高齢者MDSにおけるクローン進化の経時的理解に基づく新たな治療戦略の構築

文献情報

文献番号
201438069A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者MDSにおけるクローン進化の経時的理解に基づく新たな治療戦略の構築
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小川 誠司(京都大学医学研究科・腫瘍生物学・分子遺伝学)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 泰司(長崎大学・原爆後障害医療研究所)
  • 中尾 眞二(金沢大学・医薬保健研究域医学系細胞移植学)
  • 大屋敷 一馬(東京医科大学・血液内科学分野)
  • 坂田 麻実子(柳元 麻実子)(筑波大学・医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MDSは、近年の遺伝子解析技術の進歩に伴い、分子異常の知見が加わった代表的ながんである。これらの結果を用いて、MDSの発症や進行を予測できるバイオマーカーや治療薬剤の有効性の評価法を確立し、分子病態に基づく個別化医療の実現に寄与する。
研究方法
MDS、MDS関連疾患に加えて、二次性白血病にいたる様々な経過で経時的に採取された試料由来のDNAについて、全エクソンシークエンスをふくむ複数の方法により体細胞変異を検索した。MDSに関連した遺伝子異常のマウスモデルの検討、さらに脱メチル化薬耐性細胞株を用いた耐性機構の探索を併せて行った。
結果と考察
MDSおよびMDS関連疾患における遺伝子異常は、初期に獲得される変異と経過中に獲得されるものとに分類された。高頻度の遺伝子変異をもつマウスモデルの検討により遺伝子変異の白血病化への関与が示された。メチル化薬耐機構の検索は、MDSにおける新たな薬剤感受性のメカニズムを明らかにした。
様々なMDS関連疾患における臨床検体を用いて遺伝子検索を行い、細胞起源や病期進行に関する新たな遺伝学的病態が明らかとなった。高頻度に認められた変異・新たな治療法に関係するin vitro、in vivoの検討により、その病態が再確認された。
結論
高齢者MDSにおけるクローン進化の過程が明らかにされ、それに基づく治療法検索の基盤が構築された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438069C

成果

専門的・学術的観点からの成果
骨髄異形成症候群(MDS)は、疾患特徴的な染色体異常・遺伝子変異をその主な病因として発症する造血器腫瘍性疾患である。それらの遺伝子異常を次世代シークエンサーにて解析することにより、MDSにおける複雑なクローン構造を明らかにすることが可能である。本研究により、MDSにおいて複数のクローンが一症例において認められること、さらにはそれらのクローンが包含関係にある場合、独立なクローンを形成する場合があることが示された。クローン進化の詳細な検討は、MDSの病因・病態を解明するのに有用である。
臨床的観点からの成果
MDSは高齢者に高頻度に認められる疾患であり、臨床的に血球減少・免疫不全・白血病への移行を呈する、非常に予後不良の疾患である。これまでも、経過中に様々な個々の遺伝子異常が付加的に認められることが知られており、それらが、臨床症状や検査所見、あるいは白血病への移行と関連することが報告されてきた。本研究では、次世代シークエンサーにより、複数の遺伝子異常を網羅的に解析することにより、病初期・経過中に認められるクローン構造の変化を捉えることが可能であった。
ガイドライン等の開発
クローン構造の検討は、現在非常に先進的な研究領域であり、様々な腫瘍において学会発表および論文の出版があいついでいる。本研究で認められる、様々な予後不良因子は、主に、個々の遺伝子変異・染色体異常に基づいており、複数の報告により、すでにガイドラインに取り入れられている。本研究で明らかにされている、腫瘍細胞の階層性・クローン進化等の新知見は、追随する類似研究により再現され更なる検討が行われている。
その他行政的観点からの成果
本邦における著しい高齢化に伴い、MDSの有病率は年々増加傾向である。更に高齢の症例では、大量化学療法や造血幹細胞移植などの適応とならない場合が多く治癒率は極めて低い。保存的な治療の目的で行われる輸血療法もまた継続的な医療依存を招いている。本研究で明らかにされつつあるMDSのクローン構造に関する新知見は、初期の治療適応のみならず、経過中・治療中のクローン進化の状況を把握し各症例の病状を経時的により詳細に明らかにするのに役立つ。高齢者における治療を効果的に行う指標となる点で医療経済的にも貢献度が高い
その他のインパクト
これらの成果は、複数の論文出版・国内の学会発表のみならず、アメリカ血液学会における複数回の講演(平成25年、平成26年)および、Aplastic Anemia/MDS International Foundation主催のMDSシンポジウムにおける招待講演(平成26年)などにおいて発表され、国際的にも広く認知されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201438069Z