ステージIII胃癌に対する術前診断の妥当性研究:術前補助化学療法への転換を目指して

文献情報

文献番号
201438036A
報告書区分
総括
研究課題名
ステージIII胃癌に対する術前診断の妥当性研究:術前補助化学療法への転換を目指して
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大橋 学(公益財団法人がん研究会有明病院消化器外科)
研究分担者(所属機関)
  • 笹子 三津留(兵庫医科大学 上部消化管外科)
  • 梨本 篤(新潟県立がんセンター新潟病院 外科)
  • 河内 保之(新潟県厚生連長岡中央綜合病院 外科)
  • 深川 剛生(国立がん研究センター中央病院 胃外科)
  • 伊藤 誠二(愛知県がんセンター中央病院 消化器外科)
  • 川島 吉之(埼玉県立がんセンター 消化器外科)
  • 木村 豊(地方独立行政法人堺市立病院機構市立堺病院 外科)
  • 田村 茂行(関西労災病院 消化器外科)
  • 平塚 正弘(市立伊丹病院 外科)
  • 平林 直樹(広島市立安佐市民病院 外科)
  • 山田 誠(岐阜市民病院 外科)
  • 吉川 貴己(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター 消化器外科)
  • 福島 紀雅(山形県立中央病院 外科)
  • 山上 裕機(和歌山県立医科大学 外科)
  • 寺島 雅典(静岡県立静岡がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
切除可能な進行胃癌に対し、わが国ではD2郭清を伴う胃切除術とS-1術後補助療法が標準であるが、病理stage III胃癌の治療成績が十分でなく、補助療法の強化が必要である。われわれは高度リンパ節転移例など予後不良の胃癌に対する術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy, NAC)で良好な成績を得てきた経験から、stage III胃癌の治療成績向上には、術後の補助療法の強化よりも、強力なNAC導入のほうが有効ではないかと考えた。本研究では、胃癌に対するNACの有効性を多施設共同臨床試験により検証する。
研究方法
まず、化学療法が不要な病理Stage I患者の混入を避けながら高い感度でStage III胃癌を拾い出す診断規準を確立し、これに基づいてNACの有効性を検証する第III相試験を計画・実施する。JCOG胃がんグループ54施設による2段階の臨床試験として行う。Step 1のJCOG 1302-Aでは、術前の深達度およびリンパ節転移診断を記録し、術後の病理結果と照合する。対象は、主病巣の深達度がT2(MP)以深と診断されている胃腺癌で、遠隔転移がないもの。スキルス胃癌や高度リンパ節転移例は除外する。上部内視鏡検査による深達度を記録する。上腹部造影CT(MDCT 1mmまたは5mmスライスを推奨)による深達度とリンパ節診断を記録する。リンパ節は、短径8mm以上、長径10mm以上のいずれかを満たすすべてを転移陽性と診断して記録する。登録後35日以内にD2リンパ節郭清を伴う胃切除術を行う。術前診断と術後病理結果を照合して解析する。主評価項目を「術前検査により深達度T3(SS)以深と診断された胃癌に含まれる病理Stage I胃癌の割合」とし、これが5%を下回っていればStep 2へ進む。5%以上であれば、病理Stage I症例を可及的に排除できる診断規準を新たに設定する。
Step 2では、この診断規準を満たす胃癌患者を以下の3群にランダム割付する第III相試験を計画、開始する。①標準治療群:D2胃切除術を行い、術後S-1補助化学療法を1年間施行する。②NAC群:S-1+オキサリプラチン療法を3コース施行後、D2胃切除術を行う。③NAC+補助化療群:②群と同じNACと胃切除術を行い、術後S-1補助化療を1年間行う。主評価項目は全生存期間、3年無再発生存割合、副次評価項目はR0手術割合、手術後合併症発生割合、NAC群の組織学的効果、標準治療群の術前stageと病理stageの一致割合とする。①に対する②の非劣性、③の優越性を検証する。
結果と考察
Step 1のJCOG 1302-A試験では、平成26年11月までに予定の1,273例を集積し、解析中である。この間、全参加施設による班会議を繰り返し、Step 2の第III相試験のプロトコールを検討した。3群設定とすること、NACレジメンとしてはS-1+オキサリプラチンを用いることなどを合意した.
わが国の胃癌標準治療に大きな方針転換を導入するための試験であり、化学療法が過剰治療となるような患者が最小限となるよう、慎重に研究を進めている。Step 1は予定通り症例集積を終えた。Step 2のプロトコールについても合意が形成されており、計画全体として順調に進んでいる。
結論
NACを導入するための多施設共同臨床試験のうち、第1段階が順調に症例登録を終え、第2段階へ進みつつある。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438036C

収支報告書

文献番号
201438036Z