がん疼痛へのオピオイド使用に対するバイオマーカーを用いたランダム化比較試験

文献情報

文献番号
201438056A
報告書区分
総括
研究課題名
がん疼痛へのオピオイド使用に対するバイオマーカーを用いたランダム化比較試験
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中川 和彦(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西尾 和人(近畿大学 医学部)
  • 小山 敦子(近畿大学 医学部)
  • 鶴谷 純司(近畿大学 医学部)
  • 千葉 康敬(近畿大学 医学部附属病院)
  • 松岡 弘道(近畿大学 医学部)
  • 藤田 至彦(近畿大学 医学部)
  • 吉田 健史(近畿大学 医学部)
  • 酒井 清裕(近畿大学 医学部)
  • 寺嶋 応顕(近畿大学 医学部奈良病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、がん疼痛患者のCOMT-SNPs測定に基づいてモルヒネとオキシコドンの第三相ランダム化比較試験を行い、オピオイド個別化治療の有用性を検討、将来のオピオイドの個別化治療に繋げることである。また、治療効果や有害事象に関わる薬理学的バイオマーカー候補分子との相関より、実測可能な薬理学的バイオマーカーを得ることを目的とする。
研究方法
がん疼痛を有する者を対象とした多施設共同ランダム化第三相試験
<対象>一次登録:根治手術不能がん患者。二次登録:がん疼痛を有し、NSAIDsまたはアセトアミノフェンを常用量投与中で、疼痛スケールNumerical Rating Scale(NRS)3以上のオピオイド治療の対象となる症例。登録前2週間以内にオピオイドによる治療歴のない症例。化学療法後2週間以上経過している症例。本プロトコール中、化学療法施行のない症例。文書による同意が得られている症例。<目標症例数>200例(二次登録)
 <症例数設定根拠> 先行研究より、COMT-SNPs (rs4680) GG症例において、モルヒネ高用量必要症例は36.8%であり、オキシコドンの高用量必要症例は5%程度と見積もった。以上のことから、GG症例において、モルヒネ群、オキシコドン群のイベント発生割合をそれぞれ35%、5%と仮定した。有意水準を片側2.5%、検出力を80%として、フィッシャーの直接確率検定にて算出すると、必要症例数は1群31例(両群計62例)となる。GG genotype症例が全体の1/3程度と見込まれるため、必要登録数は186例となる。若干の解析不能例を見込んで、目標症例数を200例とした。
<方法> 前向き臨床試験において、がん患者の一次登録を行い、COMT-SNPs(rs4680)をライフテクノロジー社Taqman SNP Genotyping Asssaysを用いて測定する。がん疼痛の出現後、初回オピオイド治療の適応時に、COMT遺伝子多型におけるGGアレル群、Non-GGアレル群の二群に層別化し、二次登録を行う。それぞれモルヒネ速放剤群、オキシコドン速放剤群の二群にランダム化を行い、NRSの33%以上の減少かつNRS3以下になるまでタイトレーションを行う。Day1投与時の高用量必要症例(モルヒネ力価換算量)の頻度を臨床的・定量的エンドポイントにして、GGアレル群、Non-GGアレル群での、モルヒネおよびオキシコドンの治療効果を比較検討する。また、オピオイドの有害事象発現に関わる各種バイオマーカー候補を測定し、両者の相関を統合的に検討する。オピオイド治療前・治療1日後、治療8日後にNRS、心理テストおよびQOL評価尺度および採血(前13.5ml, 1,8日目各5ml)を施行する。オピオイド治療は通常の治療指針に従って行う。
結果と考察
56名の固形がん患者が1次登録され、全ての患者のCOMT遺伝子多型の解析を行っている。解析結果は遺伝子情報を含む個人情報管理データベースに入力され保管されている。これらの内、4名にNRS3を超える疼痛の出現が観察され、2次登録、無作為層別、オピオイドによる、タイトレーションが行われた。期間中8名に2次登録がなされないままオピオイド治療が施され、脱落例と考えられた。
ピオイドによる除痛が必要と判断された。このうち8例は何らかの理由により2次登録がなされずに、脱落症例となっており、原因の究明と改善策の提案が必要と考えられた。
結論
4か月でオピオイドが必要とされない疼痛あるいは無痛の56例が登録されたが、経過中に約25%にオピオイド治療が施された。がん患者の緩和ケアにおける疼痛コントロールは重要な課題であると考えられた。
今後、症例集積を重ね、COMT遺伝子多型に基づくオピオイド製剤選択の重要性を明らかにしてゆく。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438056C

収支報告書

文献番号
201438056Z