膵癌、胆道癌の検出と薬物治療効果予測を可能にする血清マイクロRNA検査の臨床導入

文献情報

文献番号
201438023A
報告書区分
総括
研究課題名
膵癌、胆道癌の検出と薬物治療効果予測を可能にする血清マイクロRNA検査の臨床導入
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小嶋 基寛(国立がん研究センター 東病院 臨床開発センター 臨床腫瘍病理分野)
研究分担者(所属機関)
  • 光永 修一(国立がん研究センター 東病院 肝胆膵内科)
  • 高橋 進一郎(国立がん研究センター東病院、肝胆膵外科)
  • 小林 達伺(国立がん研究センター東病院、放射線診断科)
  • 佐藤 暁洋(国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター)
  • 須藤 裕子(東レ株式会社先端融合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は以下の3項目である。
1. 我々の確立した膵癌、胆道癌マーカーを製品化さらに体外診断薬として臨床導入する。
2. そのマーカーが早期再発予測と発見、微小転移検出による手術適応患者の選別や病勢評価の均てん化に応用可能であるか検討する。
3. 膵癌、胆道癌患者マーカーの確立と同じ枠組みで膵癌治療効果予測法の構築が可能か検討する。
研究期間内に上記目的を達成するため、平成26年度は以下の3項目を行った。
A: 臨床導入価値の検証
B: 臨床導入に必要な検討の準備
C: 薬事承認申請に向けた準備
研究方法
A: 臨床導入価値の検証
我々の開発した膵癌、胆道癌患者検出マーカー (Diagnostic index)が、切除可能膵癌、胆道癌患者の予後予測を行う上で有用であるかを検討する目的で、外科的に切除された膵癌45例、膵管内乳頭状腫瘍 31例、胆道癌50例などの術前血清における 判別指数を測定し、再発、予後との相関を検討することで体外診断用医薬品として臨床導入価値があるかを検証した。
B: 臨床導入に必要な検討の準備
来年度以降に早期再発予測と発見、病勢評価や治療効果予測を行う検討の実現可能性を検討し、より適切な画像評価を検討することで、来年度以降の臨床研究開始に向けた準備を行った。
C: 薬事承認申請に向けた準備
薬事承認申請に向けて、必要となる非臨床、臨床データに関して検討を行い、臨床導入に向けての薬事面からの戦略を練った。
結果と考察
A: 臨床導入価値の検証
Diagnotic indexの診断マーカーとしての再現性が今回の検討でも確認された。Bio-Bankに後ろ向きに保存された血清には初発時と再発時の血清が揃っている症例は少数であったが、3症例/4症例において初発、再発の両者を陽性と判定することができた。また、通常型膵管癌に加えて膵管内乳頭状腺癌 (IPMC)においても高い診断能を有することが判明した。
B: 臨床導入に必要な検討の準備
当院における切除材料は膵癌、胆道癌いずれも年間約50症例であった。保存血清を有する進行膵癌症例は195例、胆道癌は50例あり、初発治療として化学療法を施行する膵癌患者は年間90例であった。
320列ADCTと、Dual Energy CTを用いた新しいCTが、喉頭癌と下咽頭癌の軟骨浸潤診断に有用であり、今後膵癌・胆道癌の早期診断と再発診断への応用が期待された。
C: 薬事承認申請に向けた準備
体外診断訳としての開発を行う上で関連当局の確認を行いつつ非臨床、臨床性能試験の計画立案することとした。
本年度の研究から、血清マイクロRNAを用いた検査は実用化が可能で、臨床導入の価値が再確認された。膵癌においては、通常型膵癌のみならず、IPMCの診断においても我々の開発した diagnostic indexの有用性が示された。さらに、臨床性能試験など臨床導入に必要な検討が実行可能であることが判明した。また、薬事承認に向けて、薬事面からの協力の重要性が認識された。臨床導入に向けて必要な多岐にわたる検討項目を、関係者との協力を密にして研究する必要性が認識された。並行して、膵癌治療効果予測法の構築の検討も行う。
結論
我々の開発したDiagnostic indexは臨床導入が可能で膵癌・胆道癌の診断が可能な体外診断薬である。早期再発予測と発見、病勢評価における有用性を示すことで臨床導入するために必要な検討を来年度以降に行う。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
大量のヒト血清マイクロRNAの網羅解析から膵癌の診断マーカーを抽出し、診断キットとしての臨床導入を目指した研究であり、学術的発見から臨床導入を包括的に行う意義の大きなTR研究である。
臨床的観点からの成果
血清マイクロRNA検査が、癌の検出に使用可能であることを示したことは、そのほかの医療ニーズにも対応する可能性を示しており、今後あらゆる医療分野においてバイオマーカーの選択肢が増えたこととなり、大きな成果と考える。本研究では臨床導入への道筋が明確となり、今後、バイオマーカーの臨床導入の際のモデルとなりうる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
今回の研究は膵癌の診断を容易にし、患者に優しい新規医療技術開発の推進につながり、医療ニーズに幅広く対応する可能性を有する。今後、血清マイクロRNAを用いた治療効果予測が可能となれば、高額な薬物療法が適切な患者になされるため、適正な医療資源の配分(医療費の抑制)にも貢献しうる。
その他のインパクト
2014年:日本癌学会口演、日本バイオマーカー研究会、AACR, DDWにおいて報告した。
2015年:日本癌学会口演、日本分子マーカー研究会シンポジウム
2016年:9月26日 日経新聞に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
22件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
早期膵がん又は膵がん前駆病変の検出キット又はデバイス及び検出方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2016-073132
発明者名: 小嶋基寛, 落合淳志,河内淳平,須藤裕子,小園聡子
権利者名: 東レ株式会社, 国立研究開発法人国立がん研究センター
出願年月日: 20160301
国内外の別: 日本

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kojima M, Sudo H, Kawauchi J, et al.
MicroRNA markers for the diagnosis of pancreatic and biliary-tract cancers.
PLoS One , 10 (2) , e0118220-e0118220  (2015)
10.1371/journal.pone.0118220.
原著論文2
15. 光永 修一, 小嶋 基寛, 池田 公史,他
膵癌早期診断を目指した血清マイクロRNA検査の研究開発.
膵臓 , 32巻 (1号) , 56-61  (2017)

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201438023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
30,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,715,932円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 4,364,068円
間接経費 6,920,000円
合計 30,000,000円

備考

備考
該当なし

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-