東アジア地域での薬剤応答性における民族差と国際共同治験や医薬品使用の実態に関する調査研究

文献情報

文献番号
201430005A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア地域での薬剤応答性における民族差と国際共同治験や医薬品使用の実態に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
頭金 正博(名古屋市立大学大学院薬学研究科医薬品安全性評価学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部)
  • 川合 眞一(東邦大学医学部医学科内科学講座膠原病学分野 内科学)
  • 大橋 京一(大分大学医学部臨床薬理学講座)
  • 竹内 正弘(北里大学薬学部臨床医学)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学臨床薬理学)
  • 熊谷 雄治(北里大学医学部附属臨床研究センター)
  • 松本 宜明(日本大学薬学部臨床薬物動態学)
  • 宇山 佳明(医薬品医療機器総合機構安全第一部)
  • 佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所医安全科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【委託費】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進のための研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
29,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東アジア地域での国際共同治験が活性化し、データの相互活用が可能になると、我が国のみならず東アジア地域での新規医薬品開発が活性化する。しかし、遺伝的に類似している東アジア民族間においても、薬物動態や安全性に違いが生じる可能性がある。そこで、本研究事業では、東アジアにおける薬物動態や安全性の相違に関する検討や、その基礎となる各国での治験や処方状況等に関する調査を行い、東アジア諸国間での医薬品の応答性に関する民族差を明らかにし、その成果を指針作成や多国間会合で活用することを目的とした。
研究方法
東アジア地域における国際共同治験および医薬品使用に関する実態調査では、これまでに実施された国際共同治験での症例数、データ分散、各種疾患に関する標準的な治療薬を調査し、東アジアにおける民族差に関する解析の基盤情報とすると共に、東アジアでの国際共同治験での研究計画策定に有用な情報を提供した。また、東アジア地域における薬物動態・安全性等に関する民族差に関する調査では、東アジアにおける薬物動態・安全性等に関する民族差を明らかにするため、東アジアでの副作用の発生状況を比較するとともに、既存資料から、薬物動態、薬力学に関する情報やゲノムバイオマーカーの頻度に関する情報を収集し、東アジア間で比較を行った。さらに、既存の臨床試験データを用いて母集団薬物動態解析手法を適用し、薬物動態における東アジア民族間での類似点や相違点を明らかにした。
結果と考察
東アジア地域での国際共同治験の活性化を目指して、本研究事業では、東アジアにおける薬物動態や安全性の相違に関する検討や、その基礎となる各国での治験や処方状況等に関する調査を行い、東アジア諸国間での医薬品の応答性に関する民族差を明らかにすることを目的とした。成果としては、副作用報告データベースや添付文書等の既存の各種医療情報を用いて有効性・安全性や薬物動態の民族差を調査することが可能であることを示すことができた。また、個別の医薬品についても、母集団解析手法等を用いて民族差を解析する方法を確立した。さらに、東アジア地域での国際共同治験等の実態を調査し、国際共同治験を促進するための留意点等を明らかにした。
結論
医薬品の開発状況等の調査から、民族的要因にも考慮しながらアジア国際共同治験の実施について、さらに促進していくことが重要と考えられた。そのためには、個別の医薬品についての有効性、安全性や薬物動態の特性を比較することが重要であることは当然であるが、既存の各種医療情報を用いて民族差を調査することも可能であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201430005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
副作用報告データベースや添付文書等の既存の各種医療情報を用いて有効性・安全性や薬物動態の民族差を調査することが可能であることを示すことができた。また、個別の医薬品についても、母集団解析手法等を用いて民族差を解析する方法を確立した。さらに、東アジア地域での国際共同治験等の実態を調査し、国際共同治験を促進するための留意点等を明らかにした。
臨床的観点からの成果
大規模データベース研究によって、副作用の地域差が検出可能であることが示された。
添付文書の記載内容から、多地域での安全性や薬物動態の比較が可能であることが示された。
東アジア地域においても、頻度に違いのある遺伝子多型がみられた。

ガイドライン等の開発
現時点に置いては該当する事例はない。
その他行政的観点からの成果
医薬品の開発状況等の調査から、民族的要因にも考慮しながらアジア国際共同治験の実施について、さらに促進していくことが重要と考えられた。そのためには、個別の医薬品についての有効性、安全性や薬物動態の特性を比較することが重要であることは当然であるが、既存の各種医療情報を用いて民族差を調査することも可能であることが示された。
その他のインパクト
2014年5月8日に中国・青島で開催された2014 APEC LSIF Joint Multi-Regional Clinical Trials and Good Clinical PracticeInspection Workshopにて頭金が研究報告を行った。2015年11月19日に中国・青島で開催された日中韓薬事担当者会議において、頭金、斎藤、宇山が研究報告を行った。2016年11月22日に韓国・ソウルで開催された日中韓薬事担当者会議において、頭金、宇山が研究報告を行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamamoto T, Hasunuma T, Takagi K, et al.
A feasibility study assessing tolerability of daily versus twice weekly trimethoprim-sulfamethoxazole regimen for prophylaxis against Pneumocystis pneumonia in patients with systemic autoimmune diseases on glucocorticoid therapy.
Jpn J Clin Pharmacol Ther. , 45 (3) , 89-92  (2014)
原著論文2
Takeuchi T, Miyasaka N, Kawai S, et al.
Pharmacokinetics, efficacy and safety profiles of etanercept monotherapy in Japanese patients with rheumatoid arthritis: review of seven clinical trials.
Mod Rheumatol.  (2014)
10.3109/14397595.2014.914014
原著論文3
Nakai K, Wada R, Iida S, et al.
5. Modeling and simulation of orlistat to predict weight loss and weight maintenance in obesity patients.
Drug Metab Pharmacokinet. , 29 (3) , 278-282  (2014)
原著論文4
Kose E, An T, Kikkawa A, et al.
Analysis of factors affecting rehospitalization of patients with chronic kidney disease after educational hospitalization.
Clin Pharmacol. , 8 (6) , 71-78  (2014)
原著論文5
Takahashi H, Sai K, Saito Y et al.
Application of a combination of a knowledge-based algorithm and 2-stage screening to hypothesis-free genomic data on irinotecan-treated patients for identification of a candidate single nucleotide polymorphism related to an adverse effect.
PLoS One , 15 (9) , e105160-  (2014)
原著論文6
前川京子、佐井君江
薬物相互作用に影響を及ぼす遺伝子多型とその人種差
ファルマシア , 50 , 669-673  (2014)
原著論文7
Asahina, Y., Sugano, H., Sugiyama, E. et al.
Representation of older patients in clinical trials for drug approval in Japan.
J Nutr Health Aging , 18 , 520-523  (2014)
原著論文8
Ueno, T., Asahina, Y., Tanaka, A., et al
Significant differences in drug-lag in clinical development among various strategies used for regulatory submissions in Japan.
Clin Pharmacol Ther , 95 (5) , 533-541  (2014)
原著論文9
Uno, H., Claggett, B., Tian, L., et al.
Moving Beyond the Hazard Ratio in Quantifying the Between-Group Difference in Survival Analysis.
J Clin Oncol , 32 (22) , 2380-2385  (2014)
原著論文10
Uyama, Y., Yamazaki, E., Clark, K., et al.
General Principles for the Education and Training of GCP Inspectors:
Therapeutic Innovation & Regulatory Science,  (2014)
10.1177/2168479014551646
原著論文11
Hasunuma T, Tohkin et al.
Absence of ethnic differences in the pharmacokinetics of moxifloxacin, simvastatin, and meloxicam among three East Asian populations and Caucasians.
Br J Clin Pharmacol. , 81 (6) , 1078-1090  (2016)
10.1111/bcp.12884
原著論文12
斎藤嘉朗、宇山佳明、佐井君江、頭金正博
国際共同治験の現状と東アジア治験の推進のための民族差研究
レギュラトリーサイエンス学会誌 , 7 , 61-69  (2017)
原著論文13
頭金正博
医薬品のグローバル開発におけるレギュラトリーサイエンスの役割
日薬理誌 , 148 (1) , 18-21  (2016)
原著論文14
Aoyama T, Tohkin M. et al.
Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Meloxicam in East Asian Populations: The Role of Ethnicity on Drug Response.
CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol. , 6 (12) , 823-832  (2017)
10.1002/psp4.12259
原著論文15
Kaneko M, Tohkin M. et al.
Lack of ethnic differences of moxifloxacin and metabolite pharmacokinetics in East Asian men
J Pharmacokinet Pharmacodyn. , 45 (2) , 199-214  (2018)
10.1007/s10928-017-9556-7
原著論文16
Asano K, Uyama Y, Tohkin, M.
Factors Affecting Drug-Development Strategies in Asian Global Clinical Trials for Drug Approval in Japan
Clin Transl Sc , 11 (2) , 182-188  (2018)
10.1111/cts.12520

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
2019-06-10

収支報告書

文献番号
201430005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
35,000,000円
(2)補助金確定額
32,758,653円
差引額 [(1)-(2)]
2,241,347円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,534,692円
人件費・謝金 1,976,496円
旅費 756,062円
その他 6,241,403円
間接経費 5,250,000円
合計 32,758,653円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
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