文献情報
文献番号
201438046A
報告書区分
総括
研究課題名
切除不能進行・再発胃がんに対する個別化治療と最適化標準療法に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山田 康秀(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院消化管内科)
研究分担者(所属機関)
- 小泉 和三郎(北里大学医学部 消化器内科)
- 高金 明典(函館五稜郭病院 外科)
- 行澤 斉悟(栃木県立がんセンター 腫瘍内科)
- 山口 研成(埼玉県立がんセンター 消化器科)
- 岡本 渉(国立がん研究センター東病院 消化管内科)
- 前田 義治(がん・感染症センター東京都立駒込病院 化学療法科)
- 陳 勁松(がん研究会有明病院 消化器内科)
- 中山 昇典(神奈川県立がんセンター)
- 門脇 重憲(愛知県がんセンター中央病院)
- 安井 久晃(国立病院機構京都医療センター)
- 田村 孝雄(近畿大学医学部)
- 後藤 昌弘(大阪医科大学)
- 津田 政広(兵庫県立がんセンター)
- 北口 聡一(広島市立安佐市民病院)
- 平島 詳典(大分大学医学部附属病院)
- 谷口 博一(関西ろうさい病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HER2陰性切除不能進行・再発胃癌患者を対象にドセタキセル+シスプラチン+S-1併用療法(DCS療法)を試験治療とし、標準治療であるシスプラチン+ S-1(CS)療法に対する優越性を検証するためのランダム化比較試験を核として①HER2による治療の個別化、②クレアチニンクリアランスによる治療の個別化、③組織型による治療法の個別化、④予後予測分子マーカーによる治療法の個別化を目指す
研究方法
主要評価項目は全生存期間、筆頭副次的評価項目は分化型腺癌/未分化型腺癌のサブグループ毎の全生存期間(組織型別にDCS群、CS群の治療効果が異なる場合、結果の解釈を事前に定めている)、副次的評価項目は無増悪生存期間、奏効割合、用量強度、有害事象発生割合、Grade 4の非血液毒性発生割合、早期死亡割合、治療関連死亡発生割合、分化型腺癌/未分化型腺癌のサブグループ毎の無増悪生存期間、分化型腺癌/未分化型腺癌のサブグループ毎の奏効割合とする。
試験治療(DCS)群では、第1コース開始前のクレアチニンクリアランス値に応じて、シスプラチンおよびS-1の投与量を変更する。クレアチニンクリアランスはCockcroft-Gault式※により推測値を求める。
※Cockcroft-Gault式を以下に示す:男性:Ccr={(140-年齢)×体重(kg)} / {72×血清Cr値(mg/dL)}、女性:Ccr=0.85×{(140-年齢)×体重(kg)} / {72×血清Cr値(mg/dL)}。
ERCC1などmRNA定量のための薄切標本の作成は各々の参加施設で行う。原発巣切除標本(ホルマリン固定パラフィン包埋)からmRNA量を測定する患者では解析用として10枚(10m厚)、原発巣内視鏡生検標本を用いて測定する患者では遺伝子発現解析用として15枚を測定施設に送付する。H-E(hematoxylin and eosin)染色用としての薄切標本は、1検体あたり5m厚1枚のプレパラートを用意する。mRNA発現量の測定は、抗癌剤に対する腫瘍反応を規定する因子を解析することにより腫瘍に即した個別化化学療法が可能になるとの考えから、同因子の腫瘍内におけるmRNA発現量をRT-PCR法により北里大学消化器内科で行う。レーザー捕獲顕微鏡を用いて、マーキングしたH-E染色像を参照しながら10m厚のプレパラート上の腫瘍細胞のみを正確に切り出す。切り出した腫瘍細胞からRNAを抽出し、高精度かつ高感度微量検出可能なReal time RT-PCR法を用いてmRNA発現量の解析を行う。従来、このようなmRNA発現解析は新鮮凍結標本を用いることが必要とされてきたが、北里大学は、通常病理検査標本であるホルマリン固定パラフィン包埋薄切標本から解析に十分なRNAを抽出する技術を有している。
試験治療(DCS)群では、第1コース開始前のクレアチニンクリアランス値に応じて、シスプラチンおよびS-1の投与量を変更する。クレアチニンクリアランスはCockcroft-Gault式※により推測値を求める。
※Cockcroft-Gault式を以下に示す:男性:Ccr={(140-年齢)×体重(kg)} / {72×血清Cr値(mg/dL)}、女性:Ccr=0.85×{(140-年齢)×体重(kg)} / {72×血清Cr値(mg/dL)}。
ERCC1などmRNA定量のための薄切標本の作成は各々の参加施設で行う。原発巣切除標本(ホルマリン固定パラフィン包埋)からmRNA量を測定する患者では解析用として10枚(10m厚)、原発巣内視鏡生検標本を用いて測定する患者では遺伝子発現解析用として15枚を測定施設に送付する。H-E(hematoxylin and eosin)染色用としての薄切標本は、1検体あたり5m厚1枚のプレパラートを用意する。mRNA発現量の測定は、抗癌剤に対する腫瘍反応を規定する因子を解析することにより腫瘍に即した個別化化学療法が可能になるとの考えから、同因子の腫瘍内におけるmRNA発現量をRT-PCR法により北里大学消化器内科で行う。レーザー捕獲顕微鏡を用いて、マーキングしたH-E染色像を参照しながら10m厚のプレパラート上の腫瘍細胞のみを正確に切り出す。切り出した腫瘍細胞からRNAを抽出し、高精度かつ高感度微量検出可能なReal time RT-PCR法を用いてmRNA発現量の解析を行う。従来、このようなmRNA発現解析は新鮮凍結標本を用いることが必要とされてきたが、北里大学は、通常病理検査標本であるホルマリン固定パラフィン包埋薄切標本から解析に十分なRNAを抽出する技術を有している。
結果と考察
本研究の結果、HER2陰性胃癌に対する新たな標準治療を確立することができる。また、実臨床における高齢癌患者の増加に際し、体表面積に加え年齢、性を考慮した腎機能の指標であるクレアチニンクリアランス値を用い、より適正化した個々の患者の初回抗癌剤投与量を設定することの有用性、重篤な有害事象を回避することによる治療継続性を検証する。
本研究による先行研究の結果、ERCC1は切除不能進行・再発胃癌の独立した予後不良因子であり、ERCC1 mRNA量は分化型腺癌に比べ未分化型腺癌で高い傾向がみられた。本第Ⅲ相試験では試験対象全体の治療成績の解析に加え、組織型別の対象集団に対する治療効果を確認する。
また本試験の付随研究として、抗癌剤の効果予測法を開発するために、癌部生検組織および血液検体を用いて網羅的遺伝子解析およびプロテオミクス解析などを国立がん研究センター研究所および北里大学で行う。余剰検体はJCOGバイオバンクに保存し、検査法の進歩により新たな解析が必要な場合は再利用する。
本研究による先行研究の結果、ERCC1は切除不能進行・再発胃癌の独立した予後不良因子であり、ERCC1 mRNA量は分化型腺癌に比べ未分化型腺癌で高い傾向がみられた。本第Ⅲ相試験では試験対象全体の治療成績の解析に加え、組織型別の対象集団に対する治療効果を確認する。
また本試験の付随研究として、抗癌剤の効果予測法を開発するために、癌部生検組織および血液検体を用いて網羅的遺伝子解析およびプロテオミクス解析などを国立がん研究センター研究所および北里大学で行う。余剰検体はJCOGバイオバンクに保存し、検査法の進歩により新たな解析が必要な場合は再利用する。
結論
対照(CS)群の全生存期間中央値は13.5ヶ月と予想される。試験治療(DCS)群がこれを3ヶ月上回るか否かを検出する優越性臨床試験として計画した場合、症例集積期間4.5年、追跡期間2年、有意水準片側5%、検出力80%と仮定すると、この差に必要な症例数は732例となる。若干の不適格、除外症例を見込んで、1群375例、2群併せて750例の症例集積を目標とする。
平成27年3月11日現在、609名(参加施設は50施設)が登録された。試験開始後の症例集積速度(17.4人/月)は既に予定(13.8人/月)を上回っている。
平成27年3月11日現在、609名(参加施設は50施設)が登録された。試験開始後の症例集積速度(17.4人/月)は既に予定(13.8人/月)を上回っている。
公開日・更新日
公開日
2015-09-14
更新日
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