文献情報
文献番号
201437001A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の発症機序及び長期予後の解明に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森 臨太郎(独立行政法人・国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 福岡 秀興(早稲田大学総合研究機構)
- 高橋 尚人(東京大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター)
- 秦 健一郎(独立行政法人・国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部)
- 大田 えりか(伊東 えりか)(独立行政法人・国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
- 楠田 聡(東京女子医科大学母子保健総合医療センター)
- 板橋 家頭夫(昭和大学医学部)
- 難波 文彦(埼玉医科大学総合医療センター小児科)
- 河野 由美(自治医科大学小児科学)
- 藤原 武男(独立行政法人・国立成育医療研究センター研究所 社会医学研究部)
- 齋藤 滋(富山大学医学薬学研究部産科婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
57,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国は他の先進国と比べ低出生体重児の増加が著しい。本研究では、日本産婦人科学会・日本未熟児新生児学会等の関連学会にて作成されてきた周産期関連データベース同士の連携や国際連携により知見の共有を通し、妊娠・出産から母児の長期予後までの縦断的情報蓄積と解析を行うことで、低出生体重出生の要因となる母児因子を特定し、また胎児・新生児期の低栄養状態がエピジェネティクスを通してヒトの疾病発症に長期的に影響を及ぼすDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD)の機序解明やそれに対する新規治療を開拓し、さらには低出生体重児が併せ持つリスクに対応した適切な健診体制や家族への療育のための情報を提供することを目的とする。
研究方法
A.日本における低出生体重児の要因解析および対策の探求
全国規模の周産期関連データベースを運用し、それらを個別に解析することで日本における低出生体重児の要因解析を行った。
B.我が国における低出生体重出生のDOHaD検証と長期的予後計測、および診療体制の構築
まず、低出生体重出生のDOHaD検証として、低出生体重児の臍帯血および胎盤を用いて、特有のエピゲノム異常を探索した。
そして、低出生体重児を構成する子宮内発育不全児および早産児のそれぞれについて長期的予後計測の調査の準備を行った。後方視的には、超低出生体重児の成人期予後を多施設で評価するためのデータ収集プログラムを作成し、文献レビューをもとに評価に使用するべき健康指標および関連するリスク指標を抽出した。前方視的には、3歳児のコホートを用いて、子宮内外の栄養環境と身体精神的発達の関係を解析するための調査の実現可能性を評価した。
さらに、診療体制の構築としては、まず低出生体重児の多くが当てはまる、新生児集中治療室退院児において、患児の保護者と全国の医療提供施設とが診療・養育に関する情報を共有できる電子化システム構築のための、内容と方法を検討した。また、合併疾患の治療・予防法の開発として、早産合併症で頻度の高い慢性肺疾患に関して、疾患関連遺伝子のスクリーニングと機能解析、有用な治療法の臨床研究を行った。
C.各種データセットの連携のための基盤構築と国際連携
各分担班や国際連携により知見を共有するための基盤の整備を行い、国内の広範な周産期関連データベースをマッピングし、それらを連結するためのリンケージ手法を検討した。
全国規模の周産期関連データベースを運用し、それらを個別に解析することで日本における低出生体重児の要因解析を行った。
B.我が国における低出生体重出生のDOHaD検証と長期的予後計測、および診療体制の構築
まず、低出生体重出生のDOHaD検証として、低出生体重児の臍帯血および胎盤を用いて、特有のエピゲノム異常を探索した。
そして、低出生体重児を構成する子宮内発育不全児および早産児のそれぞれについて長期的予後計測の調査の準備を行った。後方視的には、超低出生体重児の成人期予後を多施設で評価するためのデータ収集プログラムを作成し、文献レビューをもとに評価に使用するべき健康指標および関連するリスク指標を抽出した。前方視的には、3歳児のコホートを用いて、子宮内外の栄養環境と身体精神的発達の関係を解析するための調査の実現可能性を評価した。
さらに、診療体制の構築としては、まず低出生体重児の多くが当てはまる、新生児集中治療室退院児において、患児の保護者と全国の医療提供施設とが診療・養育に関する情報を共有できる電子化システム構築のための、内容と方法を検討した。また、合併疾患の治療・予防法の開発として、早産合併症で頻度の高い慢性肺疾患に関して、疾患関連遺伝子のスクリーニングと機能解析、有用な治療法の臨床研究を行った。
C.各種データセットの連携のための基盤構築と国際連携
各分担班や国際連携により知見を共有するための基盤の整備を行い、国内の広範な周産期関連データベースをマッピングし、それらを連結するためのリンケージ手法を検討した。
結果と考察
A.2001年からの10年間で正期産単胎児の平均出生体重が約30g減少しており、これは母の年齢が高齢かの如何に関わらず減少していることを明らかにした。また、低出生体重出生と関連の深い二つの病態のリスク因子として、妊娠高血圧症においては初産と糖尿病を、妊娠高血圧腎症においては初産と腎疾患を、それぞれ同定した。今後も更なる検討を行い、低出生体重児出生予防に効果のある妊娠中の介入の科学的根拠をまとめる。
B.低出生体重出生のうち原因不明胎児発育不全症例の一部に既知の成長障害が見られる病気と一致するエピゲノム変化が認められることを明らかにした。今後も検体数を増やし、出生後の栄養や治療がエピゲノムに与える影響なども検証する。
低出生体重児の長期的予後計測のための調査の準備として、成人期予後を評価するための健康指標および関連するリスク指標は詳細な自記式アンケートと6分野の検査に集約できることを示した。また、3歳児において食事頻度調査票の妥当性評価が実現可能であることを明らかにした。今後これらの調査を行い、低出生体重児の長期的予後を明らかにする。
低出生体重児の診療体制の構築としては、電子化手帳のテンプレート用電子ファイルを作成した。また、合併症であるCLD回復期に重要な遺伝子Hapln1を同定し、その治療法としてシベレスタットが全国の16%の新生児治療施設で選択されていることが明らかになった。引き続き、電子化システムの構築および合併疾患の治療法の開発を行っていく。
C.周産期登録データベース、周産期母子医療センターネットワークデータベース、と人口動態統計を連結するためのリンケージ手法を作成した。今後は、これを基盤に、国際DOHaD学会、世界保健機関、Preterm Birth International Collaborative、International Network for Evaluation of Outcomes、などの諸団体と国際連携により知見の共有し、国際的なデータ分析を進めていく。
B.低出生体重出生のうち原因不明胎児発育不全症例の一部に既知の成長障害が見られる病気と一致するエピゲノム変化が認められることを明らかにした。今後も検体数を増やし、出生後の栄養や治療がエピゲノムに与える影響なども検証する。
低出生体重児の長期的予後計測のための調査の準備として、成人期予後を評価するための健康指標および関連するリスク指標は詳細な自記式アンケートと6分野の検査に集約できることを示した。また、3歳児において食事頻度調査票の妥当性評価が実現可能であることを明らかにした。今後これらの調査を行い、低出生体重児の長期的予後を明らかにする。
低出生体重児の診療体制の構築としては、電子化手帳のテンプレート用電子ファイルを作成した。また、合併症であるCLD回復期に重要な遺伝子Hapln1を同定し、その治療法としてシベレスタットが全国の16%の新生児治療施設で選択されていることが明らかになった。引き続き、電子化システムの構築および合併疾患の治療法の開発を行っていく。
C.周産期登録データベース、周産期母子医療センターネットワークデータベース、と人口動態統計を連結するためのリンケージ手法を作成した。今後は、これを基盤に、国際DOHaD学会、世界保健機関、Preterm Birth International Collaborative、International Network for Evaluation of Outcomes、などの諸団体と国際連携により知見の共有し、国際的なデータ分析を進めていく。
結論
データベース、生体試料、前向きコホート、のそれぞれを用いた研究が進み、またその知見の共有のための基盤整備が行われた。今後も継続した取り組みが必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-23
更新日
-