直腸癌側方骨盤リンパ節転移の術前診断の妥当性に関する観察研究

文献情報

文献番号
201438038A
報告書区分
総括
研究課題名
直腸癌側方骨盤リンパ節転移の術前診断の妥当性に関する観察研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
志田 大(独立行政法人国立がん研究センター中央病院・大腸外科)
研究分担者(所属機関)
  • 益子博幸(札幌厚生病院)
  • 佐藤敏彦(山形県立中央病院)
  • 長谷和生(防衛医科大学校)
  • 八岡利昌(埼玉県がんセンター)
  • 正木忠彦(杏林大学)
  • 高橋慶一(がん・感染症センター都立駒込病院)
  • 工藤進英(昭和大学横浜市北部病院消化器病センター)
  • 瀧井康公(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 吉田和弘(岐阜大学大学)
  • 小森康司('愛知県がんセンター)
  • 前田耕太郎(藤田保健衛生大学)
  • 能浦真吾(大阪府立成人病センター)
  • 村田幸平(市立吹田病院)
  • 赤在義浩(岡山済生会総合病院)
  • 池田 聡(県立広島病院)
  • 吉満政義(広島市立安佐市民病院)
  • 赤木由人(久留米大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
下部進行直腸癌の組織学的側方骨盤リンパ節転移陽性例は、5年生存割合が40%前後と予後不良であり、より有効な治療の開発が必要である。本研究では、前向きに術前画像所見を収集することで、術前に判明するリンパ節径やその他の臨床病理学的因子を組み合わせて、側方リンパ節転移を正しく予測できるかどうかを検討し、術前診断での側方リンパ節転移陽性例に対する術前補助化学療法の臨床試験の患者選択規準の策定を試みる。
研究方法
前向き観察研究として、側方骨盤リンパ節郭清を伴う直腸切除術を予定する患者を術前に登録し、術前画像所見・手術所見・病理所見を収集・解析し、術前情報による側方骨盤リンパ節転移の診断規準を策定する。
結果と考察
本研究は、下部進行直腸癌を対象とした画像診断に関する、本邦初の前向き観察研究として、側方骨盤リンパ節郭清を行う直腸患者を登録し、術前画像診断結果・手術所見・病理所見などを収集・解析し、術前画像診断における側方骨盤リンパ節転移診断率の向上を試みるものであり、「画像診断の中央判定結果と各施設診断の差」をsecondary endpointの一つにしている。そのため、参加予定施設に対してアンケート調査を行い、現在の各施設の画像診断に関する撮像状況や側方郭清施行症例数等から予定している研究が実施可能であることを確認した。また、班会議を開催し、画像と病理診断に関しても、一定の基準を設けて評価することが可能とのコンセンサスを得たことで、本試験では質の高い画像解析・切除術・病理学による多角的アプローチを用いて、側方リンパ節転移の予測を指標としたCT/MRIの術前病期診断の精度、有効性ならびに再現性について検討できるものであることが確認された。2014年度は研究実施計画書を完成させ、10月6日にJCOGプロトコール審査委員会に承認申請(一次審査)を行った。一次審査に関して特に指摘された点は、(1)側方リンパ節転移の予測が可能になった場合に、短径10mm未満でも転移ありと予測される患者もJCOG1310試験(適格条件:側方リンパ節短径10mm以上)に組み込むことの正当性、(2)JCOG0212試験(適格条件:側方リンパ節短径10mm未満で転移が疑われない)の主たる解析結果が2016年に明らかになった場合、直腸間膜全切除(TME)単独の非劣性が証明されて低リスク下部直腸癌の標準手術がTME単独となった場合、本研究で最も調査したい短径10mm未満の症例が登録されなくなる可能性、などである。上記を考慮した修正研究実施計画書と一時審査意見に対する回答書を2014年12月にJCOGプロトコール審査委員会に提出し、2015年2月に承認を得た。
 本研究では、前向きに術前画像所見を収集することで、術前に判明するリンパ節径やその他の臨床病理学的因子を組み合わせて、側方リンパ節転移を正しく予測できるかどうかを検討し、術前診断での側方リンパ節転移陽性例に対する術前補助化学療法の臨床試験の患者選択規準の策定を試みる。欧米の標準手術が側方リンパ節郭清を行わない直腸間膜全切除(TME)のみであるのに対して、TMEに側方骨盤リンパ節郭清を加えることが標準で、病理学的に側方骨盤リンパ節転移の陽陰性を確認できる日本でのみ行える研究である。
結論
本研究の結果、側方骨盤リンパ節転移を術前に正しく同定できれば、転移の有無により、治癒切除後の再発リスクをより正確に推定し、それぞれのリスクに応じた有効な治療法の開発が可能となる。術前に転移陽性と診断される患者には、コンプライアンスの良い術前に補助化学療法を加えることで、予後改善につながることが期待され、術前化学療法を評価する臨床試験への組み入れが正当化される。一方、術前診断での転移陰性例には、拡大手術や補助療法を行わないことで無駄な医療費を削減できる。狭い骨盤腔内という空間的・解剖学的な制約と、リンパ節郭清と神経温存の両立を図るという二律背反の制約の下で、直腸癌に対して最適な手術を行うためには、直腸間膜と腫瘍の位置関係とリンパ節転移についての評価を含めた詳細な術前評価が求められる。本研究によって、質の高い画像解析・切除術・病理学による多角的アプローチを用いてCT・MRIの術前診断の精度、有効性ならびに再現性について検討することで、一般臨床における診断技術の向上がもたらされことが期待できる。すなわち、側方リンパ節転移を診断する上でのCT・MRIの有用性を多施設で評価するため、各診断法の診断精度と施設間差を検討することで、がん医療水準の均てん化が促進され、がん治療全体の進歩にも貢献し得る

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438038C

収支報告書

文献番号
201438038Z