これまで治療法がなかった食道癌術後の難治性吻合部狭窄に対する新しい治療法の開発

文献情報

文献番号
201438058A
報告書区分
総括
研究課題名
これまで治療法がなかった食道癌術後の難治性吻合部狭窄に対する新しい治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小田 一郎(国立がん研究センター中央病院)
  • 滝沢 耕平(静岡県立静岡がんセンター)
  • 青山 育雄(京都大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化管は食物の通過経路として重要な臓器であり、消化管癌術後の吻合部狭窄は、医原性の嚥下障害を引き起こす。なかでも、食道癌の術後吻合部狭窄は5~46%と頻度が高い。術後吻合部狭窄は、一般にステロイド局注を併用するバルーン拡張術によって治療されるが、一回の拡張術では改善せず、数ヶ月以上にわたり嚥下障害で苦しむ難治例もある。現在、この難治性狭窄に対する有効な治療法はなく、効果的な新しい治療法の開発が急務である。研究代表者らは、この難治性吻合部狭窄に対し、内視鏡下に狭窄部に切開を加えた後に瘢痕組織そのものを切除する全く新しい治療(Radial Incision and Cutting method:RIC)を開発し、従来の拡張術では20%程度であった1年間の狭窄部開存率を62%に高めることができた。本研究では、RICの有用性を多施設共同臨床試験で検することを目的としている。
研究方法
食道がん術後の難治性吻合部狭窄に対するステロイド併用RICの安全性と有効性をステロイド併用内視鏡的バルーン拡張術(Endoscopic Balloon Dilation:EBD)とのランダム化第II/III相試験にて検証する。第II相部分では安全性評価をprimary endpointとし、安全性が確認されれば、第III相部分で、無再狭窄生存期間と24週時点までの再拡張術の実施回数を比較する。予定登録数は各群65例で計130例。登録期間3年、追跡期間は登録終了後6か月で、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の消化器内視鏡グループ参加36施設で実施する。【適格基準】1)胸部食道癌に対して実施された手術が以下の①~④のすべてを満たす。①胸部食道癌(UICC-TNM第7版)に対する食道亜全摘術が実施されている。②手術からの期間は問わないが、以下のいずれかに該当する。・術後24週(168日)以内である。・術後24週(168日)を超える場合、登録前12週(84日)以内の頸胸腹部造影CTにて明らかな再発所見を認めない。ただし、造影剤アレルギー、腎機能障害等を有する場合には単純CTも許容する。③胃管再建である(吻合法、吻合部部位、再建経路は問わない)。
④食道癌の遺残がないと考えられる。2)吻合部狭窄に対する前治療が以下のすべてを満たす。①EBDまたはブジー拡張術を24週(168日)以内に6 日以上の間隔で3回以上実施している。ただし、6 日以内に2回以上拡張術を実施した場合は、1 回とカウントし、ステロイド併用の有無は問わない。②吻合部狭窄に対して内視鏡的切開術の既往がない。3)登録前の嚥下障害がDysphagia score≧2である(固形物が通らない)。ただし、吻合部狭窄以外の要因が嚥下障害の主な原因と考えられる場合は適格としない。4)狭窄長が2 cm以下であることが拡張術時の内視鏡検査またはX線造影検査で確認されている。5)食道癌に対する術前化学療法の既往の有無については問わない。術後化学療法については化学療法終了後4週(28日)以上経過している場合は適格とする。6)食道癌に対する術前放射線治療歴の有無については問わない。
結果と考察
[結果] 2014年3月19日 JCOGプロトコール審査委員会審査承認。2014年4月 国立がん研究センター中央病院の倫理審査承認。以後、研究参加各施設において倫理委員会への申請、および本試験治療の術者認定を行った。2014年6月20日 JCOG消化器内視鏡グループ班会議にて試験開始について説明。2014年11月14日 JCOG消化器内視鏡グループ班会議にて試験開始後の症例集積状態や、実際に試験を開始後の各施設での状況問題点について討議した。2014年12月11日 予期せぬgrade 4の有害事象(自殺企図)が発生したため、「臨床研究に関する倫理指針」第2 3(9)①の規定に基づき対応するとともに、JCOG効果安全性委員会へ報告した。2015年3月末時点で18例が登録されており、現在も症例集積中である。[考察]これまで有効な治療法がなかった食道がん術後難治性吻合部狭窄に対する新しい治療(ステロイド併用RIC)の有効性と安全性を検討する多施設共同試験を開始した。目標症例数が130例であるが、試験開始約7ヶ月で18例(14%)の登録なので、今後の症例集積を加速する必要がある。本試験にて、難治性吻合部狭窄例の嚥下障害が短期的に改善することが示せれば、患者のQOLを劇的に改善させると期待できる。
結論
食道がん術後難治性吻合部狭窄は、バルーン拡張術でも改善しないため患者のQOLを著しく低下させる。本試験で有効性が示されれば、新しい標準治療になると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438058C

収支報告書

文献番号
201438058Z