超高齢者社会における治癒困難な高齢切除不能進行再発大腸癌患者に対する標準治療確立のための研究

文献情報

文献番号
201438072A
報告書区分
総括
研究課題名
超高齢者社会における治癒困難な高齢切除不能進行再発大腸癌患者に対する標準治療確立のための研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
濱口 哲弥(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 消化管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 長島 文夫(杏林大学 医学部 腫瘍内科)
  • 安藤 昌彦(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 尾嶋 仁(群馬県立がんセンター 消化器外科)
  • 山口 研成(埼玉県立がんセンター 消化器内科)
  • 傳田 忠道(千葉県がんセンター 消化器内科)
  • 正木 忠彦(杏林大学 医学部 第1外科)
  • 室 圭(愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部)
  • 篠崎 勝則(県立広島病院 臨床腫瘍科)
  • 大津 智(大分大学 医学部腫瘍内科)
  • 高島 淳生(国立がん研究センター中央病院 消化管内科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における大腸癌の罹患率、死亡率はともに年々増加しており、2015年には全体で死因の第一位となると予想されている。また、大腸がんの死亡者の6割弱は75歳以上であり、今後高齢者大腸癌の死亡者数はさらに増えることが予想されている。しかしながら、高齢者に限定した臨床試験はほとんど実施されてこなかったため、高齢者大腸癌の標準治療は確立していない。よって高齢者に対する大腸癌の標準化学療法の確立は喫緊の課題である。本研究は、高齢者のみを対象としたランダム化第III相試験を実施することで、高齢者においても若年者と同様にオキサリプラチンを併用することの有用性があるか否かを検証する。
研究方法
切除不能大腸癌における高齢患者の標準治療確立を目的に、JCOG大腸がんグループでランダム化第III相試験を実施する。フルオロピリミジン+BEV療法を標準治療とし、フルオロピリミジン+オキサリプラチン+BEV療法の無増悪生存期間における優越性を検証する。予定登録患者数は380名、登録期間3年、追跡期間2年を予定している。高齢者における治療選択の最適化をめざした附随研究も行う。
 病理組織学的に腺癌と診断された切除不能進行大腸癌であり、PS0-2の75 歳以上およびPS2の70-74 歳、術後補助化学療法を除く大腸癌に対する全身化学療法の治療歴がなく、主要臓器機能が保たれており、試験参加につき患者本人から文書で同意が得られている患者を対象とする。
 治療方法は、登録患者を標準治療群もしくは試験治療群に割付し、両群とも、病状の進行もしくは治療継続困難な有害事象が発現するまで継続する。
1. 標準治療群:以下のいずれかを選択
① 5-FU/LV+BV療法
BV 5mg/kgを投与後、レボホリナート(LV) 200mg/m2を2時間で静注、5-FU 2,400mg/m2を46時間持続投与。2週毎に繰り返す。
② カペシタビン+BV療法
BV 7.5mg/kgを投与後、同日よりカペシタビン(Cape) 1,250mg/m2を朝・夕食後の1日2回内服。これを14日間連続経口投与、その後7日間休薬。3週毎に繰り返す。
2. 試験治療群:以下のいずれかを選択
③mFOLFOX7+BV療法
BV 5mg/kgを投与後、LV 200mg/m2に並行してオキサリプラチン(L-OHP) 85mg/m2を2時間で静注投与、その後5-FU 2,400mg/m2を46時間持続投与。2週毎に繰り返す。
④ Cape+L-OHP+BV療法
BV 7.5mg/kg、L-OHP 130mg/m2を投与、同日よりCape 1,000mg/m2を朝・夕食後の1日2回内服。これを14日間連続経口投与、その後7日間休薬。3週毎に繰り返す。
【評価】
増悪が確認されるまで、両群とも6週毎にRECIST ver. 1.1に準じて有効性の評価を行う。また試験が終了するまで生存の確認を行う。安全性は、コース毎に有害事象をNCI-CTCAE ver. 4に従って評価。
試験治療群が標準治療群に対して無増悪生存期間において優越するという仮説を設け、標準治療群のmPFSを9か月、ハザード比0.75、片側有意水準5%、検出力80%、登録期間3年、追跡期間2年とし、両群あわせて380例を集積する。
結果と考察
JCOG大腸がんグループ57施設が参加するランダム化第III相試験(JCOG1018)として平成24年9月より平成26年2月までに48例登録され、すなわち登録ペースは3例/月と予定ペースである8-10例/月を大きく下回っていた。患者登録を促進するため、これまでにグループの研究者間で患者登録における問題点と解決法につき議論を重ね、プロトコール改訂を進めた結果、平成27年2月末日までに106例まで登録が進み4-5例/月と改善傾向をみとめた。これまでに報告された有害事象および重篤な有害事象は研究計画書作成時に想定した頻度と概ね同等であった。本研究班では、標準治療であるオキサリプラチン併用療法が高齢者に対して臨床的に意義のある治療であることを確認するために本臨床試験を開始した。症例登録開始2年6ヶ月で100例を超えて登録できたことは特記すべきであり、本研究参加者の熱意を実感できるものである。これは同様の研究デザインで行われた米国のNCCTG/CALGBによるN0949試験が登録数40例に達することができずに早期中止となったことと比較してのことである。
結論
高齢者大腸がん化学療法の標準治療確立を目指して多施設共同臨床試験JCOG1018を実施している。米国での同様のデザインの試験が登録不良のために早期中止になったことと比べると登録は進んでいるが、患者リクルートや試験デザインの変更などの工夫が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438072C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、高齢の切除不能進行大腸癌患者に対する標準治療の確立を目的とする。高齢者大腸癌の罹患率、死亡率は年々増えているが、高齢者に限定した臨床試験はほとんど実施されてこなかったため、高齢者の大腸癌の標準治療は確立していない。本研究では、高齢者のみを対象としたランダム化第III相試験を実施することで、高齢者においても若年者と同様にオキサリプラチンを併用することの有用性があるか否かを検証する。また、高齢者機能評価を並行して行うことで、高齢者のがん治療の個別化に寄与し得る。
臨床的観点からの成果
試験治療群の無増悪生存期間における優越性が示された場合には、若年者と同様にオキサリプラチンを併用することの有用性が確立されることとなる。逆に、オキサリプラチン併用の優越性が証明されない場合は、フルオロピリミジン+ベバシツマブ療法がやはり標準治療であることが明確となり、オキサリプラチン投与による末梢神経障害などの有害反応を回避し、かつ高価なオキサリプラチン投与の抑制を介して無駄な医療費の削減にも貢献できる。
ガイドライン等の開発
当初は米国の臨床試験グループNCCTGとの統合解析により、精度を高めた全生存期間での評価を行い、国際標準治療の確立に寄与することを目標としていたが、NCCTGのN0949試験が登録不良のため32例で中止となった。従って、本研究は高齢の切除不能進行再発大腸癌患者に対する世界で唯一のランダム化第III相試験となったことから、その重要性は日米共同研究立案時よりも増していると言え、国際標準治療の確立にむけて、すなわち世界のガイドラインを書き換えることを目指して研究を継続したい。
その他行政的観点からの成果
特に世界に例を見ない速度で高齢化が進んでいる我が国において、高齢者機能評価(GA)を並行して行い、GAによる高齢者に対する大腸がん化学療法の層別化の方法論が見いだせれば、大腸がんだけでなく他のがんの高齢者治療の個別化にも寄与できると考えられる。
その他のインパクト
2015年6月時点で、対象者が70歳以上の高齢者でなおかつ体力的な要素を考えた上での登録になるので、対象者の選別基準が高い中、症例登録開始約3年で、現時点で症例登録数が121例と目標登録数380例の約3割の到達状況であり、今年度に入り月5例のペースで登録が進んでいる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201438072Z