文献情報
文献番号
201435008A
報告書区分
総括
研究課題名
転移性肝芽腫に対する薬剤開発戦略としての国際共同臨床試験
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
檜山 英三(広島大学 自然科学研究支援開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター研究所 小児がん疫学臨床研究センター登録データ管理室)
- 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
- 越永 從道(日本大学医学部 小児外科学)
- 小川 淳(新潟県立がんセンター新潟病院 小児科)
- 菊田 敦(福島県立医科大学附属病院 小児腫瘍内科)
- 石田 裕二(静岡県立静岡がんセンター 小児科)
- 岡本 康裕(鹿児島大学病院 小児診療センター)
- 河本 博(国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
- 宗崎 良太(九州大学大学院医学研究院 小児外科分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 医療技術実用化総合研究(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
42,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
希少がんである小児がんを対象とした新規薬剤開発を世界水準で推進するため、米国Children’s Oncology Group(COG)との難治性肝芽腫に対する国際共同臨床試験を実施し、我が国の肝芽腫患者のデータを含む国際的エビデンスの創出に寄与し、小児がんでの国際臨床試験の体制整備とともに我が国の薬事行政に貢献することを目的とした。
研究方法
早期治療開発臨床試験の実績がある施設とデータセンター等に鑑み、北米のCOG (Children’s Oncology Group)に登録を行った8施設の中から、肝移植や外科療法との円滑なタイアップを考え、実際に稼働が可能な施設選定を行った。また、症例のデータ管理等は、米国NCIのMediData Raveにて登録、管理することが必要であり、成人がん分野で国際共同臨床試験の調整業務実績がある北里大学臨床研究機構臨床試験コーディネート部にデータ管理業務等を委託し、本国際共同研究の実際の施行の準備を進めた。また、日米の国際共同研究のために、国際共同の病理、画像診断システムの構築と具体的運用を検討した。
また、テムシロリムスのMTD(最大耐用量)に人種差があることから、本邦の小児に対しての本試験で用いる35 mg/m2の安全性を確認するための第Ⅰ相試験を施行した。
また、テムシロリムスのMTD(最大耐用量)に人種差があることから、本邦の小児に対しての本試験で用いる35 mg/m2の安全性を確認するための第Ⅰ相試験を施行した。
結果と考察
本試験は、COG のAHEP0731試験のうち、高リスク肝芽腫に対するビンクリスチン、イリノテカン(VI)併用療法の有効性を検証するRegimen Wが終了し、その後継コホートとしてのRegimen Hを日米共同で施行するもので、ビンクリスチン、イリノテカン、テムシロリムス(VIT)併用療法の奏効率を最初の2コースで評価する(Window Phase II 型試験)。その後、標準治療であるシスプラチン・フルオロウラシル・ビンクリスチン・ドキソルビシン(C5VD)併用療法を6コース追加実施するが、VIT奏効例に対しては、さらに第8と第11コースにVIT併用療法を追加実施する。また、COGでは心毒性防止を目的でデクスラゾキサンの使用が9コース以降にあったが本邦では適応外薬品であり、日本では使用しないことを許容した。Regimen Hは41例を集積、期待奏効率を65%とした。また、今回用いるテムシロリムスの用量35mg/m2は本邦の小児の安全性が確認されていないことから、前年度から準備した第Ⅰ相試験を本年度施行した。骨肉腫再発、横紋筋肉腫再発、肝芽腫肺転移再発の3症例に投与を行い、横紋筋肉腫再発例はビンクリスチンに対し過敏症にて脱落したため、さらに難治性肝芽腫例を1例追加し、結果的に3例でDLTの出現はなく、安全性が確認された。CTEPから、日本の各施設の責任医師のNCI investigator 番号の明記、さらに、使用薬剤の利用後の状況報告についての手続きについて改変が求められ、再提出し、承認された。この改変プロトコールが承認されたため、研究責任者の施設のIRBに提出し、今後参加施設のIRBに提出できれば、治験開始となる。
また、中央画像診断はPRETEXT分類と門脈、下大静脈浸潤、肝外浸潤と、遠隔転移のインターナショナルなコンサルテーションを遠隔診断に用いるツールにて構築し、中央病理診断は共同で策定した国際小児肝がん病理分類を用いることとし、病理スライドをスキャンしてクラウドにアップロードしてレビューを行う中央コンサルテーションシステム(Aperio ePathology)として運用を開始した。本試験が医師主導型臨床試験であり、高リスク患者を6-7施設に集約し、今後の円滑な運用への配慮が必要と考えられた。
本年度は、研究開始予定であったが、米国NCI 承認が遅れ、年度内に研究を開始することができなかった。しかし、国際共同でのICH-GCP基準に則った小児領域での臨床試験の実施についての症例登録やインフォームドコンセントなどの課題が解決され、本研究が前進した。この活動により、希少疾患ゆえに企業主導の治療開発が進まない現状を打破し、研究段階であっても有効性が確認された薬剤をいち早く臨床試験ベースで国民に届け、その試験結果に基づく公知申請を含めた薬事承認を可能とすることが再確認された。
また、中央画像診断はPRETEXT分類と門脈、下大静脈浸潤、肝外浸潤と、遠隔転移のインターナショナルなコンサルテーションを遠隔診断に用いるツールにて構築し、中央病理診断は共同で策定した国際小児肝がん病理分類を用いることとし、病理スライドをスキャンしてクラウドにアップロードしてレビューを行う中央コンサルテーションシステム(Aperio ePathology)として運用を開始した。本試験が医師主導型臨床試験であり、高リスク患者を6-7施設に集約し、今後の円滑な運用への配慮が必要と考えられた。
本年度は、研究開始予定であったが、米国NCI 承認が遅れ、年度内に研究を開始することができなかった。しかし、国際共同でのICH-GCP基準に則った小児領域での臨床試験の実施についての症例登録やインフォームドコンセントなどの課題が解決され、本研究が前進した。この活動により、希少疾患ゆえに企業主導の治療開発が進まない現状を打破し、研究段階であっても有効性が確認された薬剤をいち早く臨床試験ベースで国民に届け、その試験結果に基づく公知申請を含めた薬事承認を可能とすることが再確認された。
結論
日本小児肝がんスタディグループ(JPLT)が、米国COGの臨床試験グループと協議して、難治である高リスクの転移性肝芽腫への国際共同臨床試験の体制を構築して、NCI-CTEP承認が得られれば、COGとの共同研究が実施可能となる段階に到達した。引き続き、本試験を実施することで、転移性肝芽腫の治療成績の向上に結び付く成果が期待されるとともに、小児がんなどの希少疾患で国際共同研究によって薬剤承認を得るモデル研究として有用な成果が得られると期待される。
公開日・更新日
公開日
2016-01-28
更新日
-