文献情報
文献番号
201438039A
報告書区分
総括
研究課題名
高度リンパ節転移を有するHER2陽性胃癌に対する術前trastuzumab併用化学療法の意義に関する臨床試験
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
寺島 雅典(静岡県立静岡がんセンター)
研究分担者(所属機関)
- 徳永 正則(静岡県立静岡がんセンター)
- 町田 望(静岡県立静岡がんセンター)
- 笹子 三津留(兵庫医科大学)
- 滝口 伸浩(千葉県がんセンター)
- 田邊 和照(広島大学病院)
- 高木 正和(静岡県立総合病院)
- 藤谷 和正(大阪府立急性期・総合医療センター)
- 平尾 素宏(国立病院機構大阪医療センター)
- 井上 健太郎(関西医科大学付属枚方病院)
- 稲木 紀幸(石川県立中央病院)
- 掛地 吉弘(神戸大学大学院医学研究科外科学講座)
- 大野 聡(福山市民病院)
- 今本 治彦(近畿大学)
- 岩崎 善毅(東京都立駒込病院)
- 桜本 信一(埼玉医科大学国際医療センター)
- 衛藤 剛(大分大学医学部)
- 藤谷 恒明(宮城県立がんセンター)
- 春田 周宇介(虎の門病院)
- 長 晴彦(神奈川県立がんセンター)
- 谷口 浩也(愛知県がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高度リンパ節転移を有する進行胃癌は予後不良であり、現在、治療成績の向上を目指して三剤併用療法による術前化学療法の効果が検討されている。
一方、human epidermal growth factor receptor type2(HER2)は細胞増殖因子受容体であり、HER2陽性乳癌においては抗HER2抗体trastuzumab(Tmab)の有効性が確認され、独立した疾患群として治療法が開発されてきた。
胃癌においてもHER2陽性の切除不能・再発例でTmabの上乗せ効果が証明され、今後HER2陽性胃癌も独立した疾患群として治療開発が進むものと考えられる。そこで、本研究では、高度リンパ節転移を有するHER2陽性胃癌を対象として、Tmab併用による術前化学療法の安全性、有効性を検討する。
一方、human epidermal growth factor receptor type2(HER2)は細胞増殖因子受容体であり、HER2陽性乳癌においては抗HER2抗体trastuzumab(Tmab)の有効性が確認され、独立した疾患群として治療法が開発されてきた。
胃癌においてもHER2陽性の切除不能・再発例でTmabの上乗せ効果が証明され、今後HER2陽性胃癌も独立した疾患群として治療開発が進むものと考えられる。そこで、本研究では、高度リンパ節転移を有するHER2陽性胃癌を対象として、Tmab併用による術前化学療法の安全性、有効性を検討する。
研究方法
対象は、高度リンパ節転移を有するHER2陽性胃癌とし、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の多施設共同ランダム化第II相試験として実施する。対象患者を、術前化学療法群、術前化学療法+Tmab群にランダム化し、術前治療を実施する。腫瘍縮小効果を評価した後に、リンパ節郭清を伴う胃切除術を施行する。術後はS-1補助化学療法を1年間行う。
Primary endpointは全生存期間、secondary endpointsは奏効割合、根治切除割合、治療完遂割合、組織学的奏効割合、有害事象発生割合。予定患者登録数は両群で130例である。
本研究は企業から薬剤の無償提供を受けて、先進医療Bに申請して実施する。 予定登録期間は3年とし、登録終了3年後に主たる解析を実施する。本研究の結果、Tmabの大きな上乗せ効果が認められ、医学薬学上公知とみなし得る状況であれば公知申請を行う。一方、Tmabの上乗せ効果が公知とみなし得る状況にない場合は第III相試験を計画・実施する。
また、Tmabの効果予測因子を検索する附随研究も併せて実施する。
Primary endpointは全生存期間、secondary endpointsは奏効割合、根治切除割合、治療完遂割合、組織学的奏効割合、有害事象発生割合。予定患者登録数は両群で130例である。
本研究は企業から薬剤の無償提供を受けて、先進医療Bに申請して実施する。 予定登録期間は3年とし、登録終了3年後に主たる解析を実施する。本研究の結果、Tmabの大きな上乗せ効果が認められ、医学薬学上公知とみなし得る状況であれば公知申請を行う。一方、Tmabの上乗せ効果が公知とみなし得る状況にない場合は第III相試験を計画・実施する。
また、Tmabの効果予測因子を検索する附随研究も併せて実施する。
結果と考察
本研究では①プロトコール作成・先進医療申請事業、②臨床試験推進事業、③付随研究事業に分けて研究を推進してきた。いかにその要約を記載する。
①プロトコール推進。先進医療申請事業においては、プロトコールは予定通りに完成し、平成26年8月に先進医療Bに申請し、平成26年12月に先進医療の承認が得られた。論文投稿時に要求されるプロトコールの英文翻訳に関しても完成させた。
②臨床試験推進事業では、主たる施設の先進医療承認を受け、協力施設に対してIRB申請、先進医療申請の援助を実施している。また、インターネットを利用した電子登録システムを整備し
③付随研究実施事業に関しては、効果予測、治療抵抗性予測因子の探索方法について検討し、患者血清並びに、腫瘍組織を用いた網羅的遺伝子解析を実施する方針を決定した。
本試験は、これまで予後不良とされてきた高度リンパ節転移症例に対する周術期の分子標的治療薬の効果を我が国で初めて検討する画期的な臨床試験である。HER2陽性胃癌を対象とし、Tmabを併用した同様な臨床第II相試験がドイツやスペインで実施されたが、単一アームの試験であったものの、病理学的完全奏効(pCR)割合が10~20%と高く、生存期間の延長が期待される。本試験はランダム化試験であるため、Tmabの上乗せ効果を直接的に評価できる点で意義が大きいものと考えられる。また、不随研究として網羅的な遺伝子発現解析を実施する事により、Tmabに対する効果予測因子、治療抵抗性因子を探索する事が可能となり、今後の実地臨床に大きなインパクトを与えるものと思われる。
①プロトコール推進。先進医療申請事業においては、プロトコールは予定通りに完成し、平成26年8月に先進医療Bに申請し、平成26年12月に先進医療の承認が得られた。論文投稿時に要求されるプロトコールの英文翻訳に関しても完成させた。
②臨床試験推進事業では、主たる施設の先進医療承認を受け、協力施設に対してIRB申請、先進医療申請の援助を実施している。また、インターネットを利用した電子登録システムを整備し
③付随研究実施事業に関しては、効果予測、治療抵抗性予測因子の探索方法について検討し、患者血清並びに、腫瘍組織を用いた網羅的遺伝子解析を実施する方針を決定した。
本試験は、これまで予後不良とされてきた高度リンパ節転移症例に対する周術期の分子標的治療薬の効果を我が国で初めて検討する画期的な臨床試験である。HER2陽性胃癌を対象とし、Tmabを併用した同様な臨床第II相試験がドイツやスペインで実施されたが、単一アームの試験であったものの、病理学的完全奏効(pCR)割合が10~20%と高く、生存期間の延長が期待される。本試験はランダム化試験であるため、Tmabの上乗せ効果を直接的に評価できる点で意義が大きいものと考えられる。また、不随研究として網羅的な遺伝子発現解析を実施する事により、Tmabに対する効果予測因子、治療抵抗性因子を探索する事が可能となり、今後の実地臨床に大きなインパクトを与えるものと思われる。
結論
高度リンパ節転移を有するHER2陽性胃癌に対する術前trastuzumab 併用化学療法の意義に関する臨床試験を企画し、先進医療Bの承認が得られた。今後、患者登録を推進するとともに、バイオマーカー探索を目的とした不随研究も行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-14
更新日
-