がん治療に伴う皮膚変化の評価方法と標準的ケア確立に関する研究

文献情報

文献番号
201438057A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療に伴う皮膚変化の評価方法と標準的ケア確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
野澤 桂子(国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 平川 聡史(浜松医科大学皮膚科学)
  • 水谷 仁(三重大学大学院医学系研究科臨床医学鶏講座皮膚科学)
  • 関根 広(東京慈恵会医科大学付属第三病院放射線医学(治療))
  • 菊地 克子(東北大学病院皮膚科学)
  • 清原 祥夫(静岡がんセンター皮膚科)
  • 山崎 直也(国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科)
  • 角 美奈子(がん研有明病院放射線治療部)
  • 飯野 京子(国立看護大学校看護学部がん看護)
  • 今西 宣晶(慶應義塾大学医学部解剖学教室臨床解剖学)
  • 菅沼 薫((株)エフシージー総合研究所)
  • 清水 千佳子(国立がん研究センター中央病院乳腺腫瘍内科)
  • 鈴木 公啓(東京未来大学・パーソナリティ心理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、多分野の専門家が協働して、化学療法と放射線治療に伴う皮膚の有害事象について非侵襲的な客観的評価法を開発する(26-27年度)とともに、日常整容行為を含めた外見の保持に関する標準的なケア方法を確立する(27-28年度)ことを目標とする。
本年度は、3ヶ年計画の1年目として、以下の研究課題に取り組んだ。各種計測機器を用いて継時的な皮膚機能検査を行うと同時に、三次元培養皮膚を用いて皮膚外表の評価系を構築するなど、皮膚症状の非侵襲的な客観的評価法の開発を行う(研究1・2・3)。これにより、肉眼的に明らかになる前の早期の皮膚障害をとらえる可能性があり、予防的介入の時期や適切な対応方法の確定が可能となる。また、並行して外見のケア方法を検討する(研究4)とともに、外見変化とそのケアが患者のQOLに及ぼす影響を検証する(研究5)。そして、医療者が実施すべきエビデンスに基づいたアピアランスケアに関する患者教育内容を検討する(研究6)。
研究方法
1)EGFR阻害薬に伴う皮膚障害の症状の数値化・可視化:EGFR阻害薬投与の小細胞肺癌・大腸癌患者を対象(40名・8週間)として、皮膚機能の機器計測及び表皮の画像評価を開始した。2)三次元培養皮膚を用いた皮膚外表の評価系の構築:ナノスーツを用いた表皮を走査型電顕で観察およびEGFR阻害薬による表皮変化の測定を実施した。3)放射線治療に伴う皮膚症状の数値化・可視化:乳癌患者を対象(40名・6ヶ月)に放射線照射部位の皮膚機能の機器計測を開始した。4)日常整容的処置の安全性の検証:がん治療中の日常整容行為として、クレンジング方法について検証した。5)治療による皮膚症状とそのケアが患者のQOLに及ぼす影響:皮膚症状に伴うQOLの変化の継続測定(80名)、外見変化が患者の心理に及ぼす影響についてのシステマティックレビュー、男性がん患者を対象とした治療に伴う外見変化に関する実態調査を行った。6)医療者が実施すべきエビデンスに基づいたアピアランスケアに関する患者教育内容の確立に関する研究に着手した。 
結果と考察
1)EGFR阻害薬に伴う皮膚障害の症状の数値化・可視化:3施設で計12名の機器計測が開始された。診療状況によって当初の見込みより適格患者が減少した施設があり、予定より症例登録が遅れている。2)三次元培養皮膚を用いた皮膚外表の評価系の構築:EGFRを阻害することにより生じる皮膚変化を電子顕微鏡レベルで観察するモデルを確立した。3)放射線治療に伴う皮膚症状の数値化・可視化:4施設で計13名の機器測定が開始され、継時的な測定数値の変化とともに、皮膚機能の喪失が客観的に示され始めている。4)日常整容的処置の安全性の検証:クレンジング動作には、皮膚に負担をかけずにメイクアップ汚れを除去する最適な触圧と動かし方や方法があること、使用する化粧剤の量による触圧への影響も大きいことが示された。5)治療による皮膚症状とそのケアが患者のQOLに及ぼす影響:皮膚症状に伴うQOLの変化については、25名の継続測定を開始した。外見変化が患者の心理に及ぼす影響についてのシステマティックレビューでは、外見変化が患者の心理社会的機能の低下に関連していることだけでなく、外見変化をきたした患者の心理社会的機能の維持・向上に有用な介入も明らかになった。また、先行研究がない男性がん患者(配布949名)を対象に、治療に伴う外見変化に関する実態調査を行った。855名の男性患者から回答を得、患者支援に役立つ知見を得た。6)医療者が実施すべきエビデンスに基づいたアピアランスケアに関する患者教育内容の確立:アピアランスケアに関する文献調査を行うとともに、24年に実施した医療者対象全国調査の再分析を行い、がん患者の外見に関する構造化されたケアは少なく、今後の医療システムに適応できるプログラムの開発が必要であることが示唆された。
結論
「外見の保持」という視点から、皮膚科学・腫瘍皮膚科学・腫瘍内科学・放射線治療学・解剖学・臨床心理学・社会心理学・香粧品学の分野が初めて協働し、新たな評価方法の確立を目指す途上である。今後、さらなるデータの集積により、非侵襲的な客観的評価法の開発と多面的なケア方法の確立に結びつくものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438057C

収支報告書

文献番号
201438057Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,960,000円
(2)補助金確定額
24,054,158円
差引額 [(1)-(2)]
905,842円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,503,841円
人件費・謝金 2,485,661円
旅費 281,280円
その他 1,023,376円
間接経費 5,760,000円
合計 24,054,158円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
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