小児造血器腫瘍(リンパ系腫瘍)に対する標準治療確立のための研究

文献情報

文献番号
201438067A
報告書区分
総括
研究課題名
小児造血器腫瘍(リンパ系腫瘍)に対する標準治療確立のための研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
真部 淳(学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤明子(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 上別府圭子(国立大学法人 東京大学大学院医学系研究科)
  • 出口隆生(国立大学法人 三重大学医学部附属病院)
  • 高木正稔(国立大学法人 東京医科歯科大学)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター)
  • 前田美穂(学校法人 日本医科大学)
  • 渡辺 新(社会医療法人明和会 中通総合病院)
  • 富澤大輔(独立行政法人 国立成育医療研究センター)
  • 後藤裕明(神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター)
  • 堀 壽成(学校法人 愛知医科大学医学部)
  • 小林良二(社会医療法人北楡会 札幌北楡病院)
  • 中澤温子(中川温子)(独立行政法人 国立成育医療研究センター)
  • 嶋田博之(学校法人 慶應義塾大学医学部)
  • 矢部普正(学校法人 東海大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,700,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者:富澤大輔 東京医科歯科大学(平成26年5月1日~平成26年8月31日)→国立成育医療研究センター(平成26年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
小児急性リンパ性白血病(ALL)等造血器腫瘍に対して晩期合併症の軽減と高い長期生存率が見込める標準治療を確立するために、治療層別化のための診断体制を含めた臨床研究体制を整備し、質の高い臨床試験を実施してエビデンスの創出を図る。
研究方法
小児造血器腫瘍の標準治療の確立のための臨床試験を日本小児白血病リンパ腫研究グループ(Japanese Pediatric Leukemia/ Lymphoma Study Group: JPLSG)の多施設共同臨床試験として計画実施する。
結果と考察
1)T-ALLに対する臨床試験:25歳未満のT-ALLを対象にJALSGとの共同研究として「小児および若年成人におけるT細胞性急性リンパ性白血病に対する多施設共同第II相臨床試験 JPLSG ALL-T11/JALSG T-ALL-211-U ALL-T11」を2011年12月1日に開始した。2)BCP-ALLに対する臨床試験:小児BCP-ALLを対象とした、初めての全国研究としてJPLSG ALL-B12研究を2012年11月16日に登録開始した。対象疾患は年間400-450例の発症が見込まれ、小児がんを対象とした国内最大規模の研究である。3)乳児ALLに対する臨床試験:移植に伴う晩期合併症の軽減を含めた治療の適正化と治療成績の向上を目指して、新規化学療法レジメンの導入とリスク層別化による移植適応の縮小を図ったMLL-10臨床試験が2011年1月より開始された。4)再発ALLに対する臨床研究:小児再発ALL治療の実態を把握するため、全再発ALLの前方視的観察を行う臨床研究ALL-R08を2009年6月1日より開始した。また、ICH-GCPに準拠した国際共同臨床試験として、国立名古屋医療センターにおける臨床研究中核病院事業の支援を受けてIntReALL SR 2010臨床試験プロトコールを作成した。5)小児リンパ腫に対する臨床試験:成熟B細胞性腫瘍に対する多施設共同後期第2相臨床試験(B-NHL03)は2004年11月に開始し、2011年1月に目標登録数を達成して登録を終了した。321例が登録され、4年生存率が92.7%で、4年無イベント生存率が87.4%であった。リンパ芽球型リンパ腫stage III/IVに対する多施設共同後期第II相臨床試験(ALB-NHL03)は2004年11月に開始し、2010年1月に目標登録数を達成して登録を終了した。病期IIIの成績が劣る傾向があり(5年無イベント生存率病期III:70.6%、病期IV 88.9%)、本邦のTリンパ芽球性リンパ腫の性質が欧米のものと異なる可能性が考えられた。未分化大細胞型リンパ腫については2002年から欧州グループ(EICNHL)の国際共同研究「ALCL99」に参加しており、2006年に割付試験を終了し、現在、診断時生物学的検査の臨床的意義の検証を目的とした観察研究を継続している。6)Ph+ ALLに対する臨床試験:小児の難治性白血病の一つであるフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)に対してPh+ALL04研究を実施した。3年の無イベント生存率(EFS)は57%、全生存率(OS)は80%と良好であったが、全例が同種移植を受けた点が問題である。次いでALL-Ph13研究では、まず全例にイマチニブ併用化学療法を行い、治療抵抗例に対してはダサチニブに変更して強化化学療法を行い、Ph+ALLに対する移植適応の条件を検証する。2013年10月に登録が開始された。7)QOL評価と長期フォローアップ体制の確立:小児リンパ性造血器腫瘍の標準治療の確立に当たり、BCP-ALL、T-ALL、Ph+ALL治療プロトコールにおいてQOL 調査を開始した。8)小児造血器腫瘍臨床研究の質の向上に関する研究:JPLSGで行われる各種臨床研究をモデルに特定非営利活動法人臨床研究支援機構データ管理部が行う各種臨床研究のデータ管理の実務と方法について標準化・効率化に向けた研究を実施した。9)国際共同研究の推進: I-BFM(International BFM)会議およびSt. Jude viva forumには日本から積極的に参加している。また、JPLSGの研究の多くは世界最大の血液学会であるアメリカ血液学会(ASH)の年次総会で発表・討論されている。
結論
最も頻度の高い小児がんであるALLに対する全国統一の臨床試験が開始され、ほぼ全ての小児造血器腫瘍で標準治療が確立されることが期待される。より質の高い医療の提供およびエビデンスの創出には、国際共同臨床試験への参加が不可欠であり、国際水準の臨床試験実施に向けた体制整備が急がれる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438067C

収支報告書

文献番号
201438067Z