インターロイキン2の免疫抑制作用を活用する新しい免疫制御療法の開発

文献情報

文献番号
201433012A
報告書区分
総括
研究課題名
インターロイキン2の免疫抑制作用を活用する新しい免疫制御療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 賢市(岡山大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 嘉信(岡山大学病院 )
  • 平田 泰三(岡山大学病院 )
  • 樋之津 史郎(岡山大学病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ステロイド抵抗性慢性GVHDは、高い致死率を来たす重大な移植合併症であり、治療法確立が緊喫の課題であることは論を待たない。初期の報告で、マウス骨髄移植で移植後免疫寛容にTregが不可欠であることが報告され、実際に慢性GVHD患者でTregの減少が示された。移植後のTreg減少要因を探る過程で、申請者らは、移植後の相対的なIL-2不足を基盤とするTreg恒常性異常を発見し、さらにこの異常は少量のIL-2投与により可逆的に補正しうることを臨床研究により明らかにした。
 われわれは、IL-2によるTreg増幅及び免疫制御効果を最適化する運用法を模索するため、本研究において、①導入期(治療開始後~4週)IL-2 週7回投与、及び②維持期(5~12週)IL-2 週3回投与、の合計12週間に及ぶ臨床試験を予定し、より高い臨床効果を期待できる投与法の確立を目指す。
 平成27年度に患者登録を開始し、平成28年度までに予定数の登録を完了する。平成29年度に症例観察を終了し、データ固定、解析、監査を経て、総括報告書を作成する。平成30年度には論文を発表して次段階の臨床試験へと繋ぎ、テセロイキンの慢性GVHD治療薬への適応拡大を目指す。
研究方法
 主要評価項目は、4週間投与時の最大耐量の決定と治療効果維持生存率を指標とする有効性の検討である。副次評価項目は、12週間の安全性プロファイル、客観的GVHDスコア、及び免疫修飾効果である。臨床的効果の評価は、(1)治療奏功維持生存率(Failure-free survival: FFS)、(2)NIH基準に基づく客観的治療効果判定、及び(3)2015年にNIHより発表される予定の主観的効果判定基準の3点より評価し、効果判定委員会にて臨床的奏功の有無を判定する。治験実施施設からの血液検体は、採血後24時間以内に岡山大学に輸送され、岡山大学で中央検査を行う。導入期に急速増幅したTregが、安定的に長期に維持されるかどうかを評価する。
結果と考察
<研究結果>
 平成26年度は、7月に実施したPMDA薬事戦略相談での助言をもとに、治験の完遂のための基盤整備を行った。希少疾患を対象とする本治験で着実な患者組み入れを担保するため、多施設共同試験として実施するよう、臨床研究中核拠点病院を中心に10施設を選定した。多施設治験の円滑な運行のため各施設に分担研究者を配置し、さらにこれらの施設から速やかに確実なデータ収集・解析を行えるようにEDCシステムを構築した。治験全般に対して、岡山大学病院新医療研究開発センターが支援する。治験実施施設には多くの臨床研究中各拠点病院が含まれており、各施設のARO機能とネットワークを形成することにより、迅速かつ適切に医師主導治験を実施する。治験薬について、塩野義製薬株式会社と岡山大学との間で、無償提供の契約を締結し、必要な治験薬が安定的に供給される体制を構築した。
<考察>
 近年、免疫抑制活性を持つ制御性T細胞(Treg)をIL-2少量投与によって増加させ、積極的に免疫寛容導入をはかる治療法(Low-dose IL-2)が試みられ、臨床的な有効性が示されている。今回の研究では、本邦における移植後長期成績の改善を目指して、テセロイキンのGVHDへの適応拡大を目標とする医師主導治験を実施する。研究初年度である平成26年度は、医師主導治験の実施体制の整備に重点をおいた。この過程で、本邦での慢性GVHD治験における適正なベンチマークの検討を行っていきたいと考えている。これまで多数の二次治療の報告がなされているが治療法の優劣を判断するベンチマークの設定が困難なため現時点で確立された治療指針はなく、試行錯誤しながら有効な治療の選択がなされているのが現状である。この点は次年度以降の重要な課題となろう。
 27年2月にPMDA対面助言が終了しており、今後は倫理委員会審査、治験届の提出を経て、4月よりの治験開始となる予定である。
結論
 希少な対象疾患から着実に患者を組み入れ、さらに安全性の評価のみならず次相におけるエンドポイント検索の目的で臨床効果を評価する本治験を完遂するため、治験実施体制の構築を行った。平成27年度から治験の患者組み入れを開始し、平成28年度までに予定数の登録を完了する体制を整備することができたものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-12-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201433012C

収支報告書

文献番号
201433012Z