されたため、中間解析時も登録が中断されず、継続されることが決定された。研究②に関わるJCOGバイオバンクへの参加は、平成27年2月10日までに49施設中40施設でIRB承認が得られている。また、JCOG1105へ登録された41人中、33人(80.5%)でバイオバンクに試料がバンキングされている。現在は附随研究実施計画書を作成中である。
結論
日本における移植非適応の未治療症候性骨髄腫患者では、末梢神経障害や骨髄毒性を主な理由としてMPB療法の完遂率が低く、治療効果を十分に引き出せない可能性が報告されている。したがってMPB療法の至適投与法の確立を目指したJCOG1105試験の意義は大きい。またMPB療法を実施した患者において染色体転座病型が治療効果予測因子や予後因子になるのか否かについての検討は将来の層別化治療の可能性についての重要な示唆を与える結果となることが期待される。加えてMPB療法の臨床効果のみならず重篤な毒性である間質性肺疾患や末梢神経障害の発症を予測しうるバイオマーカーの同定が出来れば、将来の個別化医療の可能性を考える上で参考になるものと考えられる。本附随研究では探索的研究となるが、次なる第III相試験において検証することを予定している。
以上のように、本研究は本対象患者の標準治療確立と今後に繋がる新たな知見創出に貢献しうる重要な研究である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438073C

収支報告書

文献番号
201438073Z