抗HIV-1核酸系逆転写酵素阻害薬アバカビルの成人T細胞白血病への適応拡大に関する臨床研究

文献情報

文献番号
201433011A
報告書区分
総括
研究課題名
抗HIV-1核酸系逆転写酵素阻害薬アバカビルの成人T細胞白血病への適応拡大に関する臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高折 晃史(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 新堂 啓祐(京都大学 医学研究科 )
  • 小林 正行(京都大学 医学研究科 )
  • 菱澤 方勝(京都大学 医学研究科 )
  • 清水 章(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
  • 高谷 宗男(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
  • 池田 隆文(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
  • 森田 智視(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)によって惹き起こされる、極めて予後不良の血液悪性疾患である。通常の化学療法による長期生存率は極めて低く、唯一根治を期待できる造血幹細胞移植術においても3年生存率は依然33%にとどまる。本邦には約108万人のHTLV-1感染者が存在するが、本疾患の発症率は年間約1200人と希少疾患であるため、新規治療法の開発は極めて困難である。
一方、欧米においては、インターフェロンα(IFNα)/逆転写酵素阻害剤ジドブジン(AZT)の有効性が報告されているが、その作用機序に関してはまったく未解明であった。申請者らは、AZTと同系の薬剤であるアバカビルが極めて強力な抗ATL細胞効果を有すること、さらにその作用機序として1本鎖DNA断裂修復酵素TDP1の発現異常を標的としていることを先行研究により明らかにした(Science Advances 1:e1400203,2015、PCT出願済み)。
従って、本研究では、抗HIV-1逆転写酵素阻害剤アバカビルのドラッグリポジショニングによる希少難治性疾病ATLへの適応拡大を目標として、医師主導治験の実施、並びにさらなる非臨床POCの取得を行う。
研究方法
研究計画は、アバカビルのATLへの適応拡大のための医師主導治験の実施準備、並びに実施を行うと同時に、さらなる非臨床POC(薬効・薬理)を取得する。
 医師主導治験の実施に関し、PMDAとの薬事戦略相談対面助言の結果に基づき、プロトコールを修正、IRB承認を経て、臨床研究を開始する。
 また、アバカビルのさらなる非臨床POCを得て、知財形成、特許申請を行う。
結果と考察
1.ATLへの適応拡大を目指した医師主導治験として、再発・難治性ATL患者に対する第1/2相臨床試験を準備、実施する。
 臨床研究総合センターの全面的支援のもと、プロトコールの作製が順調に行われている(進捗率80%)。またそれに基づき、電子的臨床検査情報収集(Electoric Data Capture: EDC)システムの構築並びに契約を行った。
 11月11日にPMDAとの薬事戦略相談事前面談、3月23日に対面助言を受けた。
 施設間の協力体制に関しては、ATL患者症例数の多い九州地方の大学病院へ協力を要請し、長崎大学(原研内科 宮崎泰司教授)、佐賀大学(血液・呼吸器・腫瘍内科 木村晋也教授)から内諾を得、既にプロトコール作製等の段階から、研究に参加していただいている。 
 薬剤の提供に関しても、グラクソスミスクライン社と契約締結した。

2.非臨床POCの取得のための薬効・薬理試験の実施:
1)同様のDNA修復機構に作用する既存の抗癌剤との併用効果として、TDP1に協調的に働くPARPやTop1に対する阻害薬との併用効果を示した。
2)HTLV-1感染モデル(キャリアモデル)マウスに関して、キャリアモデルにおける本剤の効果を検討中である。
3)TDP1異常を有する他の癌腫のスクリーニングに関して、肺癌細胞株のスクリーニングを施行、複数の細胞株での発現低下を認めた。また、ATL細胞におけるTDP1発現低下が、転写調節異常であることを示し、その標的転写因子を絞り込んでいる。
結論
以上のように、本研究課題採択が8月であった分の遅れはあったが、ほぼ計画通り進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201433011C

収支報告書

文献番号
201433011Z