ALK融合遺伝子陽性のIII期非小細胞肺癌に対する集学的治療法の開発に関する研究 

文献情報

文献番号
201438037A
報告書区分
総括
研究課題名
ALK融合遺伝子陽性のIII期非小細胞肺癌に対する集学的治療法の開発に関する研究 
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 功一(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 暁洋(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター)
  • 大泉 聡史(北海道大学病院 内科1)
  • 野上 尚之(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)
  • 武田 晃司(大阪市立総合医療センター)
  • 岡本 勇(九州大学病院 呼吸器科・ARO次世代医療センター)
  • 葉 清隆(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター)
  • 松本 慎吾(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター)
  • 大津 敦(独立行政法人国立がん研究センター)
  • 善家 義貴(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
  • 菱田 智之(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ALK融合遺伝子陽性(以下、ALK陽性)の局所進行非小細胞肺癌に対する新規治療法の開発のため、国内未承認のALK阻害薬(LDK378)の術前・術後併用と手術による集学的治療の有効性を検討する多施設共同第II相試験(医師主導治験)を実施する。
研究方法
ALK陽性のII/III期非小細胞肺癌に対するLDK378の導入療法と手術による集学的治療の多施設共同第II相臨床試験(医師主導治験)を計画した。プライマリーエンドポイントは病理学的奏効割合、セカンダリーエンドポイントは有害事象発生割合、無再発生存期間、全生存期間、奏効割合、病理学的完全奏効割合、手術施行割合、完全切除割合とした。予定登録数19例、登録期間1年半、追跡期間1年であり、主な適格規準は、1)20歳以上、2)II/III期非小細胞肺癌、3)ALK陽性、4)PS=0-1、5)完全切除可能、6)測定可能病変あり、9)主要臓器機能が保持、10)患者本人から文書による同意が必要とした。治療方法は、1)術前導入療法:LDK378 750mgを1日1回経口投与し、28日間を1コースとして計3コース行う、2)手術:ND2a以上の縦隔リンパ節郭清を伴う肺葉切除以上の切除、3)術後療法:LDK378 750mgを1日1回経口投与し、1年間行うこととした。治験薬LDK378は、治験薬提供者であるノバルティスファーマ株式会社(N社)から無償提供される。医師主導治験への登録、モニタリング、安全性情報の管理、データセンター、統計解析は、国立がん研究センター研究支援センターで行うこととした。倫理面への配慮として、ヘルシンキ宣言、ICH Harmonized Tripartite Guidelines for Good Clinical Practice、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第28号)等を遵守して本治験を実施する。本治験が適正に行われていることを確保するため、中央モニタリング、施設訪問モニタリングおよび監査を実施する。効果安全性評価委員会による第三者的監視、大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)「臨床試験登録システム」への試験登録を行い、科学性と倫理性の確保に努める。
結果と考察
平成25年11月に本治験のコンセプトがN社で承認され、治験薬LDK378の無償提供が決定し、医師主導治験の実施体制の整備を開始した。平成26年4月に英文プロトコールを作成し、11月にPMDAの薬事戦略相談事前面談を受けた後、12月に日本語プロトコールを作成した。治験実施組織は、がん診療連携拠点病院である5施設(国立がん研究センター東病院、北海道大学、大阪市立総合医療センター、四国がんセンター、九州大学)で構築した。参加施設は、内科・外科が共同して、院内の治験実施体制の整備を行った。平成27年1月に治験参加施設およびN社でプロトコールが承認され、2月に治験実施計画書が完成した。3月に国立がん研究センターの治験審査委員会の倫理審査で治験実施計画書が承認され、3月27日に治験計画届を厚生労働省へ提出した。今後は4~6月に各参加施設の倫理審査委員会において承認を受けた後、7月より医師主導治験を開始する予定である。
本研究の対象となるALK陽性の局所進行II/III期非小細胞肺癌は希少頻度であるため、全国から対象患者をスクリーニングする必要があり、我々が先行研究で確立した全国規模の遺伝子スクリーニングネットワーク(LC-SCRUM-Japan:平成27年2月現在、47都道府県190施設が参加)を活用して、平成27年3月20日よりスクリーニングを開始した。ALK陽性の非小細胞肺癌は肺癌全体の約5%と稀少頻度であり、更にその中の局所進行II/III期例を対象としたLDK378と手術の併用による集学的治療の開発は医師主導治験以外では実施困難である。ALK陽性のII/III期非小細胞肺癌に対して、LDK378と手術の併用による新しい集学的治療を開発することで、対象患者の5年生存率を約20%改善することが見込まれる。ALK阻害薬と手術の併用による集学的治療の臨床試験は世界初の試みであり、今後の遺伝子解析に基づいた分子標的薬の選択(個別化治療)と手術の組み合わせによる治療開発を行う上で、非常に重要な意味を持つと考えられる。
結論
本研究では、ALK陽性の局所進行非小細胞肺癌に対する新規治療法の開発を目指した研究を行った。平成26年度は、国内未承認のALK阻害薬(LDK378)と手術の併用による集学的治療の医師主導治験を実施するための研究組織の構築、体制整備を行った。平成27年7月から医師主導治験を開始予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438037C

収支報告書

文献番号
201438037Z