携帯型心電計による不整脈かかりつけ医ネットワーク構築

文献情報

文献番号
201434023A
報告書区分
総括
研究課題名
携帯型心電計による不整脈かかりつけ医ネットワーク構築
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
福田 恵一(慶應義塾大学 医学部  循環器内科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
いつでもどこでも誰もが簡便に使用できる携帯心電計の開発を通じ、不整脈かかりつけ医ネットワークを構築することを目的とする。携帯性に優れた電極で記録した心電図を独自の不整脈診断アルゴリズムで解析し、クラウドサービスから診断結果を即座に還元する構想である。市販の心電計が家電量販店などで誰でも気軽に入手できるにも関わらず1人に1台普及していないのは、いつでも測定したい時に記録できる「携帯性」、誰でも扱える「操作性」、心電図波形記録・解析の「正確性」、診断結果を還元する「即時性」を兼ね備えてないことが原因の一部である。本研究では、これらの問題を解決した心電計を開発すべく、携帯型心電計を使用した診療経験のある慶應義塾大学病院循環器内科の不整脈専門医を主構成員として不整脈診断アルゴリズムを検証し、健康医療機器を広く扱うオムロンヘルスケア株式会社と共同で早期開発を目指す。
研究方法
本研究は携帯心電計用電極の開発、不整脈診断アルゴリズムを含むネットワーク・アプリケーションの開発、臨床研究からなる。本年度は、①電極プロトタイプ開発に向けた調査、②不整脈診断アルゴリズム開発のための調査、③薬事承認に向けた対策を行った。携帯心電計用電極の開発は、オムロンヘルスケア株式会社に委託した。①の電極調査に関しては、携帯性に優れた心電計用電極のプロトタイプデザインを検討するため、市販の携帯心電計を複数入手し、その特徴および問題点を調査し、次世代の携帯型心電計に求められる改善要件を抽出した。②のアルゴリズム調査に関しては、より正確な診断アルゴリズムを開発するため、従来の体表・心内心電図の診断アルゴリズムの公表資料を比較調査し、基本要件を抽出した。③の薬事対策に関しては、上記要件がある程度整った段階で独立行政法人医薬品医療機器総合機構との相談を実施した。
結果と考察
①の電極調査に関して、既存の携帯心電計およびヘルスケア向けウェアラブルデバイスを複数入手し、さらに既承認の携帯型心電計(HealthPatch、VitalConnect社)を含めて機能や特徴を比較調査し、具体的な改善要件の抽出を行った。医療施設向けには胸部に粘着性ディスポーザブル電極パッドを貼り付けるタイプが多く、ヘルスケア分野においては腕時計、指輪、イヤホンのようにアクセサリー感覚で身につけられる携帯性を重視した製品が多く見られた。全ての製品に共通して、体動の影響を減らすために電極を密着構造とし、表皮との接触が安定するよう工夫していた。より正確に安定したデータを取得するにはノイズ除去の他にこの密着構造の達成が重要であると思われ、電極以外の構造は最小限にして小型化・軽量化を追究した密着電極構造を検討した。一方、心電波形の長時間連続記録が可能で、その他に脈波、呼吸パターン、体温などを同時に計測しているデバイスは少なく、全てを関連付けて解析する装置は市販品では見当たらなかった。これらを統合する機器における電池消耗との関係を検討した。電極部材に関しては、複数企業と意見交換を行い電極改良の最短経路を模索した。また、既存の貼付心電計の臨床実績の蓄積から改善点を抽出するため、既承認の携帯型心電計(HealthPatch、VitalConnect社)を用いた臨床研究にて利用者からのリクエストを収集すべく、本大学での臨床使用を倫理申請し承認された。本研究は貼付心電計の有用性を従来の心電図解析に必須なパラメータ値をもとに比較検討するものであり、それに必要な部材を調達した。②のアルゴリズム調査に関して、本大学病院にて使用中のホルター心電計の他、新規にホルター心電計を2種入手し、課題点を整理して次世代の携帯型心電計に求められる基本要件を抽出した。また、不整脈デバイスメーカーの心内心電図解析アルゴリズムに関する公表資料を収集し、解析方法を検討した。各社パラメータ値の解析手法は異なるが、R-R、P-P、P-Rインターバルなどの心電図解析に必須なパラメータ値の他、その値の安定性(Stability)、テンプレート波形との形状比較(Morphology)などを重視しており、正確な解析にはこれらの概念を最適化して盛り込む必要があると判断した。実際に多様な媒体から記録された心電図記録データを用い、上記パラメータ算出方法の検討を開始した。③の薬事対策に関して、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の薬事戦略相談 事前面談、対面助言(薬事開発計画等戦略相談)を受け、医薬品医療機器総合機構の助言をもとに開発体制および開発計画を立て、薬事承認を第一に考えた製品構想を検討した。
結論
いつでもどこでも誰もが簡便に使用できる携帯心電計の開発を目的とし、開発体制を整えるとともに、電極プロトタイプおよび不整脈診断アルゴリズム開発のための調査、薬事承認に向けた対策を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201434023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
近年、心電計を家電量販店で入手でき、心電図診断がより身近になったことで、頻度の少ない動悸を効率的に診断できる可能性が出てきた一方、従来品は携帯性、正確性、即時性という面で課題が残る。小型・軽量化を追究した電極構造、脈波や呼吸パターンなどを関連付けた解析補強、医師の知見をもとに独自に構築した不整脈診断アルゴリズムを統合することで、従来の課題を解決できると考えられた。
臨床的観点からの成果
頻度の少ない動悸を効率的に診断する方法として携帯型心電計を利用する医師も増加している。ただし、動悸時に心電図を送受信してその場で診断が可能な、いわば不整脈かかりつけ医を提供するシステムは未だない。携帯心電計を利用した不整脈かかりつけ医ネットワークが実現すれば、医師が迅速に対応しやすいだけでなく、治療成績への還元、見落としがちな不整脈検出および不整脈治療後の再発検出への有用性、医療機関が少ない地域における安心への寄与、不整脈サーベイランス調査への貢献などが期待できる。
ガイドライン等の開発
平成25年11月末に改正薬事法が施行され、医薬品医療機器等法において「プログラムの医療機器への該当性についての基本的な考え方」が通知されたが、本件の携帯心電計および不整脈かかりつけ医ネットワークのプログラム医療機器への該当性に関して、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談を行った。
その他行政的観点からの成果
第二種運転免許者の減少と労働時間の増加による運転手の激務に伴う健康起因事故が多発しているが、その最多原因が心臓疾患でありながら適性検査に心臓の精密検査は含まれていない。このような現状に携帯型心電計と診断ネットワークによる不整脈かかりつけ医は医学的、社会的両者の必要性を兼ね備えている。また、不整脈治療の市場は現在もなお拡大傾向であり、このような市場に新たな携帯心電計診断ネットワークを構築することで、医学的診断能力の向上にとどまらず、医療経済的にも大きな役割を果たすことになる。
その他のインパクト
平成25年12月4日に大阪商工会議所にて開催された第6回次世代医療システム産業化フォーラム「医工連携マッチング例会」において企業150社を前に講演を行った。電極部材に関して複数企業と意見交換を行い、部材調達において企業大学間連携が見込め、電極改良の最短経路を模索できた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
第8回Asia Pacific Heart Rhythm Society(APHRS)学術集会
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2019-06-18

収支報告書

文献番号
201434023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
49,400,000円
(2)補助金確定額
23,345,085円
差引額 [(1)-(2)]
26,054,915円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,118,754円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 9,826,331円
間接経費 11,400,000円
合計 23,345,085円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-