文献情報
文献番号
201438007A
報告書区分
総括
研究課題名
クリニカルシークエンスによる肺腺がんの治療標的・抵抗性克服分子の同定に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
河野 隆志(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 ゲノム生物学研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 後藤 功一(独立行政法人 国立がん研究センター 東病院 呼吸器内科)
- 松本 慎吾(独立行政法人 国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター トランスレーショナルリサーチ分野)
- 山本 昇(独立行政法人 国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター 先端医療科)
- 軒原 浩(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 呼吸器内科)
- 蔦 幸治(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 病理科)
- 古田 耕(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 臨床検査科)
- 石井 源一郎(独立行政法人 国立がん研究センター 臨床開発センター 臨床腫瘍病理分野)
- 温川 恭至(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 ウイルス発がん研究分野)
- 今井 俊夫(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 動物実験支援施設)
- 高橋 真美(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 動物実験支援施設)
- 加藤 護(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 バイオインフォマティクス部門)
- 笹田 真滋(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、クリニカルシークエンス解析を基盤とし、申請者らが築き上げた研究体制・微小試料に対するゲノム解析技術、さらに患者試料の先駆的培養技術を最大限に活用することで、現存抗がん剤治療では効果の見込めない進行肺がんの治療標的・抵抗性克服分子を同定する。具体的には、RET阻害剤治療への耐性獲得例、EGFR阻害剤既治療例から選出されたlong responder・自然耐性例、EGFR阻害剤治療への耐性獲得例、Pan-negative例の遺伝子変異profileを明らかにし、治療抵抗性獲得に伴い発出する遺伝子異常(ドライバー変異と考えられる)・Pan-negative例に生じる遺伝子異常(未知ドライバー変異が隠れている)を総合的に把握することで、進行肺がんの遺伝的特性を理解し、治療標的・抵抗性克服遺伝子を同定する。患者がん試料をin vivo, in vitro培養し、同定した分子の治療標的・抵抗性への関与の検証を行う。
研究方法
3年間で、抗がん剤治療対象肺がんの治療関連遺伝子変異プロファイルを作成するとともに、治療耐性関連・克服分子、新規治療標的分子候補を同定し、薬剤投与実験で検証する。本研究で、進行肺がんの特性、分子標的治療不応・耐性獲得の分子基盤を理解し、肺がん難治性を克服するためのシーズを得る。
結果と考察
入手済のPan-negative 例のゲノム解析を行った。その結果、浸潤性粘液腺がんに、NRG1,ERBB4, BRAFの遺伝子融合が存在することを明らかにした。NRG1融合については、浸潤非性粘液腺がん特異的に、また、女性喫煙者に多くみられ、HER2/HER3タンパク質を介したシグナル伝達を介して、がん化に寄与していることが見出された。HERタンパク質阻害薬であるラパチニブ、アファチニブが治療に有効である等のデータを得た。RET阻害薬耐性に関し、RET阻害薬バンデタニブ等に対し、治療抵抗性試料を収集するためのプロトコルを作成し、倫理審査委員会の承認を得た。1例目のバンデタニブ獲得耐性症例試料のゲノム解析に着手した。EGFR阻害薬治療例について、EGFR阻害薬で治療された全589例からがん組織が利用できる術後再発症例124例を選出し、ゲノム解析に着手した。肺がん試料、手術症例、胸水試料の培養を開始した。計画通り、進捗しており、成果が期待できると考える。
結論
クリニカルシークエンスに基づいて、進行肺がんの特性、分子標的治療不応・耐性獲得の分子基盤を理解し、肺がん難治性を克服するためのシーズを得る本研究は順調に進捗している。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
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