蛍光ウイルス試薬を用いた進行胃癌患者の腹腔内浮遊がん細胞の生物学的悪性度評価に基づく早期再発症例の診断技術の開発

文献情報

文献番号
201438027A
報告書区分
総括
研究課題名
蛍光ウイルス試薬を用いた進行胃癌患者の腹腔内浮遊がん細胞の生物学的悪性度評価に基づく早期再発症例の診断技術の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊義(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 香川 俊輔(岡山大学病院)
  • 田澤 大(岡山大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
TelomeScan(テロメスキャン、OBP-401)は、岡山大学で開発してきた癌特異的蛍光標識アデノウイルス製剤であり、テロメラーゼ構成成分であるhTERT遺伝子のプロモーターにより、癌細胞のみで選択的に増殖してGFP緑色蛍光を発する(Kishimoto et al, Nature Med., 2006)。現在までに、ex vivoで進行癌患者の末梢血にTelomeScanを暴露することで、血中循環癌細胞(circulating tumor cells; CTC)を可視化できることを明らかにしてきた(Kojima et al, J. Clin. Invest., 2009)。

本研究では、胃癌を中心とする消化器癌患者の腹腔洗浄液中の細胞分画から、TelomeScanで遊離癌細胞を可視化して検出する新しい技術を確立し、細胞診陽性患者の中で早期に進展・再発する患者を検出し層別化できるかどうかを検討し、革新的なバイオマーカーとしての臨床的有用性を検証することを目的とする。
研究方法
1)進行胃癌および他の消化器癌の開腹あるいは腹腔鏡補助下手術の際に、生理食塩水を腹腔内に散布し、腹腔洗浄液を採取する。TelomeScanを添加した後、回転培養器内で24時間培養し、蛍光顕微鏡下でGFP陽性細胞数をカウントする。
2)白血球のCD45やリンパ球のCD4、CD8、さらにマクロファージの表面マーカーなどでTelomeScan陽性細胞のサブセット解析を行う。
GFP細胞をフローサイトメトリーやマイクロピペットで回収し、解析し、GFP陽性細胞のoriginを確認する。
3)GFP蛍光を簡便に定量できる技術を比較検討し、簡便な蛍光検出システムの開発を目指す。
結果と考察
62例の胃癌患者の開腹あるいは腹腔鏡下手術の際に腹腔洗浄液を採取した。細胞診陽性の16例は細胞診陰性の46例に比して有意に予後不良であった。TelomeScanによるGFP陽性細胞2個以上の24例は2個未満の38例に比して有意に予後不良であった。TelomeScan陰性/細胞診陰性の30例は最も予後が良好で、TelomeScan陰性/細胞診陽性の8例、TelomeScan陽性/細胞診陰性の16例はほぼ同等の予後で、TelomeScan陽性/細胞診陽性の8例は極めて予後不良であった。これらの結果から、TelomeScanによって細胞診陽性患者の中でさらに予後不良な患者集団を選別できる可能性が示唆された。

TelomeScanによるGFP陽性細胞はクラスターを形成する傾向があり、多くがCD45陽性の白血球系細胞と集塊を成していることが明らかとなった。さらに、生存期間が短い症例でクラスター形成が顕著である傾向がみられ、今後、腹膜播種形成の病態の解明も試みていく。より客観的かつ簡便な検出技術として、モノクロメーター型マイクロプレートリーダーがGFP蛍光強度と細胞数の相関が強く有用であった。
結論
TelomeScanにより消化器癌患者の腹腔洗浄液中の血球系細胞とクラスターを形成する癌細胞を可視化することができ、バイオマーカーとして細胞診陽性症例の中で極めて予後不良の患者を選別できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438027C

収支報告書

文献番号
201438027Z