子宮頸がん検診における細胞診とHPV検査併用の有用性に関する研究

文献情報

文献番号
201438016A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がん検診における細胞診とHPV検査併用の有用性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
青木 大輔(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 潔(東北大学災害科学国際研究所 )
  • 宮城悦子(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 齊藤英子(国際医療福祉大学三田病院 )
  • 斎藤 博(国立がん研究センター がん予防検診研究センター )
  • 渋谷大助(宮城県対がん協会がん検診センター)
  • 濱島ちさと(国立がん研究センター がん予防検診研究センター )
  • 山本精一郎(国立がん研究センター がん予防検診研究センター )
  • 森定 徹(慶應義塾大学 医学部)
  • 雑賀公美子(国立がん研究センター がん予防検診研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
115,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者:齊藤 英子 慶應義塾大学医学部(平成26年2月26日~平成26年6月22日)→ 国際医療福祉大学三田病院(平成26年6月23日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではわが国の子宮頸がん検診におけるHPV検査の有効性の評価を行うための科学的根拠となるデ-タの収集を目的とする。子宮頸がん検診において、細胞診とHPV検査の併用による検診受診群(以下、HPV群)と細胞診単独による検診受診群(以下、細胞診群)の比較により、検診方法別の子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia 2,3 (CIN2、CIN3))、浸潤がんに対する感度、特異度や発見に関する指標、治療内容や死亡率を観測する。平成26年度は、平成25年度に厚生労働省によるがん検診推進事業において実施されたHPV検査検証事業の研究参加者に対する観察研究における追跡調査、平成26年度からの介入研究の基盤の構築と参加自治体募集および研究参加者のベースライン登録の実施と上記実施のために自治体における検診精度管理の支援を目的とした。
研究方法
観察研究に加え、昨年度作成した介入研究計画に基づき次の業務を実施した。
A)子宮頸がん検診受診者観察研究の実施:1)研究参加者の検診データの集積・管理、2)研究参加者の精密検査および追跡調査の実施 
B)子宮頸がん検診受診者介入研究の実施:1)協力自治体の選定と協力の依頼、2)ベースライン登録とデータの集積・管理 
C)研究参加自治体の検診精度管理支援・研究実施のための支援業務:1)研究参加へのリクルート、2)研究実施のための自治体支援業務 
D)収集データのモニタリング
結果と考察
A)子宮頸がん検診受診者観察研究:平成25年度本研究に参加した自治体は34ヶ所で、参加者総数は10,297人(細胞診群3,893人、HPV群6,404人)であった(平成27年2月現在)。同意撤回等が8例あり、今後の研究対象は10,289人(細胞診群3,892人、HPV群6,397人)である。平成26年11月末までに把握できた要精密検査者数は654人で、入力された精検結果では、異常なしが34件、CIN1~3が128件、浸潤がんが14件であった。 
B)子宮頸がん検診受診者介入研究:参加については説明会等を開催した結果、平成26年度参加自治体は2自治体で、さらに平成27年度は8自治体の参加が決定した。平成26年度の研究参加者数は約6,500人(細胞診群約3,000人、HPV群約3,500人)であった。 
C)研究参加自治体の検診精度管理支援・研究実施のための支援業務:平成25年度参加の大部分の自治体において、支障なく追跡調査等が実施された。また全自治体において精検の受診勧奨が実施され、各種問い合わせには事務局とデータセンター(日本臨床研究支援ユニット)が対応した。  
D)収集データのモニタリング:平成25年度研究参加症例において、研究参加要件を満たさない事例等が10ヶ所の自治体であり、入力データの修正を実施した。平成26年11月末集計の検診結果では両群合わせて要精検率は6.28%、検体不適正率は細胞診 0.038%、HPV検査0.031%であった。  
E)考察:平成25年度の研究参加者の登録および結果の把握について大部分の自治体で支障がなかった理由として、研究の参加要件として精度管理条件を満たすことが課されていたことが挙げられる。検診結果については細胞診の検体不適正率が0.038%で、地域住民検診の報告の1%~数%と比較して著しく良好であった。本研究では検体の適否の判定が必要なベセスダシステムによる細胞診判定を必須としており、検体の精度管理体制が確立された自治体が参加していたためと考える。また、HPV検査の不適正率は0.031%で、細胞診とHPV検査との間で不適正率に大きな差異はなかった。細胞診の不適正率の高さを回避する目的で、HPV検査を導入する必要性はこの結果からは否定的である。平成25年度参加症例の要精検率は約6%が見込まれ、現行の細胞診単独での検診による要精検率の許容値1.4%以下を超える。参加者が最も子宮頸がん・CINの罹患率が高い30~44歳の年齢層に限定されること、細胞診またはHPV検査のどちらか一方の陽性で要精検と定義していること、健常者におけるHPVの感染率が10%程度であることなどから妥当と判断した。
結論
精度管理についての指定要件の充足を参加条件としたところ、多くの自治体で結果の把握等が支障なく実施された。がん検診の有効性/有用性評価の検証には「よく精度管理が実施されている対策型検診において行うこと」が不可欠とされる理由がここに端的に示された。わが国の地域住民検診において、厚生労働省や精度管理に関する研究班が主体となって精度管理を充実させる活動は、マネージメントの観点からがん検診の質を高めるのみならず、がん検診の有効性を評価するアセスメントのフィールドを確保する上でも重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438016C

収支報告書

文献番号
201438016Z