文献情報
文献番号
201434007A
報告書区分
総括
研究課題名
超軟質精密心臓レプリカの作成による心臓外科手術トレーニングと個別化医療の確立に向けた研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立循環器病研究センター 小児循環器部)
研究分担者(所属機関)
- 内藤 博昭(国立循環器病研究センター・放射線部)
- 市川 肇(国立循環器病研究センター・小児心臓外科)
- 黒嵜 健一(国立循環器病研究センター・小児循環器集中治療)
- 武田 充人(北海道大学医学部・小児科)
- 中西 敏雄(東京女子医科大学・小児循環器学)
- 賀藤 均(国立成育医療研究センター・循環器科)
- 山岸 敬幸(慶応義塾大学医学部・小児科)
- 安河内 聰(長野県立こども病院・循環器科)
- 佐野 俊二(岡山大学岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・心臓外科)
- 檜垣 高史(愛媛大学医学部附属病院小児総合医療センター・小児循環器部門)
- 坂本 喜三郎(静岡県立こども病院)
- 上田 秀明(神奈川県立小児医療センター)
- 朴 仁三(榊原記念病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先天性心疾患の特徴は、対象となる小児の心臓が小さく複雑であるばかりでなく、病気のバリエーションが広いために、3次元構造を正しく理解することが困難なことである。正確な手術治療と優れた予後を期待するには、心臓の立体構造の正しい理解が不可欠である。近年3次元画像診断装置が発達し、心臓をはじめとする複雑な臓器の立体構築が理解しやすくなってきた。しかしながらモニター画面の立体画像は見かけ上の3次元画像でしかすぎず、実臓器の立体構築を完全に理解できるとは言えない。そこで我々は、実際に手で触れ、様々な角度から内部構造を観察し、切開縫合が可能な術前シミュレーターの確立が必要と考え、実物に近い感触の「超軟質精密臓器レプリカ」の開発を進めてきた。このような「超軟質臓器レプリカ」の実現は、患者の病態に応じたテーラーメイド医療の実現、若手医師の手術トレーニング、医療事故の予防、医療の均てん化、新しい治療手技の開発、再生医療への応用、再手術の予防による医療費の節減など、広範囲にわたり重要な医療ツールとなり得る。
研究方法
心臓レプリカの正確性および有用性を評価する前向き観察研究。患者の選択基準としては、診断および治療方針の決定にマルチスライスCTによる心血管造影検査を行う必要のある先天性心疾患患者のうち、心臓大血管の構造が極めて複雑で、外科手術前に「心臓レプリカ作製を行う診断所見」のある満3歳未満の小児患者とする。また代諾者より本研究参加の文書同意が得られた患者に対して行う。心臓レプリカ作成を行う診断としては、評価に適し、比較的発症頻度の高い、ファロー四徴(心室中隔欠損兼肺動脈閉鎖を含む)、両大血管右室起始、完全および修正大血管転位、大動脈離断および縮窄(左心低形成を含む)4疾患群とする。
結果と考察
我々は先天性心疾患の救命率を向上させることを目的として、心臓レプリカ作成のための技術開発を継続的に行ってきた。とりわけ現在開発中の光造形と真空注型をハイブリッドさせた「超軟質精密心臓レプリカ」は、実際に心臓外科医に術前シミュレーターとして使用できるレベルにまでに至った。本技術を広く臨床応用できるようさらに技術開発を継続するとともに、先進医療および保険収載のための客観的な評価を得るため、全国の代表的な小児循環器施設の心臓外科医に、複雑先天性心疾患の術前シミュレーターとしての臨床評価を実施している。現在の問題点として、画像処理と造形過程を含めて製作期間には約1週間を要し、製造費用には心臓レプリカ1個あたり20から40万円の経費がかかる。軟質の臓器シミュレーターの確立は将来の個別化医療に必須と考えられるので、我々はレプリカ作成の迅速化とコストダウンを目的として、更なる研究開発を行っている。
結論
「精密心臓レプリカ」は、術前シミュレーション、医療のテーラーメイド化、医学教育、医療安全、医療技術の発展に役立つ。術前シミュレーションや医療のテーラーメイド化が普遍化することで、手術の効率が良くなり、再手術症例が減少することが十分に期待される。その結果、直接的に再手術の減少による患者リスクの軽減につながる。またテーラーメイド医療技術の先駆けとして、日本の優れたものづくり技術を用いた革新的な医療技術の開発につながることも期待され、このような日本発の工業技術が世界の医療分野に導入されれば、高価な輸入医療機器を購入する機会が減少し、間接的に医療コストの低減と保険医療費の軽減につながる。
医療技術レベルが高レベルに到達した昨今では、難治疾患の治療成績を競うことよりも、高度医療を誰でもどこでも安心して受けられる状況(医療の質の均てん化)を目指した医療従事者の教育、医療技術の伝承、医療安全の確保が最重要課題となり、医療政策として押し進められる。
医療技術レベルが高レベルに到達した昨今では、難治疾患の治療成績を競うことよりも、高度医療を誰でもどこでも安心して受けられる状況(医療の質の均てん化)を目指した医療従事者の教育、医療技術の伝承、医療安全の確保が最重要課題となり、医療政策として押し進められる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-12
更新日
-