文献情報
文献番号
201432004A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト皮下脂肪由来間葉系前駆細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
室原 豊明(名古屋大学 大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 新谷 理(名古屋大学 大学院 医学系研究科 )
- 柴田 玲(名古屋大学 大学院 医学系研究科 )
- 近藤 和久(名古屋大学 大学院 医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
46,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまでに我々は、重症末梢動脈閉塞性疾患に対して自己骨髄単核球細胞移植による血管新生療法 の基礎から臨床までの新規治療法開発研究を行って来た。本治療法は再生医療分野 では国内で初めての高度先進医療の保険適用を承認された。しかし、この治療法は患者負荷が重く、かつ透析患者などの治療不応群も存在することが判明した。そのため我々 は新たな細胞供給源の開拓や治療効率を上げる新しい治療法を研究してきた。近年、脂肪組織中に間葉系幹/前駆細胞が存在することが報告され、この細胞を用いた再生医療が国内外で注目されている。脂肪組織由来間葉系前駆細胞は種々の細胞への分化 能を有し、多くのサイトカインを分泌し血管新生促進作用を有することも確認されている。本研究の目的は、自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた新規の心血管再生療法を開発するこ とである。
研究方法
我々は名古屋大 学医学部生命倫理審査委員会および、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の承認を受け、平成25年度より、『ヒト皮下脂肪由来間葉系前駆細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法についての研究』を開始した。本臨床研究実施計画書の概要を以下に記す。
対象疾患:閉塞性動脈硬化症、バージャー病、膠原病にともなう重症虚血肢 患者登録基準:従来治療では患肢切断が余儀なくされる Fontain III-IV度の重症虚血肢の患者で、血管新生療法が増悪因子となりうる合併症(増殖性網膜症、悪性腫瘍など)を有さないもの。本臨床研究は個々の症例に対する血管新生療法の適応判定、術前検査、患者への説明と同意、細胞の採取および移植、血管新生療法後の評価項目による経過観察は名古屋大学医学部附属病院において行われた。
対象疾患:閉塞性動脈硬化症、バージャー病、膠原病にともなう重症虚血肢 患者登録基準:従来治療では患肢切断が余儀なくされる Fontain III-IV度の重症虚血肢の患者で、血管新生療法が増悪因子となりうる合併症(増殖性網膜症、悪性腫瘍など)を有さないもの。本臨床研究は個々の症例に対する血管新生療法の適応判定、術前検査、患者への説明と同意、細胞の採取および移植、血管新生療法後の評価項目による経過観察は名古屋大学医学部附属病院において行われた。
結果と考察
従来治療では患肢切断が余儀なくされると判断された Fontaine IV度の重症虚血肢を有する3症例(バージャー病1症例、膠原病にともなう末梢血管障害2症例) に対して本血管新生療法を実施し、施行後の追跡調査を行った。第一症例は強皮症に伴う末梢血管障害による右第1趾の難治性虚血性潰瘍を有する患者であった。第二症例は閉塞性動脈硬化症及び強皮症による右第2・3趾の難治性虚血性潰瘍を有する患者であった。第三症例はバージャー病に伴う左第5趾の難治性虚血性壊疽および潰瘍を有する患者であった。いずれの症例も術後6ヶ月の時点で、疼痛の軽減及び潰瘍サイズの縮小または治癒、6分間歩行可能距離の延長を認め、血管造影やレーザードップラー検査においても血流改善を示唆する所見が認められた。現時点において、3症例とも出血、感染、肺塞栓症などの想定されうる周術期合併症や血管新生に伴う新規悪性新生物や増殖性網膜症などの有害事象の発生を認めておらず、患肢切断も免れている。今後登録症例数を増やすために、東海地区の多くの医療機関に本臨床試験の概要について告示を行った。
結論
他にバイパス手術や血管内治療の適応が無い重症虚血肢患者(特にバージャー病や膠原病に伴う皮膚潰瘍)に対する、自己皮下脂肪由来間葉系前駆細胞を用いた血管新生療法は、極めて有効な治療法ではないかと思われた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-