StageIV 乳癌に対する標準治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201438042A
報告書区分
総括
研究課題名
StageIV 乳癌に対する標準治療の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
枝園 忠彦(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩田 広治(愛知県がんセンター中央病院)
  • 井上 賢一(埼玉県立がんセンター乳腺腫瘍内科)
  • 増田 慎三(国立病院機構大阪医療センター 外科)
  • 穂積 康夫(自治医科大学)
  • 青儀 健二郎(国立病院機構四国がんセンター)
  • 中上 和彦(静岡県立総合病院)
  • 山本 尚人(千葉県がんセンター)
  • 佐藤 信昭(新潟県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
StageIV乳癌に対する治療の目標は症状の緩和が主であり、効果の期待される薬物を順次投与するが、明確に生存期間を延長させるデータがあるものは少ない。本研究ではこれまで標準とされていた薬剤のみの治療に、原発巣切除術を組み合わせることで予後改善が得られるかどうかを検証することを目的として多施設共同第III相試験を実施する。
研究方法
【試験デザイン】JCOG乳がんグループによる第III相試験として登録を開始。Primary endpointは全生存期間、secondary endpointsは遠隔転移無増悪割合、年次無局所再発生存割合、局所潰瘍形成・局所出血発生割合、年次無原発巣切除生存割合、有害事象発生割合、手術合併症発生割合、重篤な有害事象発生割合である。
【対象】病理組織学的に診断された、未治療のStageIV乳癌患者。CTまたはMRIにより評価可能な転移巣をもつ。20歳以上80歳以下。脳転移がない。骨転移に対する放射線治療の既往は許容。腫瘍臓器機能が保たれている。試験参加について本人からの同意。一次登録後に初期薬物療法を行った後、一定以上の効果を認め、かつ切除が可能である患者を二次登録ランダム化する。
【治療】一次登録後、既定の初期薬物療法を3コース施行。
原発巣および転移巣の評価を行い、両方とも増悪を認めないことを確認後、二次登録する
A群:標準治療(薬物療法単独)またはB群:試験治療群(原発巣切除)にランダム化
A群は薬物療法を継続、B群は原発巣切除後に薬物療法を再開、継続する。
【統計学的事項】登録終了後4年で主たる解析、6年で最終解析を行う。
A群の生存期間中央値を20か月と仮定、B群が6か月上回るかどうかを検証。登録5年、追跡4年、α=5%(片側)、検出力80%として、Schoenfeld & Richterの方法による必要解析対象数は、二次登録例として各群202 例、両群計404 例(イベント数 359)が必要。若干の追跡不能例等を見込んで410例。一次登録例のうち80%が二次登録されるとして一次登録は500例を予定登録数とした。
累積生存曲線、生存期間中央値、年次生存割合などの推定はKaplan-Meier法を用いて行い、Greenwoodの公式を用いて信頼区間を求める。群間比較には施設以外の割付調整因子を層とした層別ログランク検定を用いる。治療効果の推定値として、Coxの比例ハザードモデルを用いて群間の治療効果のハザード比とその95%信頼区間を求める。必要に応じて割付調整因子に加え、偏りが見られた背景因子で調整したCox回帰を行う。
結果と考察
StageIV乳癌に対して、原発巣切除が生存期間を延長する可能性があることは、これまで多くの後向き研究により報告されている。国立がん研究センター中央病院の検討でも、原発巣切除を行った群で約半年、生存期間が有意に長かった(Shien,Oncol Rep,2009)。それらの結果から本試験では薬物療法単独群と比較して原発巣切除により半年間生存期間を延長することを証明するためのサンプルサイズ設定を行った。
2011年5月に患者登録を開始、すでに2014年12月末までに276例(予定登録数500例の55%)が登録されている。これまでのモニタリングでは、30日以内死亡や治療関連死、重篤な有害事象は報告されておらず、安全に試験が実施されていると言える。
結論
StageIV乳癌患者に対し、原発巣切除が有用であることが確認できれば、新規の高額な薬剤が次々と開発使用されているこの領域において患者予後を向上することに留まらず、費用対効果基準の見直しや、今後のStageIV乳癌の治療開発に影響を与える。本試験は国際的にも注目され、欧米の試験との共同解析の申し出を既に1件受けている。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438042C

収支報告書

文献番号
201438042Z