非侵襲性生体グルコースモニタリング機器の実用化を加速するための研究

文献情報

文献番号
201434018A
報告書区分
総括
研究課題名
非侵襲性生体グルコースモニタリング機器の実用化を加速するための研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岸本 一郎(独立行政法人 国立循環器病研究センター 糖尿病・代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 槇野 久士(独立行政法人 国立循環器病研究センター 糖尿病・代謝内科)
  • 長谷川 周平(独立行政法人 国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター 知的資産部)
  • 大橋 昭王(日本電気株式会社 事業イノベーション戦略本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、非侵襲グルコースモニタリング装置研究を推進し、現在の技術的有用性限界とその範囲における臨床応用可能性および具体的な使用目的を明らかにし、さらに医療・健康機器としての開発における課題を抽出することを目的とする。
研究方法
本年度は、初年度でありまず研究体制整備を行った。また、独立行政法人国立循環器病研究センターと日本電気株式会社(NEC)とで定期的にミーティングを行い、プロジェクトの目的、成果、経費などが実施計画と乖離の防止、成果の整合、臨床的意義の検証および医療機器承認の早期実現に向けて打ち合わせた。
臨床研究は、血糖変動の大きい2型糖尿病患者を対象に第1世代試作機の安定性を評価した。また、評価に用いる本測定装置以外の血糖測定方法として、現在臨床的に血糖測定に用いられている測定方法を用いて、被験者病態や環境条件等の研究機器以外の要因抽出を開始し、どのような条件で臨床研究を進めることが最適かを検討した。また試作機を用いた検討を開始した。

結果と考察
プロジェクトの総合推進体制の確立を行った。
 また、単独あるいは、臨床試験実施と並行し、2月28日現在で、13回の検討会を実施し、研究の進捗、方向性の確認などを随時行った。
さらに、医療機器承認取得のために実施した独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との面談により、引き続き相談を進めていく上で、まず機器の用途・目的、適用範囲を明確化することが必要であることが分かった。また、機器の目指す目標(絶対的指標または既存の機器)を定めて評価・検証を進めること(機器認証申請時の確証となる)が必要であることも分かった。
倫理委員会で承認された研究計画の下で被験者に対する説明と同意を得て下記の研究を開始した。
・単回測定(静脈血採血との比較)
・3日間測定(持続血糖モニタリング装置、自己血糖測定装置との比較)
・同時再現性
機器の開発・改良として下記の検討を行った
・測定に最適な波長としてこれまでに蓄積している研究成果からグルコース測定用の波長1580nmを選択した。
・補正に最適な波長検討の前に、無補正でグルコース測定の基本性能を患者測定において確認を開始した。
・高輝度LEDおよび高感度PDとして蓄積している成果を基に選択した。

考察
今年度は、プロジェクト推進体制の整備、医療機器としての開発の要件確認、臨床試験の準備、試作機の改良、についてそれぞれ基盤的検討を行った。当初より、臨床医と医療機器メーカー開発担当者との密接な連携が必要と考えられたため、意見交換会を頻回に行うことで、専門性の隔たりを超えて議論することを目標にした。その中で、臨床医でも当該機器に関する最低限の知識を、また、医療機器メーカーにおいても最低限の関連する医療知識を、習得することが出来た。また、承認取得のため、PMDAへの相談を進めていく上で、まず機器の用途・目的、適用範囲を明確化すること、さらに機器の目指す目標を定めて評価・検証を進めること、が重要との考えを関係者が共有できた。

結論
現在の測定技術から得られる最大限の情報を臨床に活用する目的のために、臨床医と技術者が連携しつつ、薬事承認を目指して早めから規制当局に相談して進めることが重要であると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201434018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「開発する非侵襲グルコースモニタリング装置の測定限界」および「医学的価値と装置の性能を踏まえた上で装置の使用目的」の検討を継続した。また、事業化に関する課題および国内外の市場性についてもさらに検討を加えた。測定装置は、最適な波長の検討、高輝度LEDの開発、高感度フォトダイオードの開発を継続している。前年度に引き続き在宅における医療機器、ヘルスケア機器等を開発している企業の調査及び学会等からの情報収集を行った。
臨床的観点からの成果
糖尿病患者における持続血糖モニタリング(CGM)結果を解析し、食後血糖上昇のパターンで、①毎食後高血糖、②朝食後高血糖、③昼食後高血糖、④夕食後高血糖に、また、日間変動の安定性で、①安定型、②不安定型に、さらに、食後血糖のピークで、①食直後型、②ピーク遅延型に、それぞれ分類が可能であった。在宅で血糖管理には、複数回の血糖測定が望ましいことが示唆された。糖尿病と言われていない健康成人対象にCGMを行った。現在症例を追加して結果を解析中である。
ガイドライン等の開発
国際糖尿病連合は、2007年に発表した「糖尿病における食後血糖値の管理に関するガイドライン」を新しいエビデンスの集積を受けて、2011年に改訂しており、「食後血糖の把握のため自己血糖測定(SMBG)の使用を考慮する」としているが、日本人におけるデータ蓄積は不十分であり、侵襲の少ない在宅血糖測定方法が望まれている。
その他行政的観点からの成果
研究結果を踏まえて豊岡市において糖尿病発症・重症化予防の地域連携体制を構築し、平成29年度から豊岡市糖尿病・糖尿病性腎症重症化予防事業が開始された。
その他のインパクト
上記予防事業についてのプレスリリースが朝日、読売、神戸、産経新聞に記事掲載された。
兵庫・豊岡病院で行われた公開講座「地域医療の未来考える」の中で豊岡市長から豊岡市糖尿病連携体制について紹介され、朝日新聞デジタルに掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kishimoto I, Makino H, Ohata Y, et al.
Hemoglobin A1c predicts heart failure hospitalization independent of baseline cardiac function or B-type natriuretic peptide level.
Diabetes Res Clin Pract. , 104 (2) , 257-265  (2014)
10.1016/j.diabres.2014.02.009.
原著論文2
Kishimoto I, Ashida Y, Omori Y,et al.
Questionnaire surveillance of cardiovascular risk factor awareness in community pharmacy patients with diabetes in an urban area of Japan.
Diabetology International , 6 (2) , 117-124  (2014)
10.1007/s13340-014-0183-x
原著論文3
Kishimoto I, Makino H, Ohata Y. et al.
Intensity of statin therapy and new hospitalizations for heart failure in patients with type 2 diabetes.
BMJ Open Diabetes Res Care. 2015 Oct 29;3(1) , 29 (3) , 1-8  (2015)
10.1136/bmjdrc-2015-000137

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2019-05-28

収支報告書

文献番号
201434018Z