長期保存型3次元再生皮下軟骨の医師主導治験の実施

文献情報

文献番号
201432018A
報告書区分
総括
研究課題名
長期保存型3次元再生皮下軟骨の医師主導治験の実施
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高戸 毅(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大友 邦(東京大学 医学部附属病院)
  • 星 和人(東京大学 医学部附属病院)
  • 荒川 義弘(東京大学 医学部附属病院)
  • 鈴木 友人(東京大学 医学部附属病院)
  • 藤原 夕子(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
35,376,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
われわれはポリ乳酸(PLLA)多孔体足場素材を導入して力学強度と3次元形態を有する3次元再生皮下軟骨を開発し、世界に先駆け、東京大学医学部附属病院において口唇口蓋裂の鼻変形患者に臨床応用した。さらに、足場素材と培養方法を改良し、4時間しか保存できなかったこの再生軟骨の保存期間を14日間に延長し、製造機関から遠隔地にある医療機関においても使用できる技術を確立した。本年度から、改良された再生軟骨のfirst-in-human trialを多施設ヒト幹細胞臨床研究として実施し、その後、富士ソフト社に技術移転して同社が治験を実施し産業化する予定であった。しかし、再生医療に関わる法制度が整い、またPMDA薬事戦略相談により効率よく治験準備が出来るようになったため、長期保存型再生軟骨のfirst-in-human trialをヒト幹細胞臨床研究ではなく医師主導治験として実施し、臨床データを後日実施する富士ソフト社による企業治験に生かすこととした。
本研究では、富士ソフト社と協力しながら、医師主導治験(症例数2)で長期保存型再生軟骨のfirst-in-human trailを行い、安全性ならびに有効性を確認することを目的としている。
研究方法
1.医師主導治験の申請準備
東京大学医学部附属病院で、長期保存型3次元再生皮下軟骨の治験を実施するための体制を整える。顎口腔外科・歯科矯正歯科のほか、手術部、麻酔科、放射線科、救急部などの医師や看護師、臨床研究コーディネーターなどと連携をとり、プロトコールの詳細を検討する。富士ソフト社と協力して進めてきたPMDA薬事戦略相談での内容を反映させ、医師主導治験の申請書を作成する。
2.治験届の提出
東京大学医学部附属病院にて、3次元再生皮下軟骨の治験を実施する治験届を提出する(予定症例数2)。3次元再生皮下軟骨は富士ソフト社細胞プロセッシングセンター(CPC)で作製する。
結果と考察
1.医師主導治験の申請準備
東京大学医学部附属病院で、長期保存型3次元再生皮下軟骨の治験を実施するための体制を整えた。平成26年12月26日にPMDAと事前面談を行い、医師主導治験と企業治験の位置づけについては、
・医師主導治験は、再生軟骨が問題なく移植できること及び安全性を確認すると同時に、有効性の評価指標及び評価方法を探索的に検討し、その有用性及び適切性を確認することを目的とする。
・医師主導治験の症例数を2例とし、2例目が術後3ヶ月になった時点でデータモニタリング委員会を開催し、重篤な有害事象が認められていなければ、企業治験へ移行する。
・企業治験の目的は安全性・有効性を確認することで問題ないとの見解が示された。
2.治験届の提出
これらのPMDAの見解を受けて、作成したプロトコールを基に、平成27年3月19日に東京大学にてIRBを実施した。現在、指摘事項の修正を行っており、平成27年3月31日に治験届を提出する予定である。
治験実施概要は、以下の通りである。
症例数:2例
実施場所:東京大学医学部附属病院
製造場所:富士ソフト社CPC
評価方法としては、
(1)安全性評価項目として①有害事象の発現と内容、②治験製品と因果関係がある有害事象の発現と内容、③治験製品の不具合の発生を評価する。
(2)副次的有効性評価項目で①頭部X線規格写真(セファログラム)計測での鼻尖部から鼻根部にかけた高さの増加、②セファログラム計測での面積変化率、③顔貌写真スコア評価方法による顔面及び鼻口部分についての外観評価、④DAS59による顔面の整容的満足度の変化量、⑤日常生活動作に関するアンケートによる日常生活動作性の変化量、⑥SDSによる抑うつ性の変化量、⑦軟骨組織採取部位の評価、⑧顔貌写真スコア評価方法による鼻の弯曲評価、⑨移植部位の硬さの評価を行う。
その他、(3)探索的な副次的有効性評価項目を、三次元形状モデル(CT)計測やMRI 画像による再生軟骨の軟骨成熟度とし、各手順書の作成にとりくんだ。
頭部X線規格写真(セファログラム)計測での鼻尖部から鼻根部にかけた高さの増加を、自主臨床研究の3症例で測定した。測定者の間で有意な差は認められなかった。また、移植後3か月と6か月で、鼻の高さに有意な変化は認めなかった。
本年度は、PMDAとの事前面談や治験体制の整備、プロトコールの作成とIRBでの審議など、順調に治験に向けた準備が進んだと考えている。平成27年3月31日に治験届を提出予定であり、来年度はその認可に応じて医師主導治験を行っていく。
結論
東京大学医学部附属病院で長期保存型再生軟骨の治験を実施するための体制を整え、PMDAと事前面談を行った。また、医師主導治験の申請書を作成し、IRBで審議を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201432018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
われわれは、先行プロジェクトで再生軟骨の保存期間を延長し、製造機関から遠隔地にある医療機関においても使用できる技術開発や、移植された再生軟骨を非侵襲的に評価する指標を検討してきた。本プロジェクトでは、それらの知見を反映させた治験プロトコールを作成し、治験実施体制を整えた。医師主導治験では、富士ソフト社細胞プロセッシングセンターで再生軟骨を作製することとなっており、再生組織の製造委託、搬出入の過程を含む臨床応用が実現することとなる。
臨床的観点からの成果
長期保存型再生軟骨について、東京大学医学部附属病院にて、3次元再生皮下軟骨の治験を実施するプロトコールを作成し、平成27年3月25日にIRBの承認を受けた。3月31日に治験届を提出し、平成27年度から東京大学医学部附属病院にて医師主導治験を開始した。予定通り再生軟骨の移植を行い、現在治験プロトコールに基づき移植後の追跡評価を行っており、有効性・安全性評価データを蓄積している。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
【新聞掲載】
髙戸毅:再生医療の製品化 加速 安全性確保など2法施行.2014年11月26日,朝日新聞 朝刊
星和人:口やあごの病気とその最新治療,第44回東京大学医師会 公開講座,2019年3月12日

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
再生軟骨の軟骨特性を評価する 方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2011-9253(P2011- 9253)
発明者名: 星 和人、髙戸 毅、原井基博
権利者名: 富士ソフト株式会社、国立大学法人 東京大学
出願年月日: 20110129
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Goto M, Kunimatsu A, Shojima M et al. al
1. Depiction of branch vessels arising from intracranial aneurysm sacs: Time-of –flight MR angiography versus CT angiography
Clin Neurol Neurosurg , 126 , 177-184  (2014)
10.1016/j.clineuro.2014.09.003
原著論文2
Okuma H, Gonoi W, Ishida M et al.
Comparison of attenuation of striated muscle between postmortem and antemortem computed tomography: results of a longitudinal study
PLoS One , 9 (11) , e111457-  (2014)
10.1371/journal.pone.0111457
原著論文3
Goto M, Abe O, Aoki S et al.
Longitudinal gray-matter volume change in the default-mode network: utility of volume standardized with global gray-matter volume for Alzheimer’s disease: a preliminary study
Radiol Phys Technol , 8 (1) , 64-72  (2015)
10.1007/s12194-014-0295-9
原著論文4
Fujihara Y, Nitta N, Misawa M et al.
T2 and Apparent Diffusion Coefficient of MRI Reflect Maturation of Tissue-Engineered Auricular Cartilage Subcutaneously Transplanted in Rats
Tissue Eng Part C Methods , 22 (5) , 429-438  (2015)
10.1089/ten.TEC.2015.0291
原著論文5
Misawa M, Nitta N, Shirasaki Y et
Characteris tic X-ray A bsorptiome try Applied to the Asse ssment of Tissue-Eng ineered Car tilage Devel opment
J Xray Sci Technol , 23 (4) , 489-502  (2015)
10.323 3/XST -15050 4
原著論文6
Hoshi K, Fujihara Y, Saijo H et al.
Three-dimensional changes of noses after transplantation of implant-type tissue-engineered cartilage for secondary correction of cleft lip-nose patients
Regen Ther , 7 , 72-79  (2017)
org/10.1016/j.reth.2017.09.001.
原著論文7
Hoshi K, Fujihara Y, Saijo H et al.
Implant-type Tissue-engineered Cartilage for Secondary Correction of Cleft Lip-nose Patients
J Clin Trials , 7 , 1000315 -  (2017)
10.4172/2167-0870.1000315
原著論文8
Hoshi K, Fujihara Y, Yamawaki T et al.
Biological aspects of tissue-engineered cartilage
Histochem Cell Biol , 149 (4) , 375-381  (2018)
10.1007/s00418-018-1652-2
原著論文9
Inaki R, Fujihara Y, Kudo A et al.
Periostin contributes to the maturation and shape retention of tissue-engineered cartilage
Sci Rep , 8 (1) , 11210-  (2018)
10.1038/s41598-018-29228-6
原著論文10
Fujihara Y, Hikita A, Takato T et al.
Roles of macrophage migration inhibitory factor in cartilage tissue engineering
J Cell Physiol , 223 (2) , 1490-1499  (2018)
10.1002/jcp.26036

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2019-06-03

収支報告書

文献番号
201432018Z