文献情報
文献番号
201438011A
報告書区分
総括
研究課題名
クリニカルプロテオミクス解析を基盤とする肺がんの分子病態の解明と革新的分子標的治療の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 隆(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 長田 啓隆(愛知県がんセンター 研究所)
- 柳澤 聖(名古屋大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、詳細な臨床情報の付帯する肺がん腫瘍組織の定量的プロテオミクス解析を通じて得たクリニカルプロテオミクス解析データを活用し、高転移性LNM35株と低転移性親株N15株のプロテオミクス解析データと統合的に検討を加えることによって、肺がんの分子病態形成、とくに浸潤・転移の分子機構の本態に迫るとともに、革新的な治療法の開発に向けた新規分子標的の探索・同定を進めることにある。また、我々が同定した分子標的CLCP1を対象として、プロテオミクス解析技術を応用しつつ、その増殖・浸潤・転移における役割と分子機序の解明、及び、抗CLCP1抗体を用いた革新的な新規治療法の開発に道を拓くための情報を得ることを目的とする。
研究方法
1)クリニカルプロテオミクス解析にもとづく難治がんの病態解明と新規分子標的の探索・同定
我々が樹立した高転移細胞株NCI-H460-LNM35株及び臨床検体を用いた網羅的タンパク質発現定量解析を統合的に進めて、肺がんの浸潤・転移の過程への機能的な関与と、肺がん患者における臨床病態の双方に関連する、新規分子標的候補の探索を進めた。
2)CLCP1を分子標的とする難治がんの診断・治療法への応用
肺がん細胞株においてCLCP1の足場非依存性増殖能への関与について、細胞生物学的な検討を進めた。また、肺がん細胞株PC9を高親和性抗CLCP1抗体FA19-1を用いた検討を加えた。
3)プロジェクトの総合推進
高橋を中心に随時研究進捗情報を交換し、密接な相互協力のもとに推進した。
我々が樹立した高転移細胞株NCI-H460-LNM35株及び臨床検体を用いた網羅的タンパク質発現定量解析を統合的に進めて、肺がんの浸潤・転移の過程への機能的な関与と、肺がん患者における臨床病態の双方に関連する、新規分子標的候補の探索を進めた。
2)CLCP1を分子標的とする難治がんの診断・治療法への応用
肺がん細胞株においてCLCP1の足場非依存性増殖能への関与について、細胞生物学的な検討を進めた。また、肺がん細胞株PC9を高親和性抗CLCP1抗体FA19-1を用いた検討を加えた。
3)プロジェクトの総合推進
高橋を中心に随時研究進捗情報を交換し、密接な相互協力のもとに推進した。
結果と考察
1)クリニカルプロテオミクス解析にもとづく難治がんの病態解明と新規分子標的の探索・同定:
クリニカルプロテオミクス解析を基盤とする肺がんの分子病態の解明と、我々が同定した新規分子標的CLCP1に対する革新的分子標的治療の開発を目指した研究を展開した。高転移性ヒト肺癌細胞株LNM35と低転移性親株N15株を用いた網羅的なタンパク質発現の定量比較解析において発現差を認める385種類のタンパク質と、173症例の非小細胞肺がん外科切除例の網羅的タンパク質発現解析データセットにおいて生物学的悪性度との高い関連性示す514種類のタンパク質を抽出した。両者のデータの統合的解析によって、非小細胞肺がん細胞株における浸潤・転移能の獲得と、非小細胞肺がん患者における臨床病態形成の双方に関連する、18種類のタンパク質を同定した。がん転移抑制法の開発に資する標的分子の同定につなげるべく、実験的検証を開始した。
2)CLCP1を分子標的とする難治がんの診断・治療法への応用:
がん細胞におけるCLCP1の高発現が、アノイキスの抑制を介して、がん細胞の特徴である足場非依存性増殖に役割を担っていることを示唆する結果を得た。また、CLCP1の細胞内ドメイン結合分子として、paxillinとp130CASを同定し、CLCP1によるアノイキス抑制の分子機序解明へ向けた手掛かりを得た。さらに、高親和性抗CLCP1抗体FA19-1を用いて、抗体への曝露によってEGFRの発現量とリン酸化が減少することを明らかとした。また、CLCP1がEGFRとのヘテロ二量体とともにCLCP1自身のホモ二量体を形成しており、これらの二量体の形成がFA19-1抗体への暴露によって促進されることを明らかとした。
3)プロジェクトの総合的推進:
高橋が中心となって本研究計画の全体を統括し、随時研究進捗情報を交換しつつ、密接な相互協力のもとに研究を進めた。その結果、柳澤を中心とするクリニカルプロテオミクス解析にもとづく難治がんの病態解明と新規分子標的の探索・同定と、長田を中心とするCLCP1を分子標的とする難治がんの診断・治療法への応用を目指した研究開発を、技術的な相互支援を含む密接な協力のもとに、効率的に当初予定に沿った進捗に結びつけることができた。
クリニカルプロテオミクス解析を基盤とする肺がんの分子病態の解明と、我々が同定した新規分子標的CLCP1に対する革新的分子標的治療の開発を目指した研究を展開した。高転移性ヒト肺癌細胞株LNM35と低転移性親株N15株を用いた網羅的なタンパク質発現の定量比較解析において発現差を認める385種類のタンパク質と、173症例の非小細胞肺がん外科切除例の網羅的タンパク質発現解析データセットにおいて生物学的悪性度との高い関連性示す514種類のタンパク質を抽出した。両者のデータの統合的解析によって、非小細胞肺がん細胞株における浸潤・転移能の獲得と、非小細胞肺がん患者における臨床病態形成の双方に関連する、18種類のタンパク質を同定した。がん転移抑制法の開発に資する標的分子の同定につなげるべく、実験的検証を開始した。
2)CLCP1を分子標的とする難治がんの診断・治療法への応用:
がん細胞におけるCLCP1の高発現が、アノイキスの抑制を介して、がん細胞の特徴である足場非依存性増殖に役割を担っていることを示唆する結果を得た。また、CLCP1の細胞内ドメイン結合分子として、paxillinとp130CASを同定し、CLCP1によるアノイキス抑制の分子機序解明へ向けた手掛かりを得た。さらに、高親和性抗CLCP1抗体FA19-1を用いて、抗体への曝露によってEGFRの発現量とリン酸化が減少することを明らかとした。また、CLCP1がEGFRとのヘテロ二量体とともにCLCP1自身のホモ二量体を形成しており、これらの二量体の形成がFA19-1抗体への暴露によって促進されることを明らかとした。
3)プロジェクトの総合的推進:
高橋が中心となって本研究計画の全体を統括し、随時研究進捗情報を交換しつつ、密接な相互協力のもとに研究を進めた。その結果、柳澤を中心とするクリニカルプロテオミクス解析にもとづく難治がんの病態解明と新規分子標的の探索・同定と、長田を中心とするCLCP1を分子標的とする難治がんの診断・治療法への応用を目指した研究開発を、技術的な相互支援を含む密接な協力のもとに、効率的に当初予定に沿った進捗に結びつけることができた。
結論
クリニカルプロテオミクス解析を基盤とする肺がんの分子病態の解明を目指した研究を展開し、新たな分子標的候補を同定した。今後さらに、がん転移抑制法の開発に資する標的分子の同定につなげるべく、順次実験的な検証を進める。また、我々が同定した肺がん転移関連分子CLCP1に対する革新的分子標的治療の開発を目指した研究においては、がん細胞におけるCLCP1の高発現が、アノイキスの抑制を介して、がん細胞の特徴である足場非依存性増殖に役割を担っていることを示唆する結果を得た。さらに、高親和性抗CLCP1抗体FA19-1への曝露による、EGFRシグナルの減少を明らかとした。今後さらに、CLCP1とEGFR等のRTKとの間にみられるクロストークの分子機構の詳細を解明するとともに、分子標的としての有用性を明らかとしていく。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
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