難治性食道がんの治療方針決定に資する技術開発に関する研究

文献情報

文献番号
201438028A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性食道がんの治療方針決定に資する技術開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 博己(国立がん研究センター 研究所)
  • 西村 恭昌(近畿大学医学部)
  • 大橋 真也(京都大学医学部附属病院)
  • 猶本 良夫(川崎医科大学)
  • 石原 立(大阪府立成人病センター)
  • 磯本 一(長崎大学病院)
  • 矢野 友規(国立がん研究センター東病院)
  • 堅田 親利(北里大学医学部)
  • 細川 歩(富山大学附属病院)
  • 三梨 桂子(千葉がんセンター)
  • 土山 寿志(石川県立中央病院)
  • 坂中 克行(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省が掲げる「がん患者の5年生存率を20%向上させる」目標の実現には、最適な治療を初期治療から実施する必要があるが、分子標的薬剤を除けば、どの患者にどの治療が最適かを個別に見極めることはできていない。本研究は、治療前に内視鏡下生検した食道がん組織の遺伝子発現をプロファイリングし、その結果に基づき食道癌のサブタイプ分類を行うことを主たる目的とともに、サブタイプ分類した患者群の、化学放射線療法、外科治療に対する治療効果を検討し、より根治性の高い個別化医療を実現するための革新的バイオマーカー開発を目指す。
研究方法
本試験は、新規に食道がんと診断された患者の治療前内視鏡下生検組織(腫瘍組織)を用いて、multiplex RT-PCRやカスタムDNAチップ等により治療感受性サブタイプを同定し、ガイドラインに従った治療、または患者が希望して受けた治療の効果を多施設において検証する前向きコホート研究を実施する。なお本試験は、サブタイプ分類の再現性と治療効果の相関をみるのが目的であり、治療感受性サブタイプによる治療法の振り分けなどの治療介入は行わない。
また、先行研究と先行特許明細書「扁平上皮がんに対する化学放射線療法の有効性を評価するための方法」(特願2014-194379)に明記されるCRT感受性Eタイプ(上皮形質)を分類可能な数100種のマーカー遺伝子リストの中から生物統計学的方法によって遺伝子を絞り込み、次世代シークエンサーやmultiplex RT-PCRによる診断の実用化開発を行う。
(倫理面への配慮)
本研究に関係する全ての研究者は「疫学研究に関する倫理指針(平成25年4月1日一部改正)」「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成25年2月8日全部改正)」「世界医師会ヘルシンキ宣言(2013年フォルタレザ改正)」「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(平成22年9月17日改正)」に従って本登録を実施し、被験者の人権保護に努める。
結果と考察
「結果」先行研究において、局所進行食道扁平上皮がん274症例の遺伝子発現プロファイルを基にした教師無しクラスター解析を行い、5種の内因性サブタイプ(B/7/E, F3/1a/M1, D/5/M2, 2a/I, 3b)を同定したが、E, M1, M2のうちM2タイプは根治的放射線化学療法(CRT)での5年生存率が全体で24%であったのに対し、Eタイプの5年生存率は74%であることを示した。両サブタイプは外科的切除や術前化学療法では予後に有意な差は認められなかった。これらの結果を受けて、H26年度には製薬企業と特許を出願した(特願2014-194379)。
このクラスター解析で用いた遺伝子は、CRT高感受性Eタイプでは191種、低感受性M2タイプでは121種であった。次世代シークエンサーや定量的RT-PCRによる実用化を目指し、両サブタイプで特異的に発現する転写因子と共発現している遺伝子を相関係数が高い順に上位50種に絞り込み、再びクラスター解析を行った。 両サブタイプとも、先行研究で用いた遺伝子で分けた検体の96%, 68/71(Eタイプ)、95%, 82/84(M2タイプ)が同様に分類できた。一方で、各15、9例が新たに加わった。新たに分類された両サブタイプの完解率と1年間の無再発率を図2に示した。Eタイプでは各63.0%, 59.3%と高く、M2タイプでは各22.0%, 9.8%と低かった。また、Eタイプの5年生存率は66.0%、M2タイプは22.9%だった。平成26年10月31日に、本研究の共同研究を遂行する各施設の代表者が集まり、すでに承認されていた研究計画について討議する班会議を行った。その議論を踏まえて研究計画書を修正し、新たに「生体試料からの遺伝子発現プロファイルを用いた食道がんサブタイプ分類と治療効果との関連に関する臨床評価試験」として、全参加施設およびデータセンターによるレビューを行い、平成26年12月17日に京都大学医学部附属病院医の倫理委員会に新たに提出した。平成27年1月15日に、京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院の医の倫理委員会で本臨床を施行するための倫理的遵守事項の審査を受け承認された(承認番号G696)。検体の採取、回収、及び本研究のマネージメントを行う人員確保など、実施体制の整備を行い京都大学医学部附属病院では2015年3月より登録を開始した。
「考察」本研究成果により、治療前に難治性食道がんの治療方針を決定することができれば、無駄な治療を回避できるばかりか、治療成績の向上が見込まれる。
結論
治療前に難治性食道がんの治療方針を決定することができる遺伝子発現サブタイプ分類の臨床応用に向けた研究を開始することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438028C

収支報告書

文献番号
201438028Z