がん治療による神経系合併症(認知機能障害と痛み)の緩和に関する研究

文献情報

文献番号
201438059A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療による神経系合併症(認知機能障害と痛み)の緩和に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山内 照夫(聖路加国際病院 腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 山内 英子(聖路加国際病院 乳腺外科)
  • 住谷 昌彦(東京大学)
  • 下條 信威(筑波大学)
  • 齋藤 繁(群馬大学)
  • 緒方 徹(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 小松 浩子(慶應義塾大学)
  • 齋藤 洋一(大阪大学)
  • 池田 和隆(東京都医学総合研究所)
  • 下川 敏雄(山梨大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん治療の合併症としての認知機能障害の評価と治療法の開発及び、化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛の機序解明と治療標的の探索を目的とする。
研究方法
1-1: がん治療の合併症としての認知機能障害
A) pNF-Hを用いた血液バイオマーカーの有用性検証と重症度評価:化学療法誘発性認知機能障害(ケモブレイン)とせん妄
B) 認知機能の心理物理評価方法の確立
C) 脳MRI volumetryを用いた脳白質量の定量化
D) 認知機能障害の分子メカニズムの解明
E) 乳がん患者の化学療法誘発性認知機能障害に対する活性化プログラムの開発
1-2: 化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛
A) 経頭蓋大脳運動野磁気刺激療法(rTMS)の効果検証
B) 化学療法誘発性末梢神経障害の発症・重症化と治療薬反応性を規定する遺伝子多型解析によるオーダーメイド医療基盤整備と新規鎮痛薬の候補分子探索
①末梢神経障害発症及びがん性疼痛重症化の遺伝的探索
②オピオイド鎮痛剤感受性の遺伝的探索
C) 神経障害性疼痛の分子メカニズム解明
①神経障害性疼痛に対するモルヒネの鎮痛作用減弱に対する脊髄5-HT3受容体の関与
②神経障害痛モデル(SNL)ラットにおける髄腔内ブプロピオン(ドパミン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬)の鎮痛効果および脊髄後角でのノルアドレナリン・ドパミンの経時的推移
D) pNF-Hを用いた血液バイオマーカーの有用性検証と重症度評価
結果と考察
研究方法に記載の各研究方法について報告する。
1-1:
A),B),C),D) は、進行中でデータ集積・解析は平成27年度に予定。
E) は、計21名が参加し、ヨガを用いた活性化プログラムを実施し、評価した。実施可能性は認められたが、有用性に関して検証が必要である。
1-2:
A) 進行中でデータ集積・解析は平成27年度に予定。
B) ①神経栄養因子の一つであるpleiotrophin遺伝子上のrs11764598の一塩基多型によって疼痛の重症化が異なることが示された。
②下顎形成術の症例においてP2RX7遺伝子領域の多型(一塩基多型; SNP)に対して、術後24時間の痛みが強い傾向を示すSNPを認めた。また、ハプロタイプ解析においても、有意に高い痛み感受性と低いフェンタニルの鎮痛効果を示すタイプや低い痛み感受性と高いフェンタニルの鎮痛効果を示すタイプがあることが分かった。さらに、TRPC3の遺伝子近傍領域のrs1465040多型に関して、開腹手術の症例を用いて関連解析を行ったところ、下顎形成術の症例において関連性が再現された(P = 0.036)。また、4個のSNPs、術前の痛み感受性、及び体重が術後24時間のフェンタニル使用量の予測因子として同定され、2個のSNPs及び体重が周術期のフェンタニル使用量の予測因子として同定された。
C) ①オンダンセトロン(5-HT3拮抗薬)、又は5,7-DHT(5-HTデプレーター)の髄腔内投与により、正常ラットではモルヒネの鎮痛作用が減弱し、SNLでは鎮痛作用が逆に増強した。
②SNLラットへのブプロピオンの髄腔内投与で、投与量依存性に逃避閾値が上昇し、その作用はα2受容体拮抗薬イダゾキサン、ドパミンD2受容体拮抗薬スルピリドの先行投与によって消失した。ブプロピオンの髄腔内投与で脊髄後角のNAおよびDAの増加が認められた。
①、②ともに人を対象とした臨床研究への応用を検討したい。
D)pNF-H陽性者におけるCIPN発症率に有意差はなかった。
結論
1.化学療法薬における軸索損傷が血中pNF-H値によって測定可能である。
2.化学療法による認知機能障害に対して、ヨガを取り入れた認知機能活性化プログラムは実施可能であり、有効性も示唆される。
3.化学療法による神経障害性疼痛及びがん終末期のがん性疼痛において、神経栄養因子の一つであるpleiotrophin遺伝子の一塩基多型が疼痛の重症度に関連している。
4.術後疼痛に対するオピオイド感受性について、P2RX7遺伝子領域の一塩基多型及びTRPC3の遺伝子近傍領域のrs1465040一塩基多型が関連している。
5.神経障害性疼痛の動物モデルにおいて、脊髄後角における5-HTが増加し、モルヒネと5-HT3阻害薬を併用することで鎮痛作用が増強する。
6.神経障害性疼痛の動物モデルにおいて、脊髄後角のノルアドレナリン・ドパミン量が疼痛に関与し、ドパミン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬によって鎮痛作用を認めた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438059C

収支報告書

文献番号
201438059Z