在宅人工呼吸器の遠隔監視システムの開発

文献情報

文献番号
201434013A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅人工呼吸器の遠隔監視システムの開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中村 昭則(信州大学医学部附属病院難病診療センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工呼吸器を必要とする重症難病患者の在宅療養において、介護者家族や療養支援者は常に大きな不安を抱えている。これは人工呼吸器の取り扱いが必ずしも容易ではない上に、患者の状態悪化時や医療機器のトラブル、アラーム発生時には迅速な対応が求められるものの、連絡先が医療機器管理会社、訪問看護ステーション、医療機関など複数ヶ所あることで対応に混乱が生じ易い。在宅医療における医療機器等ニーズ調査報告書においても、在宅医療機器の通信機能の付加の必要性が挙げられており、生体機能制御装置である人工呼吸器を装着して在宅療養を営む神経難病患者、重症心身障がい者などとその家族、訪問看護師などが、患者の状態悪化時や機器のアラーム発生時に迅速な対応が求められるため、不安を抱えていることが挙げられていた。殊に、交通利便性の低い山間地や豪雪地、災害時の対応はさらに困難である。一方、現在の汎用在宅人工呼吸器は、従来遠隔監視・通報を行うことを前提に開発されてはいない。そこで、ICTを利用して在宅人工呼吸器の遠隔監視や遠隔アラーム通報が可能となれば、患者の安全確保と家族・療養支援者に安心が与えられる。本研究では、在宅人工呼吸器を装着した患者の呼吸状態や機器稼働情報を複数の関係施設(医療機関、訪問看護ステーション、医療機器管理会社等)で遠隔監視や遠隔通報を行うシステムの開発を目的とする。
研究方法
具体的には、汎用人工呼吸器メーカーと共同で機器稼働や呼吸状態をリアルタイムに外部出力できるように通信機器の付加(一部改良)し、クラウドサーバーにデータを保存し、一部はMEFR変換後に複数の施設で同時かつリアルタイムにPCあるいはモバイル端末で閲覧できるソフトウエア―の開発及び、アラーム情報をモバイル端末などに通知できるソフトウエアーの開発を行う。研究体制については医療機器認定を受けた在宅人工呼吸に通信機能の付加はオリジン医科工業株式会社(東京)と、多施設で閲覧可能なソフトおよびアラーム情報の遠隔通知機能の開発とクラウドサーバーの構築はキッセイコムテック株式会社(松本)と共同で行った。また、通信上の安全性担保は、情報をSSL化しVPNネットワークを用いた。
結果と考察
平成26年度は人工呼吸器からの生体情報と機器稼働情報を遠隔監視用サーバに通信するため、人工呼吸器の生体情報と機器稼働情報をメーカーから入手し、通信プロトコルの検討を行い、専用ルーターの仕様を確定することができた。また、遠隔監視システムについては、遠隔監視用のクラウドサーバーを構築し、人工呼吸器との連携と既存システム(在宅療養チームケアクラウド)との連携の開発を行うことができた。遠隔監視用クラウドサーバー構築の人工呼吸器との連携については、人工呼吸器メーカーから生体情報と機器稼働情報を入手し、在宅人工呼吸器の関係者(医師、医療機器管理担当者)に対してヒアリングを実施中である。現在、システムの概要設計を進めており、データーベースの項目や機能概要は確定することができた。開発したシステムについては運用テストを信州大学附属病院と医療機器管理会社の中日本メディカルリンク株式会社(松本)で、平成27年度に実施予定である。具体的には、詳細設計・プログラミング・テストを行い、既存システムとの連携に係わる概要設計、通信機能の安定性試験、フィージビリスタディーとシステムソフトウエア―の開発を行う。また、平成27年度下半期に信州大学医学部医倫理委員会の承認後に運用テストを行い、データの収集を行う。なお、人工呼吸器の通信機能の付加(一部変更)及びシステム開発は、PMDAとの薬事相談、助言を受けながら実施する。
結論
在宅用人工呼吸器の遠隔監視のための改良通信部分の付加と遠隔監視システムの概要設計および機能概要の確定を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201434013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来の在宅人工呼吸器は遠隔監視を行うことを前提に開発されてはいない。機器の動作状況は、RS232CポートまたはUSBにより外部出力可能であるが、リアルタイム閲覧はほとんどの機種で不可能である。そこで、人工呼吸器の動作状態や患者の呼吸状況のデータを外部出力し、ICTによりVPNネットワークを用いて、機器稼働や呼吸状態をリアルタイムに外部出力できるように改良を加えた機器を用いてデータを保存できるクラウドサーバーシステムの開発を行った。
臨床的観点からの成果
人工呼吸器の遠隔監視およびアラーム通報システムにより、患者、介護者家族のみならず療養支援者、医療者に安心と安全な在宅療養を提供することができ、在宅療養の促進につながることが期待できる。特に、在宅高度医療機器の管理や対応は、交通利便性の低い山間地や豪雪地、災害時における医療機関、訪問看護ステーション、医療機器管理会社や広域消防局において重要な案件となり、診療効率にも密接に関連すると考えられる。上述の機能を在宅人工呼吸器に持たせることで、臨床応用が可能である。
ガイドライン等の開発
日本遠隔医療学会の支援を受けて、2015年12月に開発ガイドラインのための分科会が発足し、ガイドライン策定委員会を設立した。人工呼吸器の出力データフォーマットが標準化もしくは共有化されていないことから、規格化を目指し、ガイドラインに準拠したモデルの製造を国内外のメーカーに促せるような活動を開始した。2017年度にはAMEDおよび産総研との協力のもと人工呼吸器のアラーム遠隔通報に関する開発ガイドライン策定を進めた。
その他行政的観点からの成果
本システムの開発は高度医療機器を必要とする在宅療養患者の医療・介護体制の構築に多くの利点や影響を与えると考えている。また、本来は可避可能と思われる救急搬送、緊急受診、緊急往診などを回避することができる可能性があり、長期的には医療費削減につながるり経済的効果も期待できる。
その他のインパクト
本研究は第19回日本遠隔医療学会優秀論文賞を受賞した。また、2015年12月に日本遠隔医療学会に「在宅生体モニタリング機器情報遠隔伝送のためのガイドライン策定」分科会が設立し、2016年度2月より分科会活動を開始した他、AMEDおよび産総研と協力のもと、人工呼吸器のアラーム通報のための開発ガイドラインの策定を行った。また、「難病と在宅ケア」誌の特集で紹介された(神経難病の在宅医療―現在と未来―.難病と在宅ケア23(3):51-54,2018)。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
中村昭則、滝沢正臣、宮崎大吾
在宅医療のための人工呼吸器の遠隔監視の試み
日本遠隔医療学会雑誌 , 10 (2) , 163-165  (2014)
原著論文2
中村昭則、滝沢正臣、宮崎大吾、石川哲男、山寺賢、鈴木徹也
在宅人工呼吸器の遠隔監視、アラーム通報の試み
日本遠隔医療学会雑誌 , 11 (2) , 142-145  (2015)
原著論文3
中村昭則
在宅生体モニタリング機器情報遠隔伝送のためのガイドライン策定分科会報告
日本遠隔医療学会雑誌 , 12 (1) , 66-66  (2016)
原著論文4
中村昭則、滝沢正臣、宮崎大吾、日根野晃代、吉川健太郎
人工呼吸器のアラーム伝送の試み(第3報)
日本遠隔医療学会雑誌 , 12 , 90-93  (2016)
原著論文5
中村昭則,吉川健太郎,滝沢正臣
院内利用の汎用人工呼吸器のアラーム複数伝送の試み
国立医療学会誌「医療」 , 72 (12) , 499-504  (2018)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2019-06-04

収支報告書

文献番号
201434013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,150,000円
(2)補助金確定額
20,130,000円
差引額 [(1)-(2)]
20,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,300,000円
人件費・謝金 680,000円
旅費 200,000円
その他 7,300,000円
間接経費 4,650,000円
合計 20,130,000円

備考

備考
設備備品費として計上していたオリジン医科工業(株)製人工呼吸器Puppy-X 3台の入札を行った結果、当初見込まれていた購入価格よりも廉価に購入することができたこと及びその他の調達等においても当初見込みより廉価に購入することができたことから、最終的に予算残額が発生したため返戻した。

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-