文献情報
文献番号
201432021A
報告書区分
総括
研究課題名
iPS細胞を用いたパーキンソン病の新規創薬システムの開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
服部 信孝(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 赤松 和土(順天堂大学 医学部)
- 斉木 臣二(順天堂大学 医学部)
- 石川 景一(順天堂大学 医学部)
- 井本 正哉(慶應義塾大学 理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既報告のない、家族性パーキンソン病患者由来iPS細胞を作製し病態を解析するとともに、同解析に有用なアッセイシステムを確立すべく旧来の培養細胞系での病態に基づくバックグラウンドデータを確立し、創薬スクリーニングに適切なシステムを確立することを目的とする。
研究方法
I. 新規家族性PD患者由来iPS細胞ラインの樹立
①PARK9患者由来iPS細胞ライン
PARK9患者1症例より同意取得後に末梢血液よりリンパ球を回収し、山中4因子を導入し、iPS細胞を樹立した。
②責任遺伝子CHCHD2に病因変異を持つ患者由来iPS細胞ライン
CHCHD2病因変異を持つ患者1症例より同意取得後に皮膚線維芽細胞を樹立し、山中4因子を導入してiPS細胞を樹立した。
③PINK1ノックアウトマウス由来胚性線維芽細胞におけるミトコンドリア呼吸機能評価
既に我々が作製したPINK1-/- マウス線維芽細胞(MEFs)およびそのコントロールラインを培養し、ミトコンドリア呼吸鎖のアッセンブリーをblue native PAGE並びに各種化合物添加状態での酸素消費量評価などにより、同細胞ラインの詳細な評価を行った。
II. I-①、I-②で樹立したiPS細胞からの神経細胞分化誘導・病態解析
Iにて樹立したiPS細胞を連続的に適切な培養環境に置き、神経細胞に分化誘導後、a)ミトコンドリア毒への反応性、b)リソソーム水解酵素阻害薬への反応性、c)フラックスアナライザーを用いたミトコンドリア機能の評価、以上を施行した。
(倫理面への配慮)
平成18年9月1日に施行された厚生科学審議会科学技術部会「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」および平成22年11月1日に告示・施行された改正指針に則り準拠し、実験を行った。全ての遺伝子組み換え実験についても順天堂大学倫理委員会により承認済みであった。
①PARK9患者由来iPS細胞ライン
PARK9患者1症例より同意取得後に末梢血液よりリンパ球を回収し、山中4因子を導入し、iPS細胞を樹立した。
②責任遺伝子CHCHD2に病因変異を持つ患者由来iPS細胞ライン
CHCHD2病因変異を持つ患者1症例より同意取得後に皮膚線維芽細胞を樹立し、山中4因子を導入してiPS細胞を樹立した。
③PINK1ノックアウトマウス由来胚性線維芽細胞におけるミトコンドリア呼吸機能評価
既に我々が作製したPINK1-/- マウス線維芽細胞(MEFs)およびそのコントロールラインを培養し、ミトコンドリア呼吸鎖のアッセンブリーをblue native PAGE並びに各種化合物添加状態での酸素消費量評価などにより、同細胞ラインの詳細な評価を行った。
II. I-①、I-②で樹立したiPS細胞からの神経細胞分化誘導・病態解析
Iにて樹立したiPS細胞を連続的に適切な培養環境に置き、神経細胞に分化誘導後、a)ミトコンドリア毒への反応性、b)リソソーム水解酵素阻害薬への反応性、c)フラックスアナライザーを用いたミトコンドリア機能の評価、以上を施行した。
(倫理面への配慮)
平成18年9月1日に施行された厚生科学審議会科学技術部会「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」および平成22年11月1日に告示・施行された改正指針に則り準拠し、実験を行った。全ての遺伝子組み換え実験についても順天堂大学倫理委員会により承認済みであった。
結果と考察
I-① 樹立されたiPS細胞コロニーをpick upし、未分化マーカー発現量や神経細胞分化能および導入遺伝子の残存などから解析に用いる3クローンを決定した。
I-② 樹立されたiPS細胞コロニーをpick upし、未分化マーカー発現量や神経細胞分化能および導入遺伝子の残存などから解析に用いる2クローンを決定した。
I-③ 以前PINK1欠乏はミトコンドリア膜電位の低下を来すが、プロトンリークの原因とはならないことを報告した(Neurobiol Dis 41: 111-8, 2011)。本研究では呼吸鎖についての詳細な検討を行い、Complex I/IIIの機能低下を呈することを証明した。
II. PARK9、CHCHD2関連性PDともに選定したiPS細胞は正常対照iPS細胞と同等に神経細胞分化が可能であることを確認した。PARK9に関しては神経細胞分化後の軸索長、リソソーム異常による異常蛋白質の蓄積を検討中である。CHCHD2関連性PDに関しては神経細胞死誘導を検討中である。マウス線維芽細胞を用いた結果からヒト細胞におけるフラックスアナライザーを用いた解析の条件検討を行い、至適培地および培養条件が確定したため、今後は安定的に解析可能になると思われる。
以上の結果に示すように世界的にも希少な家族性パーキンソン病患者2例(PARK9、CHCHD2関連性PD)からiPS細胞を樹立し、神経細胞分化できることを確認した。今後はドパミン神経特異的な神経分化誘導を行うことにより、症例想定される病態に即した、より高精度かつ簡易なアッセイ系を確立し、創薬スクリーニングへの応用を目指す。
I-② 樹立されたiPS細胞コロニーをpick upし、未分化マーカー発現量や神経細胞分化能および導入遺伝子の残存などから解析に用いる2クローンを決定した。
I-③ 以前PINK1欠乏はミトコンドリア膜電位の低下を来すが、プロトンリークの原因とはならないことを報告した(Neurobiol Dis 41: 111-8, 2011)。本研究では呼吸鎖についての詳細な検討を行い、Complex I/IIIの機能低下を呈することを証明した。
II. PARK9、CHCHD2関連性PDともに選定したiPS細胞は正常対照iPS細胞と同等に神経細胞分化が可能であることを確認した。PARK9に関しては神経細胞分化後の軸索長、リソソーム異常による異常蛋白質の蓄積を検討中である。CHCHD2関連性PDに関しては神経細胞死誘導を検討中である。マウス線維芽細胞を用いた結果からヒト細胞におけるフラックスアナライザーを用いた解析の条件検討を行い、至適培地および培養条件が確定したため、今後は安定的に解析可能になると思われる。
以上の結果に示すように世界的にも希少な家族性パーキンソン病患者2例(PARK9、CHCHD2関連性PD)からiPS細胞を樹立し、神経細胞分化できることを確認した。今後はドパミン神経特異的な神経分化誘導を行うことにより、症例想定される病態に即した、より高精度かつ簡易なアッセイ系を確立し、創薬スクリーニングへの応用を目指す。
結論
世界的にも希少な家族性パーキンソン病患者2例(PARK9、CHCHD2関連性PD)からiPS細胞を樹立し、病態に即したアッセイ系を開発する環境が整った。平行してPARK2など従来樹立したPD-iPS細胞を用いて、創薬スクリーニングを効率的に行う方法を当研究グループ内で確立しつつある。
公開日・更新日
公開日
2015-06-18
更新日
-